むるめ辞典
■夜空
[読]夜空
夜の空
[例文]
ベールになっていた雲が右から左に流れていき、その下から粉チーズみたいな星の群れの素顔が現れた。星はまるで陽炎のようにチリチリと揺れていて、果てしない距離の向こうで星は燃えているのだ、と私は思った。
星がつくる陽炎の中央に明滅するものがあった。それは消えては顕れてをゆっくり繰り返していて、その間隔は次第に短くなりやがてはっきりとしたプラチナの光が煌々と輝いた。
空にまぶされていた小さな星たちは次第にプラチナの輝きに吸い込まれて消滅し、後に残った闇がその輝きを一層引き立てた。しばらくするとまた明滅を始め、顕れたときと同じように少しずつ間隔を縮めながら消えていった。
腕を伸ばして掌を空にかざし、広げた親指から小指までの長さが、上空で実際にどれくらいの距離に換算されるのか私にはわからないが、一瞬でその距離を移動することは可能なんだろうか。
さっきまで眩しく輝いていた親指の先っぽには今は闇があるばかりで、小指の先のあたりに移動した光の点は穏やかに呼吸するような明滅をゆっくりと繰り返していた。まるで心臓の鼓動を空に打ち付けているように見えた。
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