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マンガ感想

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#エッセイ

「誰ともわかり合えない」という砂漠を潤す物語たち

「誰ともわかり合えない」という砂漠を潤す物語たち

自分の中に確かに存在しているのに、うまく言語化できない気持ちがたくさんある。
言葉として形作ることができないまま、そう感じたという事実だけが心に残ってしまうのは、ちょっとさみしい。
かっこよくいうと、砂漠に1人取り残されているみたい。
だけど時々、思いがけないところで形作られたその気持ちに出会える時がある。私ではない誰かのエピソードとして、誰かが抱いた気持ちとして表現される瞬間がとても愛おしいから

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母の本棚、私の本棚

母の本棚、私の本棚

小学生の頃、母の本棚におさまるマンガを読むのが好きだった。
たくさんのマンガと、少しの小説。
本棚3つ分、パンパンに詰められたその場所は、家の中で1番好きな場所だった。 

母の本棚 母の本棚には優しい物語がたくさん揃っていた。

たとえば、

石塚夢見の「朝倉くんちょっと!」
石井まゆみの「ロッカーのハナコさん」
高野まさこの「シュガーベビー」と「ワルツ」
大谷博子の「ペンションやましなシリーズ

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これは、私の物語だ。-ヤマシタトモコ「違国日記」を読んで-

これは、私の物語だ。-ヤマシタトモコ「違国日記」を読んで-

-『これは私の物語だ』と思ってくださる人がいたら、その方のために書いているんだと思います。

違国日記を今出ている7巻まで読み終えたとき思ったのは、まさに『これは、私の物語だ。』だった。

槙生の考えていることも、朝の悪気のなさも、むつの「わかった」も、全部知っている気持ちだったので、読み進めるほどにうっとなる。知っているけれど言語化できていない気持ちを自分ではない誰かが代わりに表現してくれた気が

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