酔うとシステマ

40代男性です。 最近感じた事や、昔の事を思い出したりして書いてみたら楽しいかもと思い…

酔うとシステマ

40代男性です。 最近感じた事や、昔の事を思い出したりして書いてみたら楽しいかもと思いました。 創作(フィクション)や記憶違い、勘違いも含まれるとは思いますので、ご了承ください。 定期的に長く続けるのが苦手なので、ゆるくやります。

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最近の記事

健康サンダルのじんわりとした痛み。

前職の時、東京から少し離れた地方へひとり出張する機会があった。 初めて訪れたその客先は、非常に小さい超零細企業だった。 会社の広さは20畳程度の狭さで、そこに従業員が数人、パートの方が数人、工作機械や小さな装置という感じだった。 そこではみな明るい雰囲気で談笑しながら仕事をしており、僕は羨ましさを覚えた。 太ったパートのおばさんが、僕を気にかけ色々と話しかけてくれた。 一人でたくさんの荷物を抱えて来たこと、緊張している雰囲気を悟って、軽く弄ってくれた。 すぐに僕を受け入れて

    • クラインの壺。

      月曜日はあの定食屋が休みだ。 そこは最近発見した、古い店構えのメニューの多い店だ。 ご飯がやたら多くて、いつも残してしまう。 味噌汁が美味く、飲むと幸せなため息がこぼれる。 でも定食の値段が千円くらいする。 だから毎日通うには若干高めだ。 翌日は火曜日になる。 そこに何の感動もない。 水曜日は何となく1週間の真ん中で、少し気がぬける。 木曜日は惰性で生きる。 金曜日も取り立てて楽しみは無い。 1人で酒を飲み、過去を思い出してはモヤモヤとする。 土曜も、日曜も、ステキな事があ

      • ロング・ロング・ウェイ・トゥ・ゴー。

        駅から降りて、ひとり寂しい道を帰る。 歩いていても、誰もいない暗闇のなか。 風の少し吹く、寂しい道を帰る。 脇の居酒屋の提灯が揺れている。 ボロく破れた提灯が揺れている。 何処へ戻るのか、ひとり寂しい道を帰る。 家へ戻っても、誰もいない暗闇なだけ。 夜はまだ寒い、寂しい道を帰る。 暗い闇に、迷いと惑いがのし掛かる。 終わりのない苦悩がのし掛かる。 どう生きるべきかと、常に問いかけている。 いつも、いつまでも、その答えは出てこない。 本当に望みが叶うなら、何を叶えようか。

        • 途中下車の日々。

          会社を辞める5年くらい前のこと。 その日は朝から身体が辛くて平日に休んでしまった。 昨晩から少し体調不良だったのだが、不思議なことに休む連絡をしたらすぐに熱は下がっていた。 そして急にみなぎる力と元気に驚く我が身。 (これ、あるあるな気がしますがどうでしょう) 朝9時にはもう元気で、それは仮病みたいで、何故か一抹の罪悪感があった。 おそらく世の人々は、これを仮病と呼ぶのだろう。 僕は形だけ、アリバイとしての病院からの帰り、その街を少しぶらついていた。 銀行に用があったので、

        健康サンダルのじんわりとした痛み。

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        • 30代の頃。
          13本
        • 40代の頃。
          13本
        • 20代の頃。
          3本
        • 10代の頃。
          10本

        記事

          ライク・ファーザー、ライク・サン。(Like father, like son)

          久々に実家に帰った先月のことだ。 父親の誕生日も、母親の誕生日もずいぶんと過ぎてしまったから、二人分の土産を持って帰った。 数年前に和解した父親とは、共通の話題が多くあるが、その中でも二人ともウィスキー好きで盛り上がる。 「イチローズ・モルト」という埼玉県の秩父にある秩父蒸留所で作られている人気のウィスキーがある。 有名なものは高価だし、品薄でなかなか手に入らない。 父親は以前からそれを飲みたがっていたので、僕はあるリカーショップでその最も安い入門版のようなボトルを買っていた

          ライク・ファーザー、ライク・サン。(Like father, like son)

          タイム・フォー・チェンジ。

          ちょうど2年前の今日、僕は初めて会社に辞める意向を伝えた。 その日僕は、まだ数日前に管理職になったばかりの上司にその話を告げたのだ。 その課長は、数日前まで僕の同僚だった男だった。 そんな出世して間もない彼が、慣れない仕事を抱えて奔走している、4月の初めの事だった。 僕が彼と話をしたのは、夕方だった。 その日は定時までの仕事で残業もなく、この後は着替えて帰るだけの時に彼を捕まえた。 昨日も一昨日も、どのタイミングで言おうか伺いながら、僕は勇気が出ずに伝えることができなかった

          タイム・フォー・チェンジ。

          うつむいて、散った桜をみながら歩いていた。

          春になり、これから大学の入学式や新入生らしき人たちを見かける季節になった。 僕は当時、1年間浪人生活をしたのち、特に思い入れのない大学に入学した。 (一応はやりたい学科があったけれども) そんな大学に冷めた気持ちながら、まだトキメキが残っていた新入生のはじめ、僕はどのサークルにも入ることができなかった。 そして、最後までサークル仲間ってやつを作ることが出来なかった。 大学のクラスでは顔見知りは増えたが、毎日つるむような連中は最後まで出来なかった。 元来の人見知りもあって、コミ

          うつむいて、散った桜をみながら歩いていた。

          春の訪れを告げるため、コブシの花は開くのか。

          最近、暖かさを感じることの多い季節が始まった。 そんなポジティブな季節に、春が近づくということに、僕は恐怖を強く感じている。 無職期間が長くなるほど、一つ季節を跨ぐということに恐怖を感じるものだと随分前に知った。 そして何もないままにまた一つ、僕の背中にはやり残した宿題が重なるのだった。 僕は日々、散歩をしている。 あまりにも引き篭もるのは、本能的に危険だと感じるからだ。 平日の昼間は人が少なく、居てもお年寄りか子供連れがほとんどだ。 僕のような無所属の人間は、どこにも見か

          春の訪れを告げるため、コブシの花は開くのか。

          オンリー・ア・マター・オブ・タイム。(Only a matter of time)

          But if faith is the answer... 飛行機が加速し離陸する前、シートに身体全体が押し付けられる十数秒の間が好きだ。 血液が一箇所に留まり、爆発する瞬間を待っているかのような気持ちになる。 大学院に居た時、ドイツへと向かう機内で隣に座る先輩が彼の時計を見せつけながら言った。 それは、彼が何時も付けていた安い機械式時計だった。 「この離陸の瞬間だけ、ほんの少しだけ針の動きが遅くなるんだぜ」 と、いつものキメ顔でニヤリとしながら言っていた。 そして飛行機は

          オンリー・ア・マター・オブ・タイム。(Only a matter of time)

          傷の舐め合いジャンキーたちの黄昏どき。

          実のところ、傷の舐め合いで、傷は治らない。しかしながら舐め合いは気持ちがよく、ある種の抗えない快感がある。その快感に酔いしれて満足し、傷はパックリと開いたままいつまでも治る事はない。互いにその快感に浸り続け、夜一人になった時にその傷がシクシクと痛み出す。他人と居ると気づかなかったのに、一人になって改めて見ると、傷は変色し膿を吐き出している。 傷の舐め合いは一見、とても魅力的に映る。それは、同じく苦しんだ同志を見つけられるし、孤独感が消えるから。辛さを共感してもらえるし、優し

          傷の舐め合いジャンキーたちの黄昏どき。

          去るもの、残るもの、現れるもの。

          大丈夫だよ、残る人は残るものだよ。 そう言われたことがあった。時として人間関係が上手くいかなくなることがあった。そしてその言葉どおり、残る人は残った。去っていくというよりは、自分のほうから立ち去った。これ以上関係を続けていても虚しさのほうが大きいと思ったからだ。 あぁ、一人ぼっちになってしまったと思った。また一から色々とやり直すのかと思った。そして不条理な世の中を責めた。お酒を飲んで紛らわしたこともあった。無駄遣いをして誤魔化したこともあった。でも何も解決しなかった。向こう

          去るもの、残るもの、現れるもの。

          ニガヨモギの川。

          穏やかな昼下がり、部屋に座ってぼおっとテレビを見ている彼女がいた。見慣れた、少し縦長の丸みをおびた後頭部と、艶やかなポニーテールがあった。僕はそこに、そっと後ろから抱きしめた。柔軟剤と、シャンプーと、甘い彼女の匂いがした。、、、幸せだぁ。そう無意識に、小さく呟いた。え、何?いやだから、幸せだなって思って。うん、聞こえてたよ。聞こえてて、聞いたの。 そんな想い合っていた女性とも今は別れて随分経つ。連絡先も、今どうしているのかも知らない。そして勿論、知ろうともしていない。もう他

          ニガヨモギの川。

          光の射す方へ。

          トンネルを超えた先が必ずある。 同じ毎日を何年も何年も過ごしていると、感覚も麻痺していく。 無難で変わらないこと、そのままでいることが楽になった。 新しいことを始めようにも、やらない理由ばかり探すようになった。 だから10年前を考えてみよう。 だから20年前を考えてみよう。 もっと若かったはずだ、熱かったはずだ。 こんな僕でも無限で無敵だったはずだぜ? それがなくなったのは、年齢のせい? 挑戦したけれど、1度や2度負けてしまったせい? 立ち止まり、考えてみた。 ふと同世代の

          光の射す方へ。

          身を滅ぼすウロボロス。

          僕は自他共に認める酒好きだ。 それは事実で、平日は家で晩酌をし、土日はよく一人飲み歩いている。 平日に残業が無かったりすると、地元で晩飯がてら飲んでいることもあった。 最近は酒の量が増えてさまざまな人から心配されることもある。 僕は何故、お酒を飲むのだろう。 という疑問も抱かずにいた。 酒が好きなら、家で飲めば良い。 確かに家でも飲んでいる。 だけど外に出る事が多い。 料理も楽しめるからだろうか。 それもあるが、きっとそれだけじゃない。 根底にあるのは「寂しさ」だ。 人と

          身を滅ぼすウロボロス。

          ギターを弾くのか目を惹くのか?足して引くと見えるもの。

          前職にいた頃、当時の上司と出張をする機会があった。 それは打ち合わせなどの類ではなく、1年に1回ある業界内の成果報告会のようなものだった。 例えば、自動車業界だとしたら、今年度の売り上げ、来年度の展望や新製品・技術の報告があるように、自分の関連する小さな業界でも同じようなことがあったのだ。 僕自身は先輩の代わりで時間的な都合がついたので急遽呼ばれ、共に出席することとなった。 特に期待はなく、出張が気分転換になるかなと思いながら参加した。 会場はとある都心のホールのような場所

          ギターを弾くのか目を惹くのか?足して引くと見えるもの。

          世界は繋っていける。

          もう10年以上も前、前職でいつもと同じような仕事をしていた。 クリーンルームと呼ばれる、ゴミやホコリが流入する事を防いだ大きな部屋で、客先に納入する装置の動作チェックをしていた。 僕は入社して5年以上経った頃で、同僚と話をしながら、ある程度覚えた仕事をしていた。 慣れた仕事は大きな苦もなく、でもこのままで良いのかと、不安を感じていた。 あれほど有ったはずの自信ややる気は、入社数年でほとんど薄れていた。 ただ、その日々を過ごしていた。 そんな毎日の中、朝から続く仕事をダラダラ

          世界は繋っていける。