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バニッシュド・フロム・サンクチュアリ。
どうやら俺は聖域から追放された。
これで2年、無職で2年だ。
何をしても、何をもがいても。
このままダメな道に進みそうで絶望する。
ふとした時に現実を思い、身悶えて狂いそうになる。
調子づいて、理想を胸に、クソみたいな上司ばかりの会社を辞めた。
一応、安定していた。
おそらく定年まで働けただろう。
うつ病経験者で、出世することは無かっただろうけど。
金のため、アルバイトをしている。
金のため、生きるために働くのは同じなのに。
正社員とアルバイトのありえない差よ。
クソみたいな扱いしかない。
しかし働く。
汚ねぇ仕事だ。
本来生きるって、こんな重荷を背負う事なのだろう。
かつては。
理想はあった。
野望もあった。
野心も少しばかり。
でもそれは正社員だから叫べた事だったんだ。
今の俺が叫んでも、ただの戯言でしかない。
誰にも届かない。
誰にも響かない。
誰も振り向かない。
それは、砂漠で説教をしていたようだった。
誰も聞くものは居らず。
自己満足というエクスタシーの中にいた。
理想と正義は宗教に似ていた。
妄信的な信者がひとり。
それは全部、砂塵にかき消された。
迷えども、進めども。
いく先は同じ、不透明な暗闇のなか。
模索して、もがいてみて。
老いた身に得られるものはあまりなく。
以前より何年か、少しばかり歳をとった。
失敗だ、大失敗だ。
この人生は失敗な匂いがするぜ。
せっかくこの世に生を受けたのに。
この劣悪な遺伝子じゃ、次にバトンを渡せない。
それが淘汰ということなのだろうか。
そんなの前からわかってたじゃないか。
諦める強さがあるうちに、もっと早く教えてくれよ。
もう戻れない。
戻りたくても戻れない。
戻りたくはない。
追放されたのだ。
それでも。
一縷の望みを期待している。
そんな弱い自分がいる。
救われたいのか。
認められたいのか。
手を差し伸べられたいのか。
アルバイトの中年が何を期待しているのだろう。
明日も仕事だ。
誰でもできる仕事だ。
金のために時間を売る。
金のために人生を売る。
売春的だ。
でもそれはだめなことなことなのか。
現実という鋭い紙で切った手は。
血が滲む。
紙で切れた傷は痛みが強い。
その割に滴り落ちる血は少なく。
滲む程度にとどまっている。
こんな傷では心配もされない。
辛いのは本人しか分からない。
苦しいのは誰にも分からない。
よろめきながら。
さまよいながら。
日銭を稼いでどうにか生きる。
親が金持ちの実家暮らしの奴らが居る。
ママに洗濯してもらってんのに偉そうな意見を言う。
彼らの正論は言語が違う気がする。
世界で俺だけ、言語が違う気がする。
アイデンティティ、クライシス。
久々にカタツムリを見た。
雨で全身濡れる現場でのことだった。
絶望してる人達ばかりの現場だった。
カタツムリ、もう日本に居なくなったのかと思っていた。
結構デカいやつだった。
子供みたいには捕まえなかった。
もう、子供みたいには振る舞えねぇ。
つまずき、よろめき。
でも一応は、進み続ける。
安全で安定で快適な人達の安心に、一役買う存在。
メンタル的臓器提供者だ。
差分が欲しい人達のターゲット。
どうぞご自由に、お取りください。
どこか辿り着けるといい。
そう願っている。
何処かは分からないのだけれど。
この身を追われた奴らのための、居場所のようなものがあればいい。
落伍者でも、不適合者でも、身を寄せる場があると願っている。
手遅れかも知れないけれど。
でも手遅れ同士で手を伸ばすことくらい、少しの勇気で出来るはずだ。
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