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モーフィング・イントゥ・プライマル。

※全部フイクションです。

いつも戸惑っている。
この場所でどうすればいいんだ。
どう振る舞えば正解なんだ。
どう笑えばいいんだろう、と。

そんな自分が唯一所属出来そうな、そんな場に参加した。
しかしほとんどは常連の奴らで、既に仲間がたくさんいる間柄だった。
奴ら、マジで和気藹々だった。
皆、クリアしたゲームの2、3回目をやってる感じだった。
おいおい余裕を見せるなよ、この場でやりがいを見つけるなよ。
お前ら本当に社会不適合者なのか?
自身が受け入れられない僻みと憎しみと、自己肯定感の低さをミキサーで1つにしてぶちまけてしまう。
ぎこちない笑顔で無言の毒を吐き続けてしまう。
阻害された自分を正当化する為、無理やりの正しさを作るために、脳が活発に働いていく。
俺は、俺だけは、絶対間違ってないと。
こんな時、唯一の友は都合のいい自分の脳みそだけなんだ。

でも本当は分かっている。
己の魅力の無さを。
話のつまらなさを。
顔のキモさを。
アトピー肌の汚さを。
そしてなんとも言えない醸し出す雰囲気を。
トータルで言えば、遺伝子レベルで全て劣っていることを。
彼らはそれらを瞬時に察知して、「メジャーではない」&「違う人」認定で心を閉じる。
自分より3段階くらい下げた対応するモードに切り替わる。
みんな社会不適合の仲間だってのに。
お互い探りながら、クソみたいな当たり障りない会話をする。
そしてしばらくして、離れていく。

分かっているのに変われない。
迎合できない。
笑顔が作れない。
分かりすぎるほどに分かってるぜ。
助言をくれるもう一人の俺よ。
でも泣きそうだ、つらい。

でもあえて本音を言おうじゃないか。
40過ぎのオッサンが情けないけれど。
どうにか友達や仲間が欲しい。
この気持ちを分かって欲しい。
楽しく団欒としたい。
友情を感じたい。
あん時ダメだったあん時の青春を、今まさに取り戻したいんだ。

そんな思いで何年いただろう。
いや、何十年いただろう。
でもいつも、答えは同じ。
メジャーな奴らに定義され、排除され、時に阻害され、結果1人で残りの時間を過ごしていく。

どうしたらいいんだろう。
己のフレンドリーさ不足なのか。
このキモい笑顔なのか。
根がキチガイなのか。
もうどうやってもダメなのか。

当たり障りなく、色々やってるつもりでは居るんだけれど。
正解は見当たらない。
俺は汚くてキモくて臭いのか。
何故かムカつくのか。

そんな中、その二次会に紛れ込んだ。
まあまあ不細工な女子が1人、チヤホヤされていた。
男だけでバカみたく飲むって話だから参加したってのに騙されたぜ。
空気の読めないバカ女が安い承認欲求を満たす為、急に加わったようだった。
淡い毒が水面に一滴落ち、湖の在来魚はありえない振る舞いを始めてしまった。
気が狂ってバシャバシャ暴れ、陸に上がって窒息死する。
そんなくだらねぇ時間はじんわりとしか進まない。
どうせパッとしない彼氏が居て、でも外で承認欲求を満たしたくて程度の低い俺たちの会合に紛れたんだろう。
くだらねえぜ。

理系大学に通ってた時、数少ない女子の中でこういう人たちがいたことを思い出した。
三流大学の理系学部には、オタサークルの姫にもなれない残念な感じの女性しか居なかった。
そしてそんな女性に対しても、同級生の男たちはなんだか理由をつけて気になる存在として、誰かしらにときめいていた。

ややブスだけどやれそうなチャンスあるから、気になって好きになった気でいるだけでしょ。
そう伝えると同級生は嫌な顔をしながら、色々と否定した。
そして勝てる見込みのない男と一緒にいるその子を見て、彼は渋い顔をしていた。
でも良い子なんだ、話が合うしアニメも詳しいし、、、そんな超絶臭い言い訳をして負けを認めなかった。
彼らは常に服と髪がダサく、チェックのシャツ率が高く、変なブランドのスニーカーを履き、変なブランドのリュックを背負っていた。
そして服と頭と口が臭くて、目を見て話せない人ばかりだった。
でも何故かプライドが高く、自己分析ができない人たちばかりだった。
そしてそれは俺自身でもあった。
こんな所にしか、俺が身を置ける場所はないのか、、、そう思うと辛かった。

そんな、意地悪で悪意ばかり吐く自分を呪う。
本当は変わりたい、爽やかで善意溢れる奴に。
もう人を呪ったり、罵ったり、そんなのは沢山だ。
なのにどうにも切り離せない、根源の俺が居る。
やめてくれ、もう変わりたいんだ。
壊れたレコードみたいに、同じフレーズを流し続ける人生はごめんだ。

子供の頃、もっと明るくて純粋だった。
誰かを恨んだり、罵ったりした事は無かった。
いつからこんな風に変わってしまったんだろう。
いつからあんな風に戻れなくなってしまったんだろう。
何が手遅れで、何がダメだったのか。
誰も教えてくれない。
手は汚れ、身体は太り、全てが手遅れに感じている。

誰か助けてくれ。
祈る神が居ないし、縋るものもない。
無神論者の神頼みほど虚しいものは無い。
そんな時、意地悪な神様は薄ら笑いで、遠くから眺めるだけ。
あん時に意地悪をしたからか。
浮気をしたからか。
親の金を盗んだからか。
仕事をサボったからか。
友人を裏切ったからか。
他人に優しく出来なかったからか。

結果論はいつも、都合よく解釈する為の道具に成り下がる。
何を悔やんでも。
何を改善しても。
真っ白な過去に変わることは一切なく。
過去の汚い影を残しながら変化していくしかない。
良いことは少し、ほとんど悪いことばかりの過去はどうにも消えない。
これじゃあ未来を上手く描けないぜ。
手元には混じり過ぎた色の絵の具しかない。
純粋な色の空を描けない。
どうすりゃ良いんだ。

みんなどうしてるんだ。
どう立ち回ってるんだ。
どう諦めてるんだ。
どう誤魔化してるだ。
どう笑顔で笑えてるんだ。

そんな嘘ばっかりの世界に舞い戻る。
飲みたくも無い缶コーヒーを飲む。
行きたくも無いバーで酒を飲む。
何をしてるんだ。
何がしたいんだ。
そして何になりたいんだ。

迷うことしか出来ない。
正解と答えが無い。
動いても得るものが無い。
気力と体力とが失われていく。
みんななんでこんな世の中で笑ってんだよ。
やんわり適当に生きてんだよ。
バカ男とヤリマン女が笑いながら純愛と運命について歌っている。
やめてくれ、そんなの聴きたくないぜ。
それはとても音痴でつらい終末の歌だ。

理由もなく泣きそうになる。
でも仕方ない。
ルックスも、能力も、魅力も、センスも、努力も、地頭もないんだ。
これからの危うい世の中を生き抜く術がない。
なんで学校で教えてくれなかったんだ。
被害者にもなれねーじゃねぇか。
価値がない人間は淘汰されるのみ。
勝ちのない人間は淘汰されるのみ。
ここまで来て、勝ちも、価値も、どちらも得られなかった。
まだ先は長いが、もうあとまで大体分かってしまった。
そんな奴はどこにも行けず。
夢も想像も出来きず。
何かに頑張れず。
誰かの助けもない。
でも生きるしかねぇ、そんな資本主義の呪いをかけられた。
どうにか隣に居る成功者たちの酒のつまみになるしかない。
そして酔う彼らの、汚い息を嗅ぎながら、端っこで小さくなっている。
ダメ元でいい、世界が滅ぶのを望んでいる。

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