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特別支援学級が”生活”を基に授業をする理由

こんばんは。特別支援学級教員13年目のMr.チキンです。今日は特別支援学級ならではの学習である”生活単元学習”についてお話しします。

特別支援学級の子は遊んでばかりいてずるい!

よく、

特別支援学級の子は遊んでばかりいるよね。ずるい!

と、通常教育課程の子たちから言われます。
なぜなら、特別支援学級の子たちは

  • たこ焼きパーティー

  • バスや地下鉄、電車を使ってプチ旅行

  • ラーメン屋さんへご飯を食べに行く

  • 夏の暑い日にアイスを買ってアイスパーティー

  • 七夕パーティー

  • ハロウィンパーティ

  • 学校内宿泊

  • カーリング体験

  • 畑学習

などなど、他の子たちが机に向かって学習をしている間に、何やら楽しそうなことをたくさんしているからです。
こんなに楽しいことばかりしていて、本当に良いのでしょうか?

良いんです!

実はこれらの楽しい学習たちは”生活単元学習”という、学習指導要領にも書かれている学習の一つなのです。だから胸を張って楽しいことができます。
では、なぜこのような学習をする必要があるのでしょうか?

”生活”から子どもたちは学んでいく

上に挙げた

  • 調理

  • 買い物

  • 公共交通機関・公共施設の使用

  • 季節に関わること

  • 集団生活に関わること

は、すべて”生活”の中で、私たちが自然と行うことです。
特別支援学級に通う子の中には、障害が理由で生活経験を築くことが難しい子どもたちがいます。

学校で勉強してから一緒にバスに乗ることができるようになりました。大きな声を上げてしまううちの子は、バスに乗れないと思っていました。

という保護者の方がいました。この子は人が大好きでした。特にいつも遊ぶ友達が大好きです。その子たちと一緒に、事前学習でバスの乗り方やマナーを学んだのです。みんな一緒に生活して、みんなと一緒に乗り越えることができる。生活の流れで学ぶことができる子がいます。

生活には”愛情”や”経験”が詰まっている!

また、偏食の傾向が強い子どもが、こんなことをつぶやきます。

僕ね。ニンジン苦手なんだ。でも、畑で自分で作ったやつは食べられたわ。不思議だな。

本当に不思議です。夏の暑い日、苦手な虫に悲鳴を上げながらも、せっせと草むしりや水やりをして自分たちで育てた野菜。それなら食べられちゃうんです。
みんなで調理をして、カレーに入れて。
”生活”というのは不思議です。たくさんの”わかった””できた”を子どもたちに生んでくれます

「なんで勉強するの?」の答えが”生活”だから

算数の苦手な子がいました。
教科書でいくら学んでも、100より大きな数の比較が難しいお子さんでした。

120と117、どちらが大きい?

という問いに、”117”と胸を張って答えます。
なぜなら、”1の位の7が、0よりも大きいから”とのことでした。
教員が間違いを指摘すると、拗ねてそれ以上は学習を停止してしまいました。
そんな子が、買い物学習でアイスを買いに行くとなると、目の色が変わります。

持っている120円で、果たして117円のアイスは買えるのだろうか。

先ほどの問題と同じものなのですが、これに答えられなくてはアイスは食べられません。思えば生活というものはこういう問いの連続なのかもしれませんね。
ちなみに、買い物学習は学習の玉手箱です。

  • 店長に会ってお話を聞ける→生活・社会

  • 店内の商品配置の仕組みを知る→社会

  • 消費税を計算する→算数「百分率」

  • いくつか個数を買って値段を計算→算数「かけ算」

  • 移動で歩く→体育

  • 途中の道で花や植物を見る→理科

  • みんなの注文を聞いてから買う→国語

  • 買い物させてくれてありがとうのお手紙を書く→国語

他にも、子どもによってたくさんの学びが集合しています。
子どもから、

何でつらい思いをしてまで勉強しなきゃいけないの?

と言われたら、だまってスーパーに連れていくと、ほとんど解決するかもしれません。学んできたことは、生活に還元されていくのです。
思えば教育は、効率的に学ばせるために教科を分けるという試みをしました。その結果、生活から離れすぎてしまったのかもしれません。

”生活単元学習”の根拠

さて、生活単元学習をなぜ組むことができるのか。根拠を説明します。
皆さんが学習してきた教科って何でしょうか。これは実は年代で異なるのですが、現行の小学校の学習を見てみると・・・

国語、社会、算数、理科、生活、音楽、図画工作、家庭、体育、
道徳、外国語活動、総合的な学習の時間、特別活動

といったものが見られます。これらは”教科””特別な教科””領域指導”などと呼ばれるもので、学校のカリキュラムはこれらを組み合わせながら作られます。
特別支援学校(学級)では、これらに加えて、”生活単元学習”という授業を行うことがあります。
”生活単元学習”なんて聞きなれない言葉ですよね。これは特別支援学校(学級も準ずる)のみが行うことのできる学習です。

「養護学校の小学部,中学部及び高等部においては,知的障害者を教育する場合において特に必要があるときには,各教科,道徳,特別活動及び自立活動の全部又は一部について,合わせて授業を行うことができる(以下略)」

学校教育法施行規則第73条11第2項

特別支援学校では、”算数”や”国語”、”図工”などを合わせて指導することができるのです。ここにも、

  • 子どもは”生活”からたくさんのことを学ぶ

  • 学んだことは、”生活”に還元されていく

という、特別支援教育の根本的な哲学が見えるのです。

夏休み、どんな子も家で”生活単元学習”を!

子どもにとって長くて短い夏休みです。
ぜひ、ご家庭で”生活単元学習”をしてみてください
なんてことは無いんです。一緒に買い物に行ったり、一人でお使いをしたり、切符を買って遠くまで行ったり。
たくさんの経験をすることで学べるということに、障害の有無は関係ありません。
歌手の宇多田ヒカルさんは、”人間活動”と称して芸能活動を休止したことがありました。その時期のコメントとして

「今日の日帰り名古屋が、初の完全一人旅だったんだ?!自分で切符買って一人で新幹線に乗ったの、初めてだったの。お恥ずかしい。『はじめてのおつかい』状態でおろおろする場面もあったけど少し大人になった気がします

私はこれを聞いた時、とてもすてきだなと思いました。
生活から何かを学ぶということに、遅すぎるということは無いのかもしれません。
子どもに限らず、大人も生活単元学習、してみませんか?
では、またね~!!

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