ウクライナ侵攻とシリア内戦に共通点?その1
本紹介 「ロシアとシリアーウクライナ侵攻の論理」
青山弘之著 岩波書店
2022年2月24日に始まったウクライナ紛争はいまだ終結していません。
欧米諸国や日本はこれを「ウクライナ侵攻」と呼び、ロシアによる国際法違反、戦争犯罪、人権侵害を非難して、ロシアに経済制裁を科し、ウクライナに軍事支援しています。
それに対して、ロシアは、ウクライナの政府や軍による民族浄化からウクライナ東部ドンバス地方の住民を保護しNATO(北大西洋条約機構)の東方拡大を阻止するための「特別軍事作戦」だと主張。
それぞれの立場から「正義」を主張し真っ向から対立しています。
その中で欧米諸国や日本での報道は、一貫して、プーチン大統領を「悪魔の独裁者」と認識。
それに対してウクライナは、侵略されたかわいそうな国、その大統領であるゼレンスキーは「民主主義を守る正義の英雄」と描くことで、結果的にロシアへの憎悪を煽り、ウクライナ国民の抵抗を美化。
それはつまり徹底抗戦、戦争の長期化へと駆り立てています。
でもこの「ロシア悪玉論」的な見方が果たして正しいのでしょうか?
実は巧みに情報操作されているのでは?
この本は、マスコミやSNSの視点と少し違った角度から、ウクライナ侵攻には、シリア内戦をめぐる欧米諸国や日本の対応と共通点があると指摘しています。
この本の著者は、35年にわたってシリアとそこに暮らす人々に関わり、アラビア語圏の情報に詳しいです。
欧米中心の英語圏やフランス語圏の情報とは違った視点がウクライナ紛争にはあります。
「今世紀最悪の人道危機」と呼ばれたシリア内戦は、2011年にアラブ諸国で起こった「アラブの春」という政治運動が波及したのをきっかけに始まりました。
「アラブの春」は独裁政権に対して、民主主義を求める運動だと理解されていました。
シリア内戦も、血も涙もない独裁者の「アサド政権」と自由と正義を求める「反体制派」の闘いと語られました。しかしそれは単純化されたフレームです。
現実の政治はより複雑で、流動的で単純な勧善懲悪ではないにもかかわらず、型にハマった善悪論に押し込められました。
それと同じことがウクライナ紛争でもおきているのではないかと著者は指摘しています。
執筆者、ゆこりん
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