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大きな桜の木の下で 3


第4話  蕾

(寒い、、、)
教室の隅っこで1人、僕は凍えながらそう思った
夏が過ぎ春が過ぎ、いつしか気づけば
冬になっていた、、
ヨシノとの昼休みのおしゃべりは続いている
いくら寒くても最近は学校が楽しく感じる
これも全て、ヨシノのおかげだろう
感謝しなければならない
4時間目の終業のチャイムがなり
僕は急いで教室を出て、急いだ
あの大きな桜の木の下へ
彼女が待っていてくれるところへ
走った、僕は走った
そして、見えた!いつもの曲がり角
そこを曲がるともう葉も枯れ葉となり
随分と寂しい木となった桜の木
そしてその下の、オンボロベンチに
居た、彼女が、、、
彼女は僕の方を見ると微笑みながら言った
「優一くん!待ってたよ!」
そして今日も僕らは喋り出す
世間のこととか学校のこと
好きな歌手のこととかどーでもいいような他愛もない話を、時間が来るまでたくさんたくさん
その時間がいつしか愛おしくなって
この時間がずっと続けばいいと思うようになった
僕の世界は彼女にあって変わったんだ。
あぁ、この幸せで平和な時間がずっと続けばいいのにな、、、本気でそう思った。


しかし、平和は永遠には続かない
僕達2人の関係はこの冬を境に絶望と苦しみの道へと進み出す。


今日は豪雨だった、、、ただでさえ寒い気温なのに、雨のせいで余計に冷え込んだ。
(寒、、、今日は桜の木の下いけないな、、、)
少しがっかりした気持ちで僕はそう思った。
いつしか、僕の日常の中で彼女は必要な存在となっていた。あの桜のような暖かい笑顔を見ると
とても心が落ち着くのだ。
そして昼休みになって、僕は一階にある自販機に飲み物を買いに行った。
そこに向かう途中の下駄箱でふと、僕の下駄箱の中に何かが入っていることに気がついた。
近づいて手に取ってみると、それは手紙だった
封を開けて中を見ると

優一くんへ

今日は桜の木の下じゃなくて
体育器具庫で話しましょ
私待ってるから

ヨシノ

   僕は嬉しくなって急いで器具庫へと向かった。自販機の飲みものを買うことも忘れ一目散に、、、
そして器具庫へ向かって走る途中
哲也とすれ違った。
「お!優一!どこ行くんだよ!!」
「ちょっと、器具庫行ってくる!」
そう言って僕は風のように哲也の横を通り過ぎた。
「優一のやつどうしたんだ?」

哲也とすれ違った後僕は走った、、、
少しでも彼女と長く話をするために
僕は急いだとにかく急いだ

そして、いよいよ器具庫に着くことができた
彼女のことだ入った瞬間驚かせてくる可能性もある、、、僕は心して中に入っていった
器具庫の中は驚くほど静かで暗かった。
人目につかないところにあるため、ここはあまり人の声も聞こえずとにかく静まり返り
冷たい空気で満ちていた。
僕は目を細めながら奥へと入っていった。
「ヨシノぉ、いるんだろ?でてこいよぉ、
驚かすのはなしだぞぉー」
小声でそう言いながら僕はそろそろと器具この中を進んでいく、そうしていよいよ奥に着いた時
陸上競技の、走り高跳び用のマットの上に
何かがいた、暗くてよく見えないがモゾモゾと動いている、僕はスマホのライトでそこを照らすと

そこには、手足と口を縛られたヨシノが居た。
見開いた目で僕に何かを訴えている
「んんっ!んんんんん!」
「ヨシノ!?一体どうしたんだ!?何があっ、、」
その瞬間僕は後頭部に強い衝撃を覚えた。
僕は一瞬気を失いかけた
しかし、倒れかけたところで、誰かに
後ろから両腕を掴まれ、その場に座らされた。
(目がチカチカする、よく見えない、何が起こってるんだ?)
ぼんやりとなる視界の中
ヨシノに近づいていく影があった
その影は顔を見なくてもわかった、
何度も何度も春の時に嫌というほど見ていたからだ。牛のような大柄短い足、まるでガキ大将のような見た目のクソいじめっ子のリーダー的存在
奴だと、、、
(な、あのクソ野郎、何でだ?停学処分になってたはずなのに、)
横を見れば僕の両腕を押さえているのは
あの子分みたいなやつだった
(くそっ、何でこいつらがここにいるんだ
何がしたいんだ)
「よぉおぉ、ひさしぶりだなぁごみインキャ!
テメェの頭の悪い友人のせいで、俺は停学処分になっちまってヨォ、親からも見放されて、人生ぶち壊しなわけなんだよぉ!!」
「ぐっ、、どうしてお前らが戻ってきてるんだよ」
「おいおい!随分生意気な口調だなぁ、
前にたっぷり痛めつけてやったのを忘れたのかぁ?ていうかバカかテメェに仕返しするために
わざわざ学校に忍び込んだんだよォ!」
クソ野郎の蹴りが僕の溝落ちに入る
「うぐっ!おエェ」
あまりの衝撃に吐きそうになる
それを見たヨシノが後ろから声を上げる、
「んんんっ!んんンンンンん!」
「うるせぇ!静かにしてろよ!」
「カハッ、待て、なんでだ、仕返しが目的ならヨシノは関係ないだろ」
するとクソ野郎はニンマリしながら僕の顔を覗き込みながら言った。
「んんー?インキャのくせにいいとこに気づくなぁ?いいぜぇ、教えてやるよ、、、お前は、俺から大事な将来というものを奪った、、、だからよぉ〜
俺も何かお前から奪ってやろうと思ってなぁ
何かないと学校をのぞいてた時に、
桜の木の下でこの女とテメェが仲良く喋ってんのを見かけてなぁ、、、、」
(な!?こいつら、どこまでクズなんだ)
「んでよぅ、そりゃあもう腹が立つわけよ
こっちは人生棒に振ってんのに、、、何でテメェみたいなインキャが、イチャコラおんなとすごしてんだよぉ!!!」
ヤンキーの蹴りがまた腹へ入る
「うがっ、!」
「だからよう、、、テメェのこの女俺のものにしてやんよ、、、テメェのめのまえでなぁぁあ!」
「な、、、んだと?」
するとヤンキーはカッターナイフを取り出しながらヨシノの方に向かっていった。
「いやぁぁ、ちょろかったぜぇ、お前ら2人を呼び出すのは、テメェら両方の下駄箱に手紙を入れとくだけでまんまんと引っ掛かってくれるとはなぁ
ギャハハ!」
(そうか、それでヨシノも!)
「いやぁ、それにしても近くで見れば見るほどいい女だぜ、お前みたいなゴミインキャにはもったいねぇ、だからなぁ、しっかりと目に焼き付けとけよ、この女が俺のものになってくところをなぁ!!」
「やめろぉ!!ヨシノは関係ないだろうが!」
「どーでもいいわ!おめえから何か大切なものを奪えるなら何が犠牲になったって構わねぇんだよ!」
そう言ってクソ野郎は、ヨシノの制服を切り裂いた。
「んんんんんん!んんんんん!」
「うるせぇ!ピーピーわめくな!」
ばちんと、クソ野郎はヨシノに平手打ちを放った 
「んんっ!!」
「ヨシノ!!!!!!!!!!!
くそぉ!!はなせぇ!はなせぇ!」
「うるせぇなぁ、おめぇらふたり似たもん同士だなぁ、ますます虫唾がはしる、
おい、お前しっかりそいつ押さえとけよ」
「うす!了解っすアニキ!」
子分の僕を抑える力が強くなる
僕の非力な力では、こいつを跳ね返すことはできない、僕はこれほどまでに、自分の弱さを呪ったことはない、、、、、、
「おぅし!んじゃぁまず味見といかせてもらうかなぁギャハハ!」
「やめろ!やめろおおおお!!ヨシノお!!!!!!!!!!!逃げろォ!」
ヨシノの手は柱に繋がれて逃げることはできない
それでも、僕は叫んだすると頭に強い衝撃を覚えた
「うるせぇ!あの女が兄貴のものになるとこをしっかりみてろ!」
「ギャハハそのとおりだぁ!んじゃまあ
いただくぜぇぇ!」
「んんんんんん!んんんんん!」
そうしてクソ野郎の手がヨシノの胸に触れようとしたその瞬間だった。
とてつもない音と共に器具庫に怒号が響いた
「ごらぁぁぁぁぁああ!!!!
てめええぇらなにしてんだぁぁあ!!」
体育教師の先生が鬼の形相で入ってきた
「な、何で、あいつが入ってこれんだよ
しかも何で、ここにきてんだよ!
おいテメェ!チクったのか?あぁん?」
クソ野郎が子分に怒鳴りつける
「そいつじゃねぇよ、俺だよ!」
聞き覚えのある声が先生の後ろから聞こえた
「て、哲也!どうして、わかったんだ?」
「お前が慌ててここに向かうもんだから
何かあるのかと思ってきてみりゃあーさ
とんでもねえ、ことになってたからよ
急いで先生呼んできたんだよ」
「くそがぁあ!またてめえぇかよお!
一体何回俺の邪魔をしやがる!
このクソガァぁあ!」
そう叫びながらクソ野郎は哲也に殴りかかろうとした瞬間
その手首を先生が掴み壁へとクソ野郎を投げ飛ばした。「クソはお前だろうが」
吐き捨てるように先生はやつに言った
「ヒュー!さすが先生!かっくいい!」
「哲也、先生は、職員室にこいつらを連れて戻る
ちょっと優一たちを見てやってくれ」
「了解っす!先生ありがとうございました」
「哲也、、、ありがとう」
「はぁ、お前本当、ろくな目に合わないよなぁ
ほらあのこの所行ってやれよ」
「っ!ヨシノ!大丈夫か!」
僕は、急いでヨシノに駆け寄り拘束を解いた。
「ゆう、、一くん、、、怖かった、本当に怖かったようう」
そう言って、泣きながらヨシノは僕に抱きついた。彼女の細くて柔らかい体が密着する。
「ちょっ!まっ!ヨシノ!哲也がいるから!」
「あー大丈夫大丈夫俺のことは気にすんなって」
ニヤニヤしながら哲也は言う
(哲也のやつ、、、)
「そうだ!ヨシノ!顔っ!みせてみて、」
「ん?あぁこれね、大丈夫だよ!あんな奴のビンタなんて痛くも痒くもない」
そう言って笑う彼女だが
頬は赤く腫れていた
「っ!ごめん!ヨシノ!本当にごめん!
僕のせいっだ、、僕のせいでこんな目に、、、」
僕は泣きたくなった、そして死ぬほど悔しくて死ぬほど恥ずかしかった。  
俯き涙を流す僕に彼女は言った
「んーなくの禁止!!」
「、、、え?」
「君のせいじゃないことくらい私わかってるから
だから君が泣く必要なんてどこにもない」
「いや、、でも!」
「いいからぁ!!泣くなぁ!」
そう言いながら彼女は、僕の頬に両手を当てて
目線を無理やり上げさせた
「いい?優一くんは何も悪くないの!
だからこれ以上泣くな!泣いたら私怒るからね!」
「、、、」
しばらく沈黙が続いた
「あーー、お二人さんよぉ〜お熱いのはいいんだがな、布かなんか羽織ったらどうなんだ?ヨシノだっけか?あんた?冷えるだろ」
「はっ!!私としたことが!ハズカシィ!」
そう言って真っ赤になるヨシノ
そうだった、ヨシノは下着が見えてる状態だった。急いで、僕らは距離を取った。
「はっはっは!お前ら面白いな!いいカップルになれんじゃね!?」
「なっ!て、哲也!変なこと言うなって!」
ふとヨシノの方を見ると
どこか悲しそうな顔をしていた。


こうして、僕の高校生活史上
二つの最悪の事件のうち一つが幕を閉じた。
クソ野郎たちはどうなったかと言うと
警察に通報され少年院行き
もちろん学校は退学させられた。
そして、僕は、この事件を通し、強くなることを誓った。ヨシノを守れるように
変わる努力をしようと、心に誓ったのだった
そしてもう一つ、気づいたことがある。
それは、僕がヨシノを好きだということだ。
今回の事件で、ヨシノが他の誰かに取られそうになった時、あそこまで激しく激昂したのは初めてだった、
ヨシノを他の誰にも渡したくない
そんな気持ちが僕の中で強くなった。
いつの間にか僕は、ヨシノに恋をしていたんだ

第5話   開花と散花


そして事件から時は流れ
いつしか一年生で学校に来る日も最後となった。
悪くない一年だったと思う。
でもそれは、彼女がいたからだ
ヨシノがいたから僕は、学校を楽しいと思えた
凝り固まった考え方を彼女は変えてくれた。
そして今日、僕は彼女に告白をする
あの事件の日から決めていたことだ。
たとえダメでもいい、それでも彼女に想いを伝えたい。
残りの2年間の学校生活、いやそれだけでなく
これから先もずっと僕はヨシノに
友達としてではなく恋人として隣にいてほしいと思うようになった。他の誰にもヨシノは渡したくないから。
終業式は午前中で終わった。
その放課後、僕は、ヨシノを桜の下へ呼び出した。
(桜がそろそろ咲きそうだな)
そんなことを思いながら、桜を見ていると
後ろから足音がした、
ふと、振り返るとそこにはヨシノがいた
彼女の長い髪が春風になびいている
いつも通りの笑顔で彼女は言った。
「どーしたのー?優一くん!なになに?話って、好きな子でもできちゃったの?あ!もしかしてわーだーし?あははは、なわけないか!」
「、、、、、、話が早いな、その通りだよ」
「あっはっは!その通りって!、、、、、、え?
本気で言ってるの?大丈夫熱ある?」
「、、、、、、冗談だと思うか?」
「や、やだなあ?嘘つきは泥棒の始まりだよん?
優一くんがわたしをすきなわけないな、、」

「なら、はっきり言わせてもらうよ!
ヨシノ、僕は君が好きです、本当に心の底から大好きです、だから、、僕と、、付き合ってください!」
僕は頭を下げながら腹の底から振り絞るような声で言った。
(言った!言えたぞ!)
しばらく沈黙があった、その沈黙を破ったのはヨシノだった
「顔を上げて、、、、、、優一くん、、、」
顔を上げるとそこには、予想もしてなかった悲しそうなヨシノの顔があった。
「ごめん、、、、、、優一くん、、、それはできないんだ。」
ガラガラと全てが崩れる音がした気がした
何でだろう、予想はしてたのに、どうしてこんなに悲しいんだろう、どうして、こんなに苦しいんだろう、この場にいたくない消えてしまいたい
「だ、だよね!こんな、ヘタレで弱いやつ彼氏なんて嫌だよな!!いや、本当ごめんね
じゃ、じゃあ、また来年ね!」
僕は急いでその場を立ち去ろうとした
(うわー、僕ダサすぎだろ、ほんっと、
バカだな僕)
しかし、さろうとした僕をヨシノは引き止めた
「待って!優一くん!違うの!
私も君に話があるの!」
「、、、え?」
「あのね、びっくりしないでね?
私実は、来年いっぱいは、学校に来れそうにないんだ、、、、、、」
「、、、どういうこと?」
「ずっと隠してきてたんだけど、私実は持病があってさ、今年一年は通院で大丈夫だったんだけど、来年からは、入院が必要になっちゃってさ、、、」
「それが、、、僕と付き合えない理由?」
「、、、、、、うん、私だって優一くんのことは好きだよ?でも、一年も間が空いたらいくらなんでも嫌でしょ?だから、私なんかとは付き合わないほうがいいんだよ、、、」
「、、、、、、年は?」
「え?」
「再来年には、学校に帰ってこれるのか?」
「え?」
「もし、ヨシノが再来年帰ってくるなら
僕は、それまで待ってるから!だから!、、、」
「、、、、、、、、、、、、優一くん、、、、ありがとう、
じゃあ!待っててもらおっかな?
本当にいいの?私なんかのために一年彼女なしでも?」
「ヨシノに勝てる子なんていないよ」
「なにー?今日すっごい褒めてくれるねえ!
嬉しいなぁ、、、、、、、、、でも、優一くん、、、
これから先何があっても後悔しないでね?」
「するもんか!ずっとずっと待っててやる!
だから!病気なんかに負けないでね!ヨシノ!」
「あははは!ありがと!優一くん!
うん、勝ってみせるよー!」
「再来年ヨシノが帰ってきたら改めて
告白する!そしたらその時は付き合ってほしい」
「、、、、、、、、、うん、わかったよ、、、」
その後僕たちは、正門のところでお別れをした
「それじゃあ優一くん、、、、、、
また、再来年ね、、、、、、、、、」
「そうだね、また再来年、、、」
そうして、お互いの帰り道へと歩き出した
しかし、ヨシノがもう一度僕に声をかけた
「ねぇ!優一くん!」
「ん?どーしたの?ヨシノ?」
「、、、、、、、、、、、、サヨナラ!!、、、えへへ!」
明るくヨシノはそう言った
「、、、?うん!じゃあね!ヨシノ!」
こうして僕らはお互いの帰路についた

あぁ、今思えば僕は、どうして気づけなかったのだろう、彼女がついた大嘘に、、、
守られるはずのない約束に、、、、、、

それからというもの、月日は飛ぶようにすぎた
2年生になったかと思えば、夏休みが来て
そしたら次は秋が来て、続いて冬が来て、
修学旅行も終わって、そしてまた、2年生としてくる日の最後の日が来た。
しかし、その飛ぶような毎日の中に
彼女がいることはなかった。
この1年間、ヨシノのことを忘れたことは一度たりともなかった。
連絡先を知らない僕は、あの約束を信じて待つことしかできなかった。せめて、ヨシノが戻ってくる時に、少しでも釣り合う男になるために、
哲也と最近は筋トレなんかも始めたりした。
その甲斐あってか、少しガタイが良くなった気がする、もしヨシノが見たら笑うんじゃないかな
ふと、彼女の笑顔が思い浮かぶ、そのたびに胸が締め付けられる思いになった。
早く彼女に会いたい、あって彼女に告白をして
いろんなことを話して、恋人らしいことをして
楽しいことをいっぱいして、彼女といろんなところに行って、この一年できなかったことを
はやくたくさんしたかった。
それが僕のこの一年を乗り切る原動力だった。
そしていよいよ、この一年が終わる日が来たのだ。

「ほんっと!この一年でお前変わったよなぁ?」
2年になって、哲也と同じクラスになった。
ちなみに、ヨシノとも、一緒だ
まあ、彼女の席はこの一年埋まることはなかったが
「そうかな?哲也から見てそう見える?」
「おう!なんていうか、生き生きしてるって感じだ!これも、愛しのあの子のおかげかなぁ?」
「ははっ!うるせーよ」
「しっかし、あれだな!今日で2年は終わりだし
次の春からは、あの子とも会えるな!よかったな!優一!」にこやかに哲也は言う
「ありがとう、、、哲也」
ふと、空席のままの彼女の席を見る
あぁ、やっとだやっと会えるんだ
この一年どれだけ待ったことか。
涙が溢れそうになったため、僕は急いでヨシノの机から目を背けた
ガラガラと音を立てて、先生が入ってきた
「全員席つけー!」
「おっと!先生来たな!んじゃ、席戻るわ優一」
「うん!わかった!」
哲也が席に戻ったのを確認してから
先生は言った
「えーー!今日で2年生が終わりということで
非常に喜ばしいことでありますが、、、
悲しいお知らせがひとつあります。」
唐突に嫌な予感がした、、、何も言っていないのに
なぜかすごく嫌な予感がした
「えー!皆さんもご存知の通り
桜宮さんのお話なのですが、、、彼女はこの一年
闘病生活を送っていました。
お医者様も最善を尽くしたそうですが
昨日の夜、、、、息を引き取ったようです」
教室中がざわついた
その瞬間僕の思考は完全に停止した
目の前が真っ暗になった気がした
「詳しい病名などは、、、しえられ、せん、、が」
先生の声が遠くなるのを感じた
世界がどんどん遠のいていく
気づけば僕は椅子から転げ落ちていた
教室の床に頭がぶつかる寸前
彼女の言葉が思い浮かんだ。
「これから先何があっても後悔しないでね!」
(あぁ、なにがあってもってこういうことか、、、)
薄れゆく意識の中で、、、僕は心でそう呟いた 
そして僕の世界は、暗闇に包まれた。





PS

読んでくれてありがとうございます
あと2話ぐらいかな?がんばります
楽しんでもらえたら嬉しいな!





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