見出し画像

東京砂漠に癒しを求めて 「じゃない」探訪〜東京編(前編)〜

はじめに


日本の面積のわずか1%にも満たない土地に、日本の人口の11%にもおよぶ1400万人が暮らす東京という街。カネと欲望と人々が日々うごめき、時には希望を、時には羨望を、そして時には絶望をもたらす眠らない街は、今日も欺瞞に満ちたネオンを光らせる…
そんな東京に住まう人々は、日常からの開放日である休日をいったいどのように過ごすのでしょうか。今回は都民の休日というものを体験してみましょう。


サラリーマンの休息 リバーサイドで一息つける「カフェせせらぎ」

午前9時 都内某所…
日々の喧騒に揉みしだかれ、意識がサハラ砂漠までブッ飛んだ妄想フォレストtravel取材班(サラリーマン)。乾燥しきった心を潤すには水辺が一番ということで、サラリーマンのオアシスこと喫茶店に駆け込むのでした。

我々が入店したのは「カフェせせらぎ」。木の暖かみを感じる内装にカメラや置物が所狭しと置かれ、チェーンのコーヒーショップとは一味も二味も違います。メニューを見るとカフェオレやココア、紅茶など心惹かれるものがたくさんありましたが、初めてのお店なのでオーソドックスなブレンドコーヒーと自家製コーヒーゼリーを注文。

それにしてもこのお店、横を流れる川のせせらぎが店名のとおり聞こえてくるし、本当のオアシスのようです。
程よい苦味でコクのある味わいのコーヒーと、優しい苦みをミルクの甘みで包むことで完成するゼリーを口にして、ようやっと意識が温帯湿潤気候に戻ってきた取材班。店内だけでなく外の景色を見る余裕が出てきました。
…おやおや、都内なのにずいぶん緑に囲まれていますね。鳥のさえずりまで聞こえてきます。
あれ、横を流れる川もなんだか様子が…

なんだこの川は?
メチャクチャ透き通っていますね。都内の川なのに、川底まで鮮明に見えます。我々は都内の喫茶店にいるはずでは??

西の果て「檜原村」

実は我々がいるのは東京の西の果て、山梨県と神奈川県と接する「東京都西多摩郡檜原村」。島しょ部を除くと東京唯一の村です。
人口は約2000人と、こちらも島しょ部を除くと東京最少。都心からわずか50km程度の場所に位置していますが、村域のほとんどは森林です。

我々が駆け込んだ喫茶店「カフェせせらぎ」は、そんな檜原村の役場内にあるお店。多摩川につながる南秋川を見ながら一息つける、まさにオアシス的なスポットです。先週蒲田で見かけた川はドス黒かったのに、こちらは川辺でキャンプしたくなるくらい澄んでいます。

檜原村役場

役場の建物はシンプルな作りで、郵便局やJAのATMもあるので用事がいっぺんに済みそうです。

役場の前がいわゆるメインストリートにあたります。都内自治体の中心地としては実にのどかな景色ですが、実際には結構交通量があります。また、ライフラインでもあるバスも本数がけっこう多く、最寄り駅のJR武蔵五日市駅行きのバスは1時間に2本ほど走っているようです。筆者の地元(埼玉県北部)のバスよりよほど充実しています。さすが東京。

これだけのどかな檜原村ですが、村役場から武蔵五日市駅までは自動車でわずか15分ほど。武蔵五日市駅から都心までは途中1回乗り換えが必要ですが、おおむね80分~90分ほどなので2時間あれば村からビル街まで出られます。例えば日曜日の夜、21:30まで役場近くで呑んでいても、最終バスに乗って武蔵五日市駅から電車に乗れば、日付が変わる前に新宿まで行けます。しかも片道約1300円。まさに都会の田舎、メトロポリタンのオアシスです。

駅直結庭付き一軒家を訪問「小林家住宅」

カフェせせらぎで潤いを取り戻した取材班。次に目指すのは、麻布台ヒルズや恵比寿ガーデンプレイスと同じく、メトロポリス東京において駅直結・庭付き・離れ付きという小林さんのお宅。さっそく最寄り駅へ向かいます。

またずいぶんと風通しのよさそうな車両で…いやいや、そもそもこれは何?

確かに駅とは書いてありますが…さらに目の前の急坂!これをこれから登るの?この車両で?と、非常に困惑する取材班をよそにモノレールは動き始めます。ちなみに満席です。どういうこと。

動き始めるとすぐに先ほどの急坂。これをモノレールはグングン登っていきます。

ここで取材班、一体この坂は傾斜がどんなもんかと測ってみると…

なんと44度!もはや崖です。調べてみると、スキー場の上級者向けコースがこれくらいの傾斜だそう。座った状態だと体はほぼ背中に体重が偏り、まるでこれから宇宙に行くよう。行ったことありませんが。

高低差約150メートルの崖を登ること10分、小林さん家に着きました。

降車・即・自宅です。夢のよう。

お宅は広々、納屋もあります。立派な茅葺き屋根と丁寧に手入れされた庭、黒々とした柱が印象的です。コンクリートジャングルでひび割れた取材班の心を埋めるように、炭の匂いが漂ってきます。
居間に上がらせていただくと、小林さんが建物と小林家の歴史を紹介してくれました。
このお宅はなんと築300年以上。入母屋造で、栗や松の木などをクギを使わない工法で組み合わせて建てられているとのこと。また囲炉裏の煙で建物全体を燻すことで、防虫にもなるそう。


小林家は炭焼きと養蚕で代々生計を立ててきて、五日市(現あきるの市、檜原村の隣)まで物々交換に行っていたとのこと。現在は文化財としてこのように公開しているが、つい十数年前までは本当にお住まいだったそうです。

と、歴史を教えてくださっていますが思い出してください。ここはメトロポリス東京です。3代住めば江戸っ子なんて言われるほど、人の出入りが激しい街です。建物も然り、店が潰れたら訪問介護の基地になる我が地元とは違い、常に最先端を追い続けスクラップアンドビルドが繰り返される東京において300年以上残る建物が果たしてどれだけあるでしょうか。先祖代々の土地に住むということ、すなわち土地に根付くということの意味を考えさせてくれる、そんな小林家訪問でした。

ちなみに裏山では往路のモノレールでご一緒した皆さんが我先にとワラビを収穫していました。目的絶対そっちでしょ。

東京産の素材を洋食で 「ヒノハラテラス」


つい200年前までは田畑や野原だった場所にビルと家と道路がビッシリ整備され、土なんて全然見えないし触る機会がない。下を見れば薄汚れたコンクリート、上を見れば建物で狭くぼんやりとした空。そんなメトロポリス東京にいながら、東京の地場野菜をふんだんに楽しめる飲食店なんて…あるんです、檜原村には。

やってきたのは先ほどの小林さん家から少し役場方面に戻ったところにある「ヒノハラテラス」。山あいの閑静な集落にあります。

取材班がテラス席でいただいたのは「ヒノハラ欧風カレー」と「山ピザ」。


カレーは辛さ控えめで、素揚げの野菜たちは薄く味付けされてカレーの風味を引き立てます。本当は硬いはずのカブやカボチャも食べやすく処理され、福神漬けがわりの檜原漬けが旅情をかき立てます。
ピザは硬すぎず柔らかすぎずの絶妙な生地。耳までおいしくいただけました。この上に檜原村産の舞茸を初めとした、甘みを持つ野菜たちが乗っています。チーズの風味に新鮮で旬な野菜たちの旨みが合わさり、素材としてのおいしさとピザとしてのおいしさを一度に味わえる贅沢。
そして何より東京にいながら、騒音と雑踏の中ではなく木々のそよめきの中でこれを楽しめる。大金を払っても港区の高層マンションでは味わえないものがここにはあります。
檜原村はユズやジャガイモ、こんにゃくが有名。ヒノハラテラスの他にも、地物や名産品を様々な形で楽しめるお店が村内にたくさんあります。タクシーに向かって扇子のように差し出される1万円札でも、バベルの塔がごとく上へ上へと高さを競う建造物でもなく、その土地で生産・収穫されたものをそのまま売りにできる。それが檜原村の強みではないでしょうか。
また、名産品は食べ物に限らず、飲み物ももちろんあります。筆者が愛してやまないアレの一種で、実はジャガイモを使ったとある飲み物をご紹介したいのですが、それは後ほど…

腹ごしらえを終えた取材班。これから檜原村のさらに面白いスポットを訪れるため、都民の顔をしながらしれっと他県ナンバーの車に乗り込むのでした。

…と、鎌倉や日光の記事はこのまま後半戦に突入しましたが、今回は出し惜しみしてみます。
次回は東京にあると想像もしなかった⚪︎⚪︎や、
全国にあるけれども知る人ぞ知る⚪︎⚪︎、
筆者が大好きなアレの仲間なのに、檜原村に来るまで全く存在を知らなかった⚪︎⚪︎…など、檜原村の特色をさらに詳しくご紹介します。乞うご期待!

後半は檜原村の更に深部へ

【つづく】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?