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子リスちゃんの元カレ
高校の卒業式から10日後、彼に呼び出されまして。
ようやく受験が終わって、久しぶりのデートだわって、可愛くして出かけたらフラれたの。
理由?
バッカみたいだよ?
簡単に言うと、私が志望校に受かって彼が落ちたから。
暗い顔して
「これから一年、浪人しながら頑張らなくちゃいけない。恋愛してる余裕ないから」
とか言っちゃってたけど、あれは、つまんないプライドの問題よね。
「こんなはずじゃなかった」っ
もこん炉物語~熾火でととのう~
指のきれいなあのひと
就職したその雑貨屋には、とても指の奇麗な先輩がいた。
長い髪を耳にかけるたびに、細い指が耳の輪郭をなぞる。
(きれいな指だなあ)
と見とれているうちに、いつの間にか好きになった。
別に指フェチなわけじゃない。
指に現れている、彼女の繊細さに惹かれたのだ。
その人は、とても仕事ができた。
売り場の主任を任されていて、商品のディスプレイや欠品にはいつも気を使っていた。
もこん炉物語~小さな火を愉しむ~
私が悪いの?
誰かを責めるのは、自分を責めることでもあるからできるだけしたくない。
それでも生きていれば、時々誰かとぶつかって、私が悪かったのだろうかと自分を責める日がある。
今日もそんな日。
せっかく天気の良い休日なのに、私は昨日の職場のトラブルをまだ引きずっている。
……
「単なる伝達ミスじゃないですか? フォローもできたし、そんなに怒ることですか?」
若い営業職の男の子は、気色ば
草食系男子に教えられたこと
草食系男子に教えられたことは、大きく四つある。
①食べられる美味しい草
②食べられる不味い草
③食べたら死ぬけど美味しい草
④食べたら死ぬうえ不味い草
普段は、①②を食べて暮らし、いよいよ生きていくのが難しくなったら③を食べろ、と彼は言う。
「猛毒で、一瞬で死ねるから」
そんな理由なら、④でもいいのではないかと思うのだが、そこは草食のロマンチシズムで、最後くらいは気持ちよく逝きたい、という
ヘルプ商店街【毎週ショートショートnote】
「こちらをご提案いたします」
その男は、生真面目そうな外見から想像もできない妙なアイデアを出すと、ペコリと一礼した。
ショッピングモールの進出、店主の高齢化でシャッターが閉じられていく『かわしも商店街』。
起死回生を狙って、活性化アイデアコンテストを開催したときのことである。
「ほかに目新しい案もなかったし」
「やってみるべ」
翌日から『かわしも商店街』は、ひっそりと『ヘルプ商店街』に生まれ
アドベントカレンダー12月14日 お題「ニューヨーク・水たまり」BYうさぎと犬さん
もう使うことが無くなって廃止したのだけれど、一時期私の携帯電話のメールアドレスは
にしていた。
たいていの人はアドレスを伝えると「ん?」と首をひねるのだが、漢字でフルネームを書いて見せると「ああ、なるほど!」という顔をした。
英語を習いたての中学時代、自分の名前をむりやり英単語に変換する遊びが友達の間で流行っており、それを思い出してつけたのだ。
「half-farm」ではないところがポイントであ
アドベントカレンダー12月13日 お題「壁紙・再会」BYくるみさん
家内安全、健康長寿、学業成就、子孫繁栄、商売繁盛、子宝祈願。
世の中には、様々な願い事があり、それを叶えてくれる神さまがいる。
そこは「復縁を叶える」ことで有名な神社だった。
喧嘩別れ、自然消滅、一方的に告げられた別れ。
パターンが何であれ、その神社で祈り、あるものを授けてもらえば、100発100中で、願いが叶うというのだ。
あるものとは、壁紙である。
パソコン用、スマホ用、男性用、女性用と分
アドベントカレンダー12月10日 お題「ふくろう・豆腐」BY真美さん
【ヨメの視点】
初めて夫の実家にご挨拶に伺う時、手土産には悩みました。
義父も義母も、食に対する意識が高い人たちで、添加物が入っているものは、絶対召し上がらないそうなんです。
私は、子どものころから、そういう食品にまみれて生きてきたので、お二人が気に入りそうなお土産の見当がつきません。
時間もないし、仕方ないので、夫にいつも食べている、ひいきのお店を聞いて、そこでお菓子を選んで買おうと考えまし
アドベントカレンダー12月9日 お題「夜ふかし・腹減った」BY眉侍さん
紗季は、後悔していた。
こんなことになるなら、雄太に生活時間帯の変更なんて迫るんじゃなかった。
でも、もう遅いのだ。
もともと雄太は、フリーのライターで、夕方から明け方に起きて仕事をし、昼間は寝るという生活をしていた。
会社勤めの紗季は、毎日、夕飯を共にするだけで、休みの日に二人で出かけたりしたことがない。
一体何のための同棲なのだろうか、と思う。
仮に、この先結婚して、子どもが生まれても、雄太
空腹 #毎週ショートショートnote
森の中をさまよっていると、巨大な穴を見つけた。
中から肉が焼けるいい匂いが漂ってくる。
オレは、思わず声をかけた。
「おーい、誰かいるのかー?」
「おーい!」
人がいる!
「腹がへっているんだー!」
「それは難儀だなー」
「何か食べさせてくれないかー?」
「いいぞー!」
ありがたい。
「今、そっちに行くからー!」
「どうやってー?」
言われて穴の淵を見ると、つるりとした垂直な岩壁で足掛か
アドベントカレンダー12月2日 お題「ぎっくり腰・流星群」BYチョッピーさん
「小学生のころにね」
「うん?」
突然母が話し出す時は、だいたい子どもの頃の話だ。
母が生まれ育った昭和の時代と今とでは、隔世の感があるらしく、時々、無性に子どもの頃のことを話しておきたくなるのだそうだ。
「北極星を見つけてきなさいって、宿題が出たことがあるの」
「へえ」
僕は、スマホを脇に置いて母に向き直る。
「探し方にコツがあってね。北斗七星をまず見つけるのよね。ひしゃく型の」
「うん
アドベントカレンダー12月1日 お題「井上陽水・にんじん」BY苗木さん
「こんにちはー」
アカリが部室のドアを開けると、室内のあらゆる視線がドアと反対の壁際に集中していた。
ちょうど、ヒロシのミニライブが始まるところに来合わせたらしい。
パイプ椅子に腰を下ろしたヒロシは、ギターのボディを軽く指の背で叩きながら
「ワン、ツー、ワンツースリーフォッ」
と、(一人でやるのにそれいる?)という、謎なカウントをとると、気持ちよさそうに歌い出した。
陽水だ。
入部したばかり