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おせち料理を作り続けるということ

新年明けましておめでとうございます。

こちらでは1月6日の公現祭までクリスマスツリーは飾っておくのが一般的なので、居間はまだクリスマスのまんま。
それでもダイニングキッチンはお正月仕様に模様替え。今年もおせち料理を作り、作り物の鏡餅も飾って、家族そろって新しい年を迎えることができました。



こちらの国のクリスマス料理やお菓子は、ぶっちゃけオーブンに入れて焼けば出来るというものばかりなので、作る気がしない時は夫にやってもらったりもするけれど、おせち料理だけは材料も作り方も私しか分からないし、誰にも任せられない。

自営業なのをいいことに毎年27、28日くらいには仕事納めにしてしまい、あとはおせち作り真っしぐらな年末(笑)。自分がやりたい事や興味のある事には物凄いエネルギーを注ぐけれど、やりたくない事に対しては全く動かない、自分の特性がここにも現れている。
一年の最後に、一年で一番全力で作るのが、おせち料理なのだ。
だいたい年末は3日間くらいキッチンに籠る。その間の家族の食事なんてもう構っちゃいられないので、テキトーにどっか行くか買ってきてくれぇー!と、これまた夫に丸投げする私。

パンデミックや露の侵攻などの影響で、長い間、日本からこの国への流通が途絶えがちだったこともあり、今年はいつにも増して食材が手に入らず、蒲鉾やこんにゃくを楽しみにしていた息子は、こんなんじゃおせちじゃない!とか何とかブーブー文句を言ってた。
毎年苦労して食材揃えておせち作ってるんだから、少しは感謝してほしいぞ、息子よ。

昆布巻きの昆布も手に入らずどうしようか…と思っていたところに、日本からの航空便がずっと止まっていたので船便で2ヶ月以上もかけて友人が送ってくれた小包が届き、その中に昆布が入ってた。神か!と思った。

クリスマスに栗が手に入ったので甘露煮にして栗きんとんを作ろうと思ったら、アジアンショップには紫芋しかなくて、さすがに紫色のきんとんは…と思い、こちらで一般的に売られている見た目はサツマイモにそっくりなんだけど中身はオレンジ色のたいして甘くもない芋で代用するしかなかった。栗も三温糖で茹でたらマロングラッセ?みたいな茶色になっちゃったし、どこから見ても栗きんとんとは違う代物が出来あがった…。見た目はアレだけど、ちゃんと栗の甘露煮は入れたので味はまずまずだった。

伊達巻用の鱈も、今年はなぜかどのスーパーにもなくて市場まで夫を送り込み、なんとか手に入れた。
こうしておせち作りの前に食材を探し彷徨い、毎年何軒もの店を梯子するのも恒例行事なのだった。
ちなみに伊達巻を巻く鬼すだれは持ってないが年に一度しか使わないので、普通の巻き簾に等間隔で割り箸をくくり付けて巻いている。なければないで、他の物を代用したりアイディアで何とかなるということも学んだ。

今年は昆布巻きのかんぴょうがなくて
タコ糸で巻いたら見た目が…
切り干し大根で代用というのを知り目から鱗


今年のおせち料理
・黒豆
・イクラ醤油漬け
・鮭の昆布巻き
・伊達巻
・八幡巻(今年は豚肉)
・海老のうま煮
・筑前煮
・紅白なます
・枝豆の浸し豆
・栗きんとん(なのか?)

昨年は餅が手に入らずお雑煮なしだった。今年もなかったら、もち米を買ってそれを炊いて自分で餅つきする決意を固めていたが、今年は売られていたので無事お雑煮も食べられた。

元旦の朝はお雑煮
蒲鉾がないので花麩を入れてみた


おせち料理を作りながら、いつも思うのは母国である日本のこと、日本の伝統的な食や美意識のこと。
私はこの国に移住してから、一度も日本でお正月を過ごした事がない。
だから余計に、自分でおせち料理を作るということは続けたい習慣となった。
これも郷愁というのかもしれない。
そして、日本のお正月を息子へ伝えてゆくことも、私の母国に対する愛だと思っている。
おせちを作るたびに、夫は日本のご馳走の美しさと味に感心し、息子も喜んでくれる。

私が住む国の民は祖国に対する愛がとても強く、独立記念日や祝日には街の至る所に国旗がはためき、弔意を表す日には半旗が掲げられる。旗日以外でも著名人の誕生日とかクリスマスツリーにまで国旗を飾ったりすることはおかしなことではなく、それはイデオロギーなどとも関係のない素直な愛国心なのだ。最初の頃はそれがとても不思議な感じがした。
日本で愛国心などというと政治的な意味合いが頭を掠め、日本に住んでいた時はこんなに真っ直ぐに母国への愛を感じたり表現したことはなかった(恐らく大部分の日本人はそんな感じだと思う)。
今は日本の外にいるからこそ見えてくる、日本という国の美点、日本人としての誇りが、おせちを作る私の原動力になっている。



こちらは昨年のおせち料理。
毎年作る品はほぼ同じだけど、材料が手に入らなかったりすると作れない品もある。


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