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クライアントワークを「自分ごと化」し、お互いの理想を叶えるには? ー完全食COMPリブランディング

※この記事は、2018年6月25日にMediumで公開された記事を再編集しています。

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2018年、monopoは日本のフードテック・スタートアップである株式会社コンプ(以下、COMP)のトータルリブランティングをローンチ。同社が扱う完全食「COMP」とは、仕事や趣味に夢中になる人が、最も手軽に理想の栄養バランスをとれるように、ヒトの健康に欠かせない必須栄養素を、様々なシチュエーションに合わせて商品化したもの。

<完全食コンプ> http://www.comp.jp/

一定層の顧客やファンがいるなかで、2017年の春、さらなる市場開拓と拡大を目指したブランド戦略の一環として、COMPはリブランディングを行うことに決めた。商品ロゴの刷新からパッケージ、イメージ画像、Webサイト、製品配送の梱包材に至るまで、すべての設計とデザインを担うといった大々的なもの。鈴木氏は、monopoをクリエイティブのパートナーに迎え、プロデューサーでもありつつ自身もmonopoのCEOである佐々木と徹底的に議論を重ね、結果リブランディングに終わらない、包括的な戦略を携えた新しいプロダクトとして生まれ変わらせた。そのプロジェクトが進んだ経緯と背景に迫ってみた。

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リブランディングでは、表面的なデザイン変更を提案してくる会社がほとんど。本質的に考え抜くパートナーが必要だった

プロデューサーを務めたmonopo佐々木は、通常CEOとして会社経営や自社事業に専念することがほとんどだ。しかし、今回は依頼を受けて鈴木氏とセッションを重ねる上で、自らも深いレイヤーでコミットしたいと決意した。それは、鈴木氏がCOMPを広めていく上でブランディングというものが経営的な目線から必要だと理解し、共鳴したことにあった。

ー鈴木さんは、自らのブランド(COMP)のアイデンティティの根幹を他社に依頼することに対して、不安はなかったのでしょうか?

鈴木:いえ、まったく。むしろ現場にどっぷり浸かってしまっている自分たちだと俯瞰でブランドについて考えられないので、外部の企業に相談することにしました。リブランディングをするにあたり、10社ほど相談をさせていただいたのですが、自分ごとのように考えてくれる会社さんはほとんどなくて……。極端な話「ロゴデザインを変えればそれでOK」というようなスタンスの提案をされる会社さんが多いなか、monopo さんや佐々木さんの案件に対する関わり合い方が他社さんと一線を画しているように思えたので、今回パートナーとして共走することにさせていただきました。

佐々木:いまだから言えることですが、最初に鈴木さんに会ったときはすっごい怖かったです(笑)。「佐々木さんにとってリブランディングとはなんですか?」ってド直球な質問をシリアスなトーンで聞かれたり。

鈴木:あはは、それは失礼しました。これまでぼくが見てきたリブランディングの提案は、表層的なものばかりで、うんざりしていたんですよ。だからこそ、一度しっかり向き合わないといけないと考えていたんです。

佐々木:でもそれが逆に心地よくて。なぜなら、鈴木さんがCOMPのリブランディングを経営課題として認識していることがすぐに理解できたから。ここ最近、ぼくはクライアントワークに関わることなく、自社事業や経営に専念していたんですけど、COMPはぼくが2017年で唯一プロデューサーとしてお手伝いすることを決めたお仕事なんですよね。それくらい経営レベルからメスをいれて、言い方を変えれば自社事業と同じくらいの熱量で仕事できると思えたんです。

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monopoプロデューサー・佐々木

ーリブランディングが決定してから、アートディレクターやクリエーティブディレクター、エンジニアなどのメンバーを結成し、デザインやコピー作成・サイトリニューアルの作業に移るまでは半年間かかったとのこと。チーム編成にそれほどまでこだわった理由はなんでしょう?

鈴木:制作前に概念を徹底的に理解して、要件をしっかり理解して、整理してくれる人と一緒に目的を達成したかったんです。ぼくたちがCOMPで達成したいコミュニケーションの課題があって、そこを解決するためには、全容を理解してもらわないことには次に進めない。リブランディングを成功するための定石には、「ロゴの変更」「デザイン刷新」「キャッチフレーズ」などがあります。でも、それらを一過性のリブランディングに留まらない領域での共通理解をチームで持つことで、今後のレバレッジがきくと思ったんです。

ーそういった共通理解をすすめるためには、どのようなやりとりがあったのでしょうか?

佐々木:「ブランディングとはなんぞや?」という擦り合わせからはじまり、そもそものコアコンセプト・メインの顧客層についての洗い出し、それから言語化できていない悩みや課題の整理とか、COMPがこれからどうなっていきたいのか、という部分まで徹底的に議論しましたね。それからP/L(損益計算書)・バランスシートも見させてもらいましたよね。

鈴木:普通、社外に見せるようなものでもないんですけどね(笑)。リスクは当然ありますが、イチ企業のCEOである佐々木さんがこのプロジェクトに対して本気なのがひしひしと伝わっていましたし、共有することでもっと深い提案をしていただけると確信できたので。

あえて完全食COMPの機能面に触れないコピー「完全に、夢中。」を選んだ理由とは

こうしてタッグを組むことになったmonopoとCOMP。プロジェクトチームを組成して間 もなく「完全に、夢中。」というブランド思想がクリエーティブディレクター石川氏から提案されてからというものその言葉を軸にブランディングの中心コンセプトデザインに進んでいった。

鈴木:リブランディング以前にも、食事の時間も惜しんで集中したいといったニーズにはまるコアファンはいたのですが、完全食という機能的側面からCOMPを打ち出そうとすればするほどに、未来的すぎて「食事をしなくても生きていけるから、食べなくていい」というディストピア的な世界観で伝わってしまうのが課題でした。でも、ぼくらがCOMPを通じて考えていたゴールはそうではない。COMPを通じて人生の可能性にチャレンジするチャンスを作る選択股を提案するために、感情に訴えるコピーが必要だと思っていました。

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それをお伝えすると「完全に、夢中。」というコピーがあがりました。「これはいいものができた!」と直感で理解できましたし、数日経って、咀嚼すればするほど、深いレイヤーの思想にも通ずるものができたぞ、という手応えがありました。ぼくは基本的に慎重で、議論を重ねるタイプなのですが、あのときに限っては即座に諸手を挙げて「いい!」と思えたんです。ロゴやデザインに関しても認知を高めていく上で、持続性を体現できたと思うのが今のロゴ。それ以外に拡張性がなければ嫌だったんですけど、今のロゴは縦横無尽に広がるものを想起させるじゃないですか。今後色んな形に成長する上で、その意味を付与できるデザインになっていると思いました。monopoさんが考えてくれたアイデアを自分ごととして捉えられているのが今嬉しいです。

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コンプ代表・鈴木優太氏

佐々木:そう言っていただけるのは、仕事冥利に尽きますね。ここまでできたのは、鈴木さんが代表取締役という立場で、ブランディングというものを経営課題として捉え、深い部分でコミットしていただけたうえに、私たち制作をそのレイヤーから関わらせてくれたことに尽きると思います。

ビッグブランドは何年にもわたる強い思想とフォーマットが確立している。COMPにもそれが生まれていくことが理想

そうして、CI・ロゴ開発を経て誕生したのが、「あなたの夢中が、いつまでも、どこまでも、まっすぐに続いていくように。」という想いが一直線のロゴ(COMPライン)で表現されたデザインだ。また、リニューアルと同時期の新製品の発売も相まって、ユーザー数の増加や、売り上げの成果も上り調子だという。

ー今回リブランディングを成功できたのには、どのようなことが勝因でしょうか。

佐々木:先述の話にも通じるのですが、案件に携わるメンバーがそれぞれ能動的な意志を持って取り組むことができたからじゃないですかね。 ぼくは個人的にも常々口に出していることですが、「自分はこれをやりたいんだ」という意思を獲得して、それを言語化することが一番コストがかかると思っていて。ましてや、それをクライアントワークの中で、自分ごと化して、バリューを出すのはさらに難しい。にもかかわらず、組成したメンバー全員が高い熱量のまま案件に望むことができた。それは鈴木さんが体現しようとしているビジョンに少なからず共感するところがあったからだと思います。

鈴木: それはぼく自身の起業の原点にも通じているかもしれません。研究職だった時に作業に熱中し続けたかったので、食に考えるコストを削減しようと市販のバランス栄養食を食べつづけたんです。そしたら、続けざまに複数の病気で倒れてしまった。その結果、バランス栄養食よりもコスパが良く、夢中の状態を維持できる完全食を自作し始めてしまって。それを欲しがる人が意外といたので、事業をはじめたんです。自分のために作ったものが起業家層にもニーズがあると気付くことができたのが、第一フェーズ。そこでmonopoさんと出会えてタッグを組めて、徹底的に議論できて生まれたのが第二フェーズ。ここからさらなる展開をしていきたいですね。

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ーこれからどんな風にCOMPを広めていきたいのでしょうか? またmonopoに期待するものがもしあれば、教えて下さい。

鈴木:今回、奇をてらわないで、自分たちが伝えたいことを実直につくりこめることができました。今回monopoさんに手がけてもらったものを資産として、ブランド認知を拡大していきたい。そうするなかで次の施策が浮かぶかもしれませんね。まだ漠然としていますが、認知・コミュニケーション拡大活動の施策は、あくまでスポットの単発的なものになってしまうので、その枠組みに収まらない何かをしていけたらな、なんて考えています。

佐々木:それはいいですね。有名な事例でいうと、ポカリスエットやキットカットなどの食品ブランドは大きな思想とフォーマットを持っています。ひとたびそれが作れれば、10年くらい永続的なキャンペーンを打ち出せる。それくらい一貫性がある太い幹が生まれる施策を考えたいですね。続けることで溜まっていく何かを体現できればいいなと。

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今回撮りおろしたグラフィックは、COMPの象徴である一つの線が生活の風景を横断している様子を描いている。それは、COMPが生活のうちの一つの選択肢(何かに夢中になることをサポートするもの)であることを示す。

活躍するフィールドこそ違えど、社長という肩書きを超え、企業という「ブランド」をつくる立場という点で深く共鳴しあっていたCOMP鈴木氏とmonopo佐々木。単なる発注先と受託先の関係以前に、両者でビジョンを共有して納得したものを作るという、クリエイティブの本質に立ち返ることができたのでないだろうか。今後もお互いの価値を最大化させるコラボレーションが生まれることに期待していきたい。

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