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【2023/12/29】ミュージアムグッズ愛好家の頭の中「今年買ってグッときた本5冊」

皆さんこんにちは、ミュージアムグッズ愛好家の大澤夏美です。

今回の記事では、今年読んで面白かった本を5冊紹介します!2023年に出版された本だけを集めることがルール。昨年はインスタグラムに投稿したのですが、今年は記事化してみました。昨年はこちら↓

今回は特別に無料記事!それではいってみよう!


1.白央篤司「台所をひらく~料理の「こうあるべき」から自分をほどくヒント集」

以前に料理本の面白さについて語り倒したことがあるのですが、今年は本当に面白い料理本が多くて!学びの多い一年でした↓

料理本に注目していく中で、今年面白いと思ったことは「自分のために料理ができない」人へのアプローチの多様さです。

今回の白央さんの本のように「料理は好きな方なんだけど、理由もなく台所に立つのがつらい人」が読む本もあれば、精神医学の専門家を迎えセルフケアの観点からアプローチした『自分のために料理を作る: 自炊からはじまる「ケア」の話』、財布や心や材料が空っぽの状態を「虚無」と捉えたリュウジさんの『虚無レシピ』など。

そう考えると、「博物館がなんか苦手」「子供連れなら行くけど自分一人だと行かない」人へアプローチした本って、まだまだ少ないですよね。そこの解像度を上げた本を、私はこれからガンガン作りたい!と決意を新たにしたのでした。

2.ながしまひろみ『わたしの夢が覚めるまで』

今年読んだマンガでも間違いなくベストです。最高に面白かった。

38歳、一人暮らしの会社員「その」。夜中の3時ころに目を覚まし、浅い眠りの中、夢を見るようになる。郷里の家族や友人、会社の同僚など様々な人物が登場するが、彼女が幼いころに亡くなった叔母の「さきちゃん」が現れるようになり…。

「その」さんの夢を通じて、私たちが生きて死ぬことの在り方を問い続けている一冊ですが、タッチが優しいので寝る前に一生ずつ読んでも大丈夫。

いずれも、ストーリーとしては多くを語らない作品です。自分が作る物語の登場人物はもちろん作者が自分でコントロールできちゃうのに、心の内を描き切らないところに、登場人物を他者として尊重しているんだなと感じました。それはすごく誠実なことだと思う。

そんなながしまひろみさんの作風がド好みで、すぐに『やさしく、つよく、おもしろく。』も買いました。

3.葉山莉子『ティンダー・レモンケーキ・エフェクト』

わたしの日記を送ります。 あなたの日記を送ってください。
Tinder上で「日記」と名乗り、夜な夜な毎日、日記を送る。 日記を交換するうちに、ひとりの男性に恋をした。
二〇二二年二月から一〇月までの わたしの日記と、数日間の彼の日記。

このあらすじでもう撃ち抜かれて、買わないわけにいかなかった一冊。2022年12月に自費出版されたZINEが書籍化したものです。

日記文学は好きで色々読んでいるのですが、葉山さんの文体が心地よく、するすると身体に入ってくるのが印象的でした。

頭の中に葉山さんや、彼の姿が往来して。Tinderから現実へ、世界へ、私たちのかけがえのない心や日々は拡張していく。なんかもうね、この作品は一刻も早く映像化した方がいい!映画化!!

購入の経緯も良くて。マッチングアプリをやっているという男友達と本屋さんに行き、「この本すごく気になってるんだよね」と私が言うと、彼がすっとその本をレジで購入。帰り際に「読み終わしたら俺に渡して」と私に手渡してくれました。そういう、エモーショナルな瞬間を誘発してくれた一冊です。

4.幅允孝『差し出し方の教室』

様々な施設等で選書を中心に、ブックディレクターとして活動されている著者が、モノやコトを人にどう差し出すかをテーマに対談を重ねた一冊。

博物館の展示ディレクター、動物園の元園長、ソムリエなど、差し出しのプロに話を聞きに行く第一部、幅さんが実際に手がけた施設関係者と「ここではどう本を差し出したか」を振り返る第二部に分かれています。

「対話の後で」と題したコラムページが特に読みごたえがあり、私も自身の本の企画を練る際に参考になりました。本と人との結節点を作る仕事は、私の「博物館を舞台に来館者が主体的に遊ぶ」活動と近接するものであり、実践を重ねながら、その場に集う人たちの解像度を上げていく作業も読み解けるので面白い。

博物館は社会教育施設ですが、「勉強って感じがする」「押しつけがましい」「なんか説教されている感じ」と毛嫌いする人もいるので…。なので、どうしたら伝わるか?に悩んでいらっしゃる博物館関係者の皆さんにも是非読んでみてほしいです。

5.小山さんノートワークショップ (編)『小山さんノート』

「小山(こやま)さん」と呼ばれた、ホームレスの女性が遺した80冊以上のノート。小山さんの生き様、思考、心のうち、葛藤、叫び、嘆き…小山さんの生きた痕跡を、8年間の歳月をかけてワークショップ形式で文字起こしをし、一冊の本になりました。

小山さんノートワークショップのメンバーは文字起こしだけではなく、小山さんが実際に歩いた道をたどるワークショップ、路上朗読会、座談会を実施し、多面的な関わり方で小山さんの人生に関わっていく。

ワークショップに参観したメンバーが寄せるエッセイも非常に興味深く多層的。特に行為としての演劇との関連を指摘する項が興味深く、ぜひ演劇関係者にも読んでほしい。

野宿で、女性で。暴力にさらされながら、私は私として生きる。社会にも役割にも手なずけられずに、私の自由を生きる。それってどういうことなんだろう。ぜひこの年末年始に皆さんにも読んで欲しい。本当に、多くの人に読んで欲しい一冊です。

おわりに

今年もたくさん素敵な本に出会えて幸せです。私はやっぱり本が好きなんだと実感。来年も素敵な本を読み、自分もたくさん本を作るぞ!

今年はまだ更新がある予定です!引き続きよろしくお願いいたします。

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