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2022年2月6日14:21- [前話]

    • 103.目覚めた女へ [蟹座13度]

      私は導かない。 貴方の手をひかない。 一人でいけ。

      • 102.女の心臓 [蟹座12度]

        私はもう二度と目覚めないつもりだったのに、結局またここへやってきた。 主の強欲さは死者も蘇らせるほどだし、死の事実も捻じ曲げるらしい。 きこえるか? 俺の叫びが その声は確かに届いた。 直接ハートに伝い、心臓は動き出してしまった。 再び。 いや再びどころじゃない。 何度目だ? 少なく見積もって102回。

        • 101.私と彼と関係 [蟹座11度]

          彼は言った 自分は幼稚園の頃から 「◯◯はすごい」と言い続けるサクラを 複数人用意していたのだと それは不自然であり 短期的現象なのだと そしてまた、こうも言った 最近は 自動販売機の全ジュースを取り出し おおきな釜に入れて煮沸しなおし 血液洗浄のようにしてから 元に戻しているのだと 私は思った なにやってんの? この人、大丈夫なの? 私は彼の 正気と安全性を疑った 私と彼の関係は いつもそんな調子だった 私は彼を理解せず 彼もまた 私との隔たりに

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          100.スイミングプールの人魚姫 [蟹座10度]

          スイミングプールで2人組の人魚姫に出会った。 海にしかいないと思い込んでいたけれど、プールにもいたのだ。 人魚姫は白人さんの見た目をしている。やっぱり西洋モノなんだな、と私は思った。 人魚姫の1人が、私と一緒に泳いでくれた。 私の体にくっついて、クネクネと縦に全身を波打たせる。そうすると、蛇や龍やウナギのような調子で、水の中を泳いでいける。 これは気持ちがいいなあ、と私は思った。 とてもいい。 泳いでいる間、もう一人の人魚姫は手持ち無沙汰の様子だったので、なんだ

          100.スイミングプールの人魚姫 [蟹座10度]

          099.ポルノ映画 [蟹座9度]

          私はポルノ映画に出演することになった。 ポルノ映画とは何なのか私はよく知らなかった。事務所の社長に聞くと、彼はこう答えた。 「人の気分を良くするために作られる映画だよ。つまり”良い映画”ということだね」 なるほど。私は理解した。 事前に用意されるという台本が手渡された。 「ここに書かれてることを言って、ここに書かれてることをやればいい。簡単だろ?難しいことは何にもない」 薄い台本をパラパラとめくってみる。 「つまりそれは……ここに書かれていることを言って、ここに

          099.ポルノ映画 [蟹座9度]

          098.ホワイトノイズ [蟹座8度]

          静かな場所だ。 いったいいつから、この場所にいたのだろう? ずっと滝の音のような、川の音のようなものが聞こえていて、その音に一体化したようになって、ぼんやりしていた。 自分の形がわからなくなった。 かつては俺にも、形があったんだろうか? 多分そう思うんだが。 静かだ。 ずっと音は聞こえているのに、とても静かだ。 俺の目玉は物を見ている。 でもそれはもう、昔のようにじゃない。 俺が形をなくしたのと同時に、世界も変わってしまったようだ。 世界はただ不思議なリ

          098.ホワイトノイズ [蟹座8度]

          097.パープルヘイズ [蟹座7度]

          仲間はみんなしょっぴかれた。 もともと長期的にやろうってつもりはない。速攻で種を撒いて、増やせるだけ増やして、時期が来たら引き上げる。捕まった奴らは足切りだ。それが昔からの俺たちのやり方で、どっかに遺伝子のカケラが残ればいい。 品のいいやり方で生き残れる世界じゃないんでね。俺たちにとってここはそういうところ。 つまりそう、社会の役に立ってみんなに喜ばれる、そういう存在じゃない。一瞬で拡散して、時間の問題で正体が割れて、一網打尽。そういう運命。 でもまた返ってくるよ。み

          097.パープルヘイズ [蟹座7度]

          096.イチゴとビニールハウス [Cm キュリウム] [蟹座6度]

          私がビニールハウスの中でイチゴをやっていると、外側からビニールを切り裂くものが現れた。縦にピーッとナイフを入れていく。私は不思議な気持ちでそれを眺めていた。 深夜だから他のイチゴたちはみんな眠っている。私はもの思いにふけってなかなか眠れずにいたので、この異変に気がついた。 ビニールハウスにはちゃんと人間が出入りするための入口がある。だから中に入りたいのなら、それを使えばいい。なぜ新たに切り裂くのだろう? しばらくすると、切り裂かれたビニールの隙間から、目玉が見えた。

          096.イチゴとビニールハウス [Cm キュリウム] [蟹座6度]

          095.13日の金曜日 [Am アメリシウム] [蟹座5度]

          自宅をリフォームすることになった。作業現場の偵察に行った私は、そこで恐るべき光景を目にした。 私のベッドが、縦に3分の1にカットされている。3分の2はすでに廃棄されたようだ。どうやら部屋を広く使うために、ベッドをスリム化したらしい。気に入って購入したフランスベッドだ。奮発して良いのを買った。それがこんなに無残な姿に……。目眩がした。 確かに部屋を広く使いたいとは言った。それは開放感を感じるインテリアにしてほしいといった意味であり、ベッドの幅を犠牲にしてまで実現されるべきも

          095.13日の金曜日 [Am アメリシウム] [蟹座5度]

          094.悪魔と私 [Pu プルトニウム] [蟹座4度]

          私は悪魔を殺してしまった。 血まみれになって床に倒れている悪魔を、私はしばらくの間、上から眺めていた。無我夢中で殴り続けていたから、途中から記憶がない。 「ねえ……どうしたの?このくらいで死んだりしないでしょ?」 声をかけたが、悪魔はピクリとも動かなかった。握りしめていた金属バットから手を放すと、カランカランと音を立てて転がっていった。 これは私の嫉妬心が引き起こしたことだ。 悪魔は私だけを愛していると思っていた。それなのに、他にもたくさんの女に声をかけていた。たく

          094.悪魔と私 [Pu プルトニウム] [蟹座4度]

          093.惑星とカップラーメン [Np ネプツニウム] [蟹座3度]

          僕はちいさな惑星に一人、取り残されてしまった。 親しくしていた仲間たちとの交信も、ついに途絶えてしまった。心細く泣いてばかりだった僕を、いつも励ましてくれた人たちだ。 今日も夕方から夜中まで、機械のチューナーをいじって交信を試みたけれど、ザーザーという雑音が入るばかりで、誰の声も拾えなかった。 みんなどこへ行ってしまったんだろう? がっかりした気持ちで、僕はカップラーメンにお湯を注いだ。蓋をして3分待つ。最近、夕飯はいつもこんな調子だ。自炊する気力もなくなり、すべてが

          093.惑星とカップラーメン [Np ネプツニウム] [蟹座3度]

          092.星のエレベーター [U ウラン] [蟹座2度]

          私は星のエレベーターに乗り込むと、屋上のボタンを押した。 地上にはたくさんの電波が飛び交っていたけれど、そこに大事なものは何も含まれていなかった。根気よく丹念に調査したけれど、残念ながらそれが結論だった。私はだいぶ落胆していた。 エレベーターはぐんぐん上昇を続けた。階を上がるごとに、電波は数を減らしていった。落胆した心も、どこかの階で消えてしまった。最上階に近づく頃には、ほとんど何も聞こえなくなった。 チンという音がして、扉が自動的に開いた。 私は屋上に足を踏み入れた

          092.星のエレベーター [U ウラン] [蟹座2度]

          091.水のゴンドラ [Pa プロトアクチニウム] [蟹座1度]

          私は迷宮のような水路を、ゴンドラに乗って巡っていた。 豪華な装飾が施された小舟は、異国情緒あふれる景色の中をゆっくりと移動していく。見るものすべてが珍しく、私はキョロキョロとあたりを見まわした。 私はその舟で、潰れたケーキ屋を2週間支えていたという男に会った。ケーキ屋には伝統があり、みんなの夢がたくさん詰まっていたそうだ。だが、その美しく格調高い建物は崩壊し、男は瓦礫の下敷きになった。 「なんでそんなものを支えていたんだろう?」と私は思った。崩壊するのは目に見えていたの

          091.水のゴンドラ [Pa プロトアクチニウム] [蟹座1度]

          090.エラー [Th トリウム] [双子座30度]

          無秩序なこの世界は、バラバラな破片が散らばってるだけで、正統なものなんて、もうどこにも残ってない。 神だって、ここを見切ったんだ。 残ってるのは悪魔と魑魅魍魎だけだよ。誰が好き好んで残る?こんなとこに。まともな奴は手を引いた。理想世界の妄想にしがみついてくるような奴ら、誰が本気で相手にするんだよ。いい加減にしてくれ。 俺は廃墟に散らばったゴミを拾い集めて、自分らしきものをもう一度つくりはじめた。この場所でできるまともそうなことは、もうこれくらいしか残ってない。 それは

          090.エラー [Th トリウム] [双子座30度]

          089.ムルジムの黒い軍団と妖精ちゃん [Ac アクチニウム] [双子座29度]

          あ〜〜、嫌なものを見てしまった。 最近の僕って、嫌なものばかり見てしまうんだよね。 なんか背中に黒い羽の生えた奴らが、上空からわらわら集まってくるんだ。やたらに大きい羽で、黒くて、厳つくて、いかにも悪そうな奴ら。街で会ったら絶対目を合わせないようにするよ。 そいつら、集団行動なんて向かなそうな感じなのに、地上に降りると羽を折りたたんで、軍隊みたいに正確な列を組んで、ズッズッズッズッと進んでいく。3・3・5・・・みたいなキチッとした配列。 オルゴールの針みたいだ。あらか

          089.ムルジムの黒い軍団と妖精ちゃん [Ac アクチニウム] [双子座29度]