093.惑星とカップラーメン [Np ネプツニウム] [蟹座3度]

僕はちいさな惑星に一人、取り残されてしまった。

親しくしていた仲間たちとの交信も、ついに途絶えてしまった。心細く泣いてばかりだった僕を、いつも励ましてくれた人たちだ。

今日も夕方から夜中まで、機械のチューナーをいじって交信を試みたけれど、ザーザーという雑音が入るばかりで、誰の声も拾えなかった。

みんなどこへ行ってしまったんだろう?


がっかりした気持ちで、僕はカップラーメンにお湯を注いだ。蓋をして3分待つ。最近、夕飯はいつもこんな調子だ。自炊する気力もなくなり、すべてが面倒くさい。

みんなと交信していた時、僕は自分が強い人間に生まれ変われたような気がしていた。でもそんなの勘違いだった。みんなの力で、一時的にそんな錯覚に陥っていただけだ。一人になったらまた、今までと変わらない、いやもしかしたら今まで以上に、頼りなく情けない僕に戻ってしまった。


「さみしいなあ……」


口に出して呟いてみる。

以前は寂しいという感情がよく分からなかった。一人である事が当たり前すぎて、寂しさを感じるセンサーが働いてなかったんだ。でもみんなと仲良くなって、それから離れ離れになって。そしたら理解できるようになってしまった。この気持ち。とても寂しい。

この変化は僕にとって良いことなんだろうか?もしかしたら、愛も、優しさも、最初から知らない方が良かったんじゃないだろうか?最近はそんな風に思うことも増えてきた。


「ああもう、また面倒くさいこと考えてるよ」


3分経ったことに気づいて、僕はカップラーメンの蓋を開けた。湯気がほわっと頬に当たる。美味しそうな匂いが辺りに広がる。

感情なんて苦しいだけだな、と僕はまた思った。ラーメンの待ち時間みたいに、全部が時計仕掛けで決まってて、全部が時計仕掛けで動くようにした方が楽だ。3分後はコレ、1時間後はコレって、スケジュール通りに動く。寂しいやら嬉しいやら、そんな面倒くさい感情とは関係なく。

そんなことを考えながら、ズルズルと麺を啜った。


食べながらも、考えは湧き続けた。


僕は一人だ。


ちいさな惑星にたった一人。


ズルズル……


僕を理解してくれる人なんて誰もいない。


ズルズル……


僕は孤独だ。


ズルズルズル……


夜中のアパートで、僕の孤独なつぶやきと、麺を啜る音だけが響いた。

カップラーメンはほんの少しだけ、僕の体を温かくした。

それだけで、後には何も残らなかった。

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