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103.目覚めた女へ [蟹座13度]
私は導かない。
貴方の手をひかない。
一人でいけ。
102.女の心臓 [蟹座12度]
私はもう二度と目覚めないつもりだったのに、結局またここへやってきた。
主の強欲さは死者も蘇らせるほどだし、死の事実も捻じ曲げるらしい。
きこえるか?
俺の叫びが
その声は確かに届いた。
直接ハートに伝い、心臓は動き出してしまった。
再び。
いや再びどころじゃない。
何度目だ?
少なく見積もって102回。
101.私と彼と関係 [蟹座11度]
彼は言った
自分は幼稚園の頃から
「◯◯はすごい」と言い続けるサクラを
複数人用意していたのだと
それは不自然であり
短期的現象なのだと
そしてまた、こうも言った
最近は
自動販売機の全ジュースを取り出し
おおきな釜に入れて煮沸しなおし
血液洗浄のようにしてから
元に戻しているのだと
私は思った
なにやってんの?
この人、大丈夫なの?
私は彼の
正気と安全性を疑った
私と彼の関
100.スイミングプールの人魚姫 [蟹座10度]
スイミングプールで2人組の人魚姫に出会った。
海にしかいないと思い込んでいたけれど、プールにもいたのだ。
人魚姫は白人さんの見た目をしている。やっぱり西洋モノなんだな、と私は思った。
人魚姫の1人が、私と一緒に泳いでくれた。
私の体にくっついて、クネクネと縦に全身を波打たせる。そうすると、蛇や龍やウナギのような調子で、水の中を泳いでいける。
これは気持ちがいいなあ、と私は思った。
とて
099.ポルノ映画 [蟹座9度]
私はポルノ映画に出演することになった。
ポルノ映画とは何なのか私はよく知らなかった。事務所の社長に聞くと、彼はこう答えた。
「人の気分を良くするために作られる映画だよ。つまり”良い映画”ということだね」
なるほど。私は理解した。
事前に用意されるという台本が手渡された。
「ここに書かれてることを言って、ここに書かれてることをやればいい。簡単だろ?難しいことは何にもない」
薄い台本をパラ
098.ホワイトノイズ [蟹座8度]
静かな場所だ。
いったいいつから、この場所にいたのだろう?
ずっと滝の音のような、川の音のようなものが聞こえていて、その音に一体化したようになって、ぼんやりしていた。
自分の形がわからなくなった。
かつては俺にも、形があったんだろうか?
多分そう思うんだが。
静かだ。
ずっと音は聞こえているのに、とても静かだ。
俺の目玉は物を見ている。
でもそれはもう、昔のようにじゃない。
俺
097.パープルヘイズ [蟹座7度]
仲間はみんなしょっぴかれた。
もともと長期的にやろうってつもりはない。速攻で種を撒いて、増やせるだけ増やして、時期が来たら引き上げる。捕まった奴らは足切りだ。それが昔からの俺たちのやり方で、どっかに遺伝子のカケラが残ればいい。
品のいいやり方で生き残れる世界じゃないんでね。俺たちにとってここはそういうところ。
つまりそう、社会の役に立ってみんなに喜ばれる、そういう存在じゃない。一瞬で拡散して
096.イチゴとビニールハウス [Cm キュリウム] [蟹座6度]
私がビニールハウスの中でイチゴをやっていると、外側からビニールを切り裂くものが現れた。縦にピーッとナイフを入れていく。私は不思議な気持ちでそれを眺めていた。
深夜だから他のイチゴたちはみんな眠っている。私はもの思いにふけってなかなか眠れずにいたので、この異変に気がついた。
ビニールハウスにはちゃんと人間が出入りするための入口がある。だから中に入りたいのなら、それを使えばいい。なぜ新たに切り裂く
095.13日の金曜日 [Am アメリシウム] [蟹座5度]
自宅をリフォームすることになった。作業現場の偵察に行った私は、そこで恐るべき光景を目にした。
私のベッドが、縦に3分の1にカットされている。3分の2はすでに廃棄されたようだ。どうやら部屋を広く使うために、ベッドをスリム化したらしい。気に入って購入したフランスベッドだ。奮発して良いのを買った。それがこんなに無残な姿に……。目眩がした。
確かに部屋を広く使いたいとは言った。それは開放感を感じるイン
093.惑星とカップラーメン [Np ネプツニウム] [蟹座3度]
僕はちいさな惑星に一人、取り残されてしまった。
親しくしていた仲間たちとの交信も、ついに途絶えてしまった。心細く泣いてばかりだった僕を、いつも励ましてくれた人たちだ。
今日も夕方から夜中まで、機械のチューナーをいじって交信を試みたけれど、ザーザーという雑音が入るばかりで、誰の声も拾えなかった。
みんなどこへ行ってしまったんだろう?
がっかりした気持ちで、僕はカップラーメンにお湯を注いだ。蓋
092.星のエレベーター [U ウラン] [蟹座2度]
私は星のエレベーターに乗り込むと、屋上のボタンを押した。
地上にはたくさんの電波が飛び交っていたけれど、そこに大事なものは何も含まれていなかった。根気よく丹念に調査したけれど、残念ながらそれが結論だった。私はだいぶ落胆していた。
エレベーターはぐんぐん上昇を続けた。階を上がるごとに、電波は数を減らしていった。落胆した心も、どこかの階で消えてしまった。最上階に近づく頃には、ほとんど何も聞こえなく
091.水のゴンドラ [Pa プロトアクチニウム] [蟹座1度]
私は迷宮のような水路を、ゴンドラに乗って巡っていた。
豪華な装飾が施された小舟は、異国情緒あふれる景色の中をゆっくりと移動していく。見るものすべてが珍しく、私はキョロキョロとあたりを見まわした。
私はその舟で、潰れたケーキ屋を2週間支えていたという男に会った。ケーキ屋には伝統があり、みんなの夢がたくさん詰まっていたそうだ。だが、その美しく格調高い建物は崩壊し、男は瓦礫の下敷きになった。
「な
090.エラー [Th トリウム] [双子座30度]
無秩序なこの世界は、バラバラな破片が散らばってるだけで、正統なものなんて、もうどこにも残ってない。
神だって、ここを見切ったんだ。
残ってるのは悪魔と魑魅魍魎だけだよ。誰が好き好んで残る?こんなとこに。まともな奴は手を引いた。理想世界の妄想にしがみついてくるような奴ら、誰が本気で相手にするんだよ。いい加減にしてくれ。
俺は廃墟に散らばったゴミを拾い集めて、自分らしきものをもう一度つくりはじめ