見出し画像

小さき者たちの

〝世界をうごかしてきたのは、いつも、小さき者たちだった〟
〝自分たちの目の前にはいない世界の片隅に生きる者たちへの想像力が、いま試されている〟
『小さき者たちの』(松村圭一郎・ミシマ社)に、うーむ、と唸る。
あらためてこう言葉というか文字にされることで、しずかにも、どかっ、と肚に響く。
 
最近気に入っている書店(の、ひとつ)にて
先日読んだ『断片的なものの社会学』(先日のつぶやきはコチラ)の隣に置かれていた。
なんだか気になり思わず手に取ったのは、
このシンプルだけれど考えさせられるタイトルに惹かれてかもしれません。

世界(エチオピアを中心に)を調査活動をされてきた気鋭の文化人類学者者の著書。
とはいえわたしは初めてなのですが、
目を向け、考えよう、見ようとされたのは、故郷である、九州は熊本。

水俣、天草、水俣病、からゆきさん。

それは例えば、
わたしたちが目をそむけてきたもの、
そむけようとしたりそむけられてきたものであり、
時に「なかったもの」とされようとしたり「自分たちとは関係ない」ともされてきたもの、
みても忘れられるもの、
忘れようとされてしまうもの、
でも確かにあって、今も、続いているもの。
 
本著ではそれらを「先人たちの書き残してきた記録」から、みる、解こうとされる。
 
先人たちは、ずっと、書いて来た、残してきた。
 
「みてしまった」から。
「出会ってしまった」から。

聖人君子でない者たちが立場や職業を越えてひとりの人間として動いたり、書き残したり、戦ったりし、背負ったり。

常に、うしろめたさと問いと共に。
 
それらが、それら小さな者たちの小さな力たちが小さな者たちの声を次へ、次に、届けるものが繋がる、いや、繋げる。
 
「私は見たからだ」
自問自答、答えは出ないまま、無力さだけは重なる。
「おまえらに何がわかる」
「おまえらが(勝手に)伝えようとすることが何になる、かえって犯すことになっているだろう」
「おまえらに何ができる」
みずからの無力さを背負い、自問自答し続けること。
共感じゃなくうしろめたさと問いと共に。
それでも、
小さき者たちは生きてきて、その声を掬おうとしたそれは拾われ、紡がれてきて、つながってきた。
 
その、意味を越えた、越えての、つながりというか、つながりでもない、生の玉突きのようなものに想いを馳せます。
 
「にほん」おおきく言うと、言いすぎると「人間」、その途方もなさ、なさすぎるさ(日本語おかしいけれど)に、しばらく、ほぅっとなり、
改めて、このタイトルの〝大きさ〟を思いました。

いろんなことを重ねたり、考えたり、も。
 
〝「私たち」とは一体何者なのか〟
〝何も知らないまま、わかったような気になっていた〟
〝ちゃんと知っておくべきことは、すぐ足元にあった〟
 
ヒーローなんて居ない、水戸黄門も月光仮面もスーパーマンも居ないねん、この世には。 

でも、だから? だから、でも?

人間の尊厳を考えること。
そのための、方法と試行錯誤と自問自答。
 
最初手にとったとき、タイトルや表紙や裏表紙に「ああ、ミシマ社やなあ」なんて、
勝手な漠然としすぎる失礼な、でも、これ、しみじみいい意味で、なことを思っていたのだけれど、読み終わって、ほぉっとなりながらも、「うん」、
やはり、このタイトルが、どかっ、と、静かに、きました。
 



関係ないけれど。ないけれどあるけれど。
 
旅芝居でよく出てくる「ことばとからだが不自由な」(知的障害をかかえる)弟と、その弟との関係を描いた九州の古い芝居のことも、ふと、思い出した。
『鉄と万公』というタイトルが多いかな。劇団によって外題は違いますが。
そのものずばり『人間』というタイトルで演じている劇団もあります。
 
この芝居を、ある九州の古い役者が作り直し(構成し直し)た時、弟の設定を「水俣病で」とハッキリ台詞にして言ったことがあった。弟の名前もかえた。名前は「太陽」だった。
「なんで太陽なんですか?」
「そんなのわからん、太陽は太陽だよ」
 
旅芝居の古い芝居には仁義だの忠義の切ったはっただのの芝居も多いけれど、
こういったそれこそ〝弱き者〟たちを描いた芝居も少なくなくて。
それこそ、生活史、だなあ、などと思ったりする。
古い芝居、なくしたり変になったりしたら嫌やなあと思うし、大事に演じ続け継がれていってほしいなあ、と思うねんけど、なあ。どやろ。それも〝みてゆくこと〟なんやなあ。と、思います。



以下は、ちょろっとですがいつもの自己紹介 。
と、苦手なりにもSNSあれこれ紹介、連載などなどの紹介!!も。
よろしければお付き合い下さい🍑✨
ご縁がつながったりしたらとても嬉しい。

大阪の物書き、中村桃子と申します。 
構成作家/ライター/コラム・エッセイ/大衆芸能(旅芝居(大衆演劇)やストリップ)や大衆文化を追っています。
普段はラジオ番組の構成や資料やCM書きや、各種文章やキャッチコピーやら雑文業やらやってます。
現在、lifeworkたる原稿企画2本を進め中です。
舞台、演劇、古典芸能好き、からの、下町・大衆文化好き。酒場好き。いや、劇場が好き。人間に興味が尽きません。

【Twitter】【Instagram】【読書感想用Instagram】

ブログのトップページに
簡単な経歴やこれまでの仕事など書いております。パソコンからみていただくと右上に連絡用のメールフォーム✉も設置しました。

現在、関東の出版社・旅と思索社様のウェブマガジン「tabistory」様にて女2人の酒場巡りを連載中。


と、あたらしい連載「Home」。
皆の大事な場所についての話。

以下は、過去のものから、お気に入りを2つ。

旅芝居・大衆演劇関係では、各種ライティング業。
文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、各種文、台本、
役者絡みの代筆から、DVDパッケージのキャッチコピーや文。
あ、小道具の文とかも(笑)やってました。
担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、
アーカイブがYouTubeちゃんねるで公開中
(貴重映像ばかりです。私は今回のアップにはかかわってないけど)


あなたとご縁がありますように。今後ともどうぞよろしくお願いします。
皆、無理せず、どうぞどうぞ、元気でね。

楽しんでいただけましたら、お気持ちサポート(お気持ちチップ)、大変嬉しいです。 更なる原稿やお仕事の御依頼や、各種メッセージなども、ぜひぜひぜひ受付中です。 いつも読んで下さりありがとうございます。一人の物書きとして、日々思考し、綴ります。