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喜劇とか悲劇とかからの新しいかたちへ netflix 『離婚しようよ』のこと

宮藤官九郎&大石静による『離婚しようよ』
(先月配信されたnetflixオリジナル作品)、もう観られましたか?
二世政治家と国民的人気女優が「離婚するっ」を目指して共にがんばるお話です。
キャラの濃い人ばかりが登場します。
皆、皆それぞれに主張と言い訳とやはり主張があります。
その主張に至る理由もあります。けど、理由を超えたTHE感情!!があります。
というのが、〝そんなもの〟の究極が見える政治や芸能の世界を通して描かれます。ふふふ。
地方(地方性)、家族の形、SNS、建前と本音とやっぱり本音、
え、わたしの本音って何?! あなたの本音って何?!
モチーフとして使われるものもなんかしっくりぴったり完璧というか、
観ていてずっとげらげら笑いながらも「うーん」と唸り、
考えさせられたり、涙が出てきたりしました。
笑いすぎて涙も勿論あります。
でも、それと当時に、それよりも、
人間というもののどうしようもなさ、アホさ、
「ほんとしょうもないなー」っていう笑えないけど笑える愛しさ、みたいなものへの涙じゃないかな、と、観終わって思ったりしました。
 
「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」
言わずと知れた喜劇王チャップリンの名言ですね。
もう使い古された感すらあるけれど、思い出したりもして。

例えば男と女とか。
例えば家族と他人とか。
右とか左とか、与党と野党とか、
つまりは自身と他者だとか。
それらは「わかりあえる」?
あ、わかりあえない、うん、わかりあえない、だから苛々するのかやっつけるのか。はなから「違うもの」と思いこみ決めつけて?
でもそれらは真逆で鏡で、鏡で真逆かもしれない。
両者の在り方、「こうあるべき」「自分はこう」とされてきたカタチ、
それをわたしたちは疑いもせずに過ごしてきた生きてきたけれど、
え、そもそもそれすら、「なんで?」。
それぞれの形があるじゃない、あっていいじゃない。
「とは」とか「かくあるべし」みたいのって、なんか古いっつうか古いを通り越して滑稽じゃない?
滑稽を通り越して、笑えもしない問題になることが多すぎるじゃない。
勝ちとか負けとか、結果とか、生きていく上でそれは絶対に都度都度判断されること。
でも例えば完璧な人間なぞ存在しないことと同様、
誰もが失敗や罪をおかしながら生きているのだから、
「それぞれの形」があっていいのかもだし、
そうして愉快に真面目に皆で生きていくいけるように、あたらしい時代へ、皆が新しいかたちへ。そんな世界になればいいな、自分も他者もを尊重しながら。
他者を尊重、尊厳を守るに反したり妨げたりするものは、みすごさずに、
ということを皆で考えて、解決していかなければならない、からこそ。
 
観終わってそんなことを感じた。
とはいえ、
これはわたしがいつも言ったり書いたりしてることで(悩みながらも)、
だから、本作にも、感じたのかもしれないけれども。
 
共同脚本ということで、
観る前は「えー、大石静~」と思ってしまったのも本音。
でもこれが、思いもしない、想像もしなかったほどの素敵タッグとなっていた。
インタビューなどを読むと、シーンを交互に書いていったとのこと。
主人公である夫役のセリフは宮藤さんが、妻役と妻の愛人役のセリフは大石さんが書き、共に互いの書いたものに筆を入れていき、そうして出来上がった作品なんだって。すごい。
そうして出来上がったこの作品が、
夫婦だったり家族だったり政治だったりを「こう」描いた作品になった、というのも、なんだか、いいな、というか、
味があるというか、考えさせられるな、となりました。
 
正直、前半(4話くらいまで)は
イマイチ乗り切れなかったというのも本音です。
観終わってから考えると「共同脚本というので最初は苦戦した?」、
いや、それよりも、たぶん、
「言いたいことのため、後半怒涛の盛り上げのため、の、
最初数話でゆっくり振っておく、というか、ばらまいて、説明しておく」だったのかな。
元々、恋愛ものとかホームドラマものにそこまで食指が動かないし、
本作のイケメン担当(?)の錦戸亮の出演にも特にテンションはあがらない。
それより小劇場で観てきた古田新太や、なんと池田成志まで出てきて、
暴れていることはうれしかったのだけれど(笑)
ただそんな前半を経ての中盤以降の盛り上がりや熱さ切なさとメッセージは、沁みました。決して完璧ではない皆が、愛しくなりました。

宮藤官九郎さんの書くドラマの中に出てくる人には完璧な人が出てこない。
格好よかったり美し(顔が、も、行動が、も)かったり
人から偉いとか凄いとか思われたり言われたりする人には
必ずと言っていいほどめっちゃトホホなところがあったりする。
逆に「おいコイツ漫画みたいなキャラやなギャグ要員やな」っていう人が
真理を言っていたり、ほろりと泣かせることを言ったりする。
でも漫画みたいなギャグな人がずっとギャグのまんまだったりもする。
主人公はたいてい全力疾走するもののするから巻き込まれて迷っていて、
はちゃめちゃな小ネタと渋滞しすぎるくらいのギャグと一筋縄ではいかなすぎる(いかせない)人々ばっかり登場して、
だからひたすら、漫画なのに人間で、人間臭い。
ばかだなあ、ほんとばかだなあ、
あー面倒臭ぇな、
あーっ人間、って感じだなあ。
……なんて思うのは観終わってからしばらくしてからのことで、
観ている最中は怒涛の巻き込みとギャグとギャグみたいな現実にひたすら振り回されている。
その振り回されと笑い泣きが、きっと、とても、楽しい。それがきっと現実だから。
 
最後の落とし方というかまとめ方も、うれしかった。
オチの〝所信表明〟笑い泣きし、笑いました。
 
ふふふ。
 

という感想を、先月観てメモとかしたまま放ってたので、今更やけどアップ。

 

原田マハの『本日は、お日柄もよく』は
選挙で当選する・させるためのスピーチライターの話でしたね。
ドラマ版は観てないけれど、小説、よかったな。ってのも、ふと思い出した。


クドカンドラマのこと。過去記事2つ。

◆◆◆
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構成作家/ライター/コラム・エッセイスト
中村桃子(桃花舞台)と申します。
大衆芸能、
旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。

普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、
各種文章やキャッチコピーなど、やっています。

劇場が好き。人間に興味が尽きません。

舞台鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)と、
学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)、
本を読むことと書くことで生きてきました。

某劇団の音楽監督、
亡き関西の喜劇作家、
大阪を愛するエッセイストに師事し、
大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリーに。

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