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猿丸幻視行(著。井沢元彦)【どくしょしょうかいをきわめたいなら、けふはやまのあさせへおゆすてにいこほね。ちりみえるつれぬゑろゐ】

日本史での古代史ミステリー。
「ダヴィンチコード」で古代史ミステリーを堪能した皆さま。
それでは同じ様式で日本史ミステリー。
いろは歌の謎を解き明かしましょう。

しかも、この作品はなぜか、
過去の誰かになりきる過去視(ポストコグニション)で、
明治の鬼才、折口信夫になりきって、
折口目線で柿本人麻呂の暗号を解くという、
二段階構造になっているのです。

なんで素直に折口信夫をそのまんま主人公にしなかったんだろう。

やはり、何らかの効果を狙ってのことなんでしょう。
この階層構造が謎を解いていくという過程を盛り上げているのかもしれない。

まず親友「柿本」君から折口に対して、
簡単な和歌の暗号を解いてくれ、という依頼があるのですが、
ちょうどそれがわかったとこで、未来に戻ってきてしまうとか。
先が気になりますよね。うまいなー。

まして折口信夫が生きていた世界は、未来では跡形もない。
せいぜい情報しか残ってない。
そして折口が覗き込む人麻呂の時代も、何も、いやほとんど残っていない。

そして続きが知りたくて、再び降下する。
そこには「柿本」君の実家に行き、
ほぼノーヒントで展開される和歌の暗号解きの世界が待っていた。
1000年、誰にも読み取れなかった暗号。
前述の簡単な暗号は、試されただけのようらしい。
本番はこの後だよ。

いや、無理やろ。
ここには書きまへん。
ただひとつ言えるのは、
日本ミステリの最高傑作の一冊であることは疑いないらしい。

海外翻訳されまくる日本ミステリ代表作の「占星術殺人事件」に、
江戸川乱歩賞で競り勝ったんだから。

柿本人麻呂は、奈良に都が移る前。
まだ飛鳥時代の人である。
天武天皇や持統天皇の少しあとぐらい。
この時期は、文字による記録が残り始めているので、
分かるところは多いのですが、どうにも不自然な記述も多く、
いわゆる勝利者による編集を受けている。

つまり真実は闇の中。1000年前の話である。

それを天才探偵が大意を解いてしまうという。

これが歴史ミステリーの醍醐味なのだ。
もはや和製ダヴィンチコードと言ってよいのではないか。
この流れはどこへと行きつくのか。

多重構造なんですよね。

世界の奥深くにもぐり、その先でさらにもぐる。
単純な構造なんですが、
読者バイアスで簡単に興奮してしまいます。
深い。

井沢先生は逆説の日本史など、

もはや直球で書いた小説ではない本も書いているので、
むしろそっちが本性というか、
この人は作家というより歴史家の方が性にあっているんだな。
歴史本ばかり書いている。
そちらの方も当然ながら激おもしろです。
よろしければ。

最新刊は日英同盟の辺り。

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