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電脳コイル(2007年:監督:磯光雄)【アニメ感想によると、大黒市ではnoteをやっている人のアカウントが家出してしまうという事件が流行っているそうです】

かつて弟と共に期待値の高いアニメとしていつか観たいなどと語り合っていました。
私はどこかで先に観て、
そして遅ればせながら、彼はようやく取れた休みの日に愚かにも全26話を一度にみようとして・・・

それ以降、彼とその話をすることはなくなりました。
26話、13時間を一日で観ようとするのは暴挙です。
身近な人がやろうとしていたら、止めさせましょう。
ダメ、ぜったい。

******

そんなことはさておき。

インターネットの世界は心霊と似ている、なんて誰かが言っていました。
そういえば攻殻機動隊シリーズでも、ゴーストと呼ばれる人間の魂に相当する部分の話が出てきましたね。
それならもっと学校の怪談的な話に寄せて作ってみようと制作されたのがこちら。

電脳コイル。ゼロ年代が誇る名作アニメ。
これを観てないのは損失かもしれないレベル。

絵柄がよくある系の絵と違うので、それで敬遠してしまう方もおられるでしょうが、それは損をしています。
ストーリーは太鼓判を押せます。
大人も子供も楽しめて、歳を重ねても思い返せる作品になるでしょう。
名作なのです。

では世界観を簡単に説明しましょう。

まずスマホでもパソコンでもタブレットでもなく、
この世界で流行っているのは電脳メガネです。
そして、それを付けた子どもたちは毎日のように拡張現実で遊びまくっています。

電脳メガネで拡張した世界は、おもちゃみたいなのがたくさんあります。
それで遊ぶんですね。おもちゃの武器とか。
そしておもちゃのペット。電脳ペットまでいます。ペットマトンと言うらしい。電脳ペットは、作中で重要な役割を担います。
ちなみに主人公の飼い犬の名前はデンスケです。

この世界においては、何気に拡張現実は社会のすべてを覆いつくし、現代日本の体裁を取りながら、さりげなくユビキタスとなっています。

子どもたちが危険な場所に行かないよう、拡張現実の世界にだけ出現するAIパトロールロボット、サッチーが出てきます。
子どもたちが入手する拡張現実用のおもちゃの武器では、基本的に歯が立ちません。
この相手からは逃げるしかない。

そして(遊びはなんでもそうですが)ものすごいレアテクを持っている子がいたりして。
「あいつ、いったい何者なんだ?」
みたいな会話が出てきたりします。

ポケモンみたいな変な生き物も出てきます。これを捕獲して近所のばあちゃん(実は主人公の祖母)のとこに持ってくと、メタタグとかいう素材みたいなのがもらえるんですよね。

とはいえ、目で見えるだけなので、メガネなので、触ることはできません。
(当初のシナリオ案の変遷についてはウィキに細かく書いてありました)

「手で触れられるものだけが本物なの。ほら、あったかいでしょう?」
(本当に触れられるものだけが、本物なのかな?)

この日常的な世界から、ちょっと怖い世界まで、ぐっと飛びます。

最初に言いましたよね。
ITは心霊と親和性が高いって。
怖い話が出てきます。
ただの怖い話ではないです。
データのお化けみたいなのも確かに出てくるし、ホラーなんだけど、
(割とビビるレベルのお化け)
それとは別の、

あなたの心の誠実さや本当の勇気を試すような怖さです。

そうですね、本来の心霊の話というのは、ただ怖いだけの話ではありません。大切な時に何かが問われる、生きるための哲学の話だったはずです。

クライマックス付近で、大人が急に説得力のある優しさで子どもたちをたしなめてきたり、それでも自分たちの信じる道を進もうとする子どもたちの行動力に、フィクションとは思えないリアリティーを感じましたね。
過去に後ろめたいことをしていると、きっちりとつけを支払わされるというこのモラリティよ。説教臭さがみじんもない道徳の話。
そういう意味でも怖い。
ハートを抉られて感動泣きしないように気をつけてください。

ミヒャエルエンデなら「モラーリッシェファンタジー」と呼んだであろう正統派ジュブナイルファンタジーです。
(モラーリッシェファンタジーにおいては、いわゆる道徳的な決まりごとは、道徳とはみなされません。実際に現場で正しいかどうかわからない判断を、それでも悩んだ末に決断するのが真の道徳と見なされます)

成長するって、シリアスで怖いです。

大人が子どもに見せたい話としても合格したようですが、
まあそんな腹黒い大人たちの考えとは別に、大人だけで観ても充分に楽しめるので、いい歳をした大人みたいな子どもが観ても、全然アリなんじゃないかと思うのです。
子どもの頃に踏み外した成長の階段、昇っちゃってください。

あと中盤のコミカルすぎる一話完結系の話。
(果し合いとか発毛とか首長竜とか)
シリアスで切なくて感動するだけの話ではなく、ちゃんと笑いも狙ってなおかつ考えさせるというコメディリリーフ的な話も実に良い感じです。
藤子先生かよと思いました。こういうの作れたらいいなあ。

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