読書日記・その日までやればいい
12月16日(月)
白石一文さんの『我が産声を聞きに』を読む。癌の診断を受けた夫は、その日のうちに、妻よりも好きになってしまったという人のもとへと去っていく。
夫が病気になったというだけでもショックなのに、さらに夫の心変わりまで宣言されるなんて、主人公の呆然となる気持ちと同じように、こちらまで呆然としてしまったし、「え?いま何が起きたの???」と、ちょっと問いかけたくなった。でも誰に問いかけたらいいんだ。当事者(主人公の夫)は言いたいことを言ったらさっさと帰っちゃうからね。ズルイ。
本を読んでいる間も、本を読み終わってからも、自分だったらどうするだろうかという問いがまとわりつく。心変わりしたという夫を連れ戻すのか、さっさと離婚するのか、何もかもがどうでもいいやと放り投げてしまうのか。急いては事を仕損じるという言葉もあるので、焦ってことを起こしても良い結果に繋がらない可能性はある。だからといって時機を待つとしても、のんびりし過ぎたら取り返しのつかない事態にもなりそうだし、このさじ加減が本当に難しいよね、と思った。
生きていれば悩むことも多く、人生の分岐点か?と思うような場面もあったりするし、選んだ人生が本当に正解だったのかと悩むこともあるし、反対に選ばれなかった人生はどんなふうだろうと考えることもある(あっちが幸せだったかなぁとか)。けれど、自分がそのとき出した答えがすべてなんだと、この作品を読んで思う。あの時ああしていればと思うことはあるけども、そうやって後悔したり反省することで得られるものもあるんだよね、と思ってないとやってられない時もあり。
何だかんだと考えさせられるテーマだったけど、この物語のラストは好き。
12月17日(火)
毎年恒例『本の雑誌』の年間ベストを読む。今年も、読んだことがない本が並んでいるランキングだった。読んだことがない本が並んでいるほうがテンションが上がるので、今年もとても面白いラインナップだなぁと思いながら読みたい本をメモしまくる。
年末は読みたい本が一気に増えるため、すべてを購入するためにはお財布と相談することになるんだけど、お財布はいつだって「また書籍代っすか?そんなに払えないっすよ」と弱音を吐く。そんな時に必ずクレジットカードが「私で良ければ力になりましょうか?」と優しい声をかけてくれるのでつい甘えちゃうんだけど、でもそうやってクレジットカードに甘えていると、銀行口座が「おいおいおい!!また今月もすごい引き落としが来たぞ!!え????ちょっと待って??残高が足りないよね???ちょっと!!計画的に使ってくれよー!!」と悲鳴をあげることになるんですな。毎月毎月みんな大変ね(毎月なんかい。しかも思いっきり他人事だけど、全部自分のお金やで?)。
12月18日(水)
年末になり、いつもよりは日常がざわついている。夜になると疲れてバタンキューとなることも増えてきた。それで思うのは、本を読むことにも体力が必要ってこと。肉体的な疲れがあると、あっという間に本を読む力がなくなる。本当に一瞬でなくなる。すごい。肉体的な衰えは年々増すわけだから、つまり本を読む力も年々弱まっていくってことで、読みたい本を読むことはどんどん難しくなるってことなのかと思って呆然とした。
津野海太郎さんの『百歳までの読書術』を読む。この本が出版された当時の津野さんは70代。それでも本が読めているという事実に救われる。視力も集中力も衰えていくとしても、だからといって読書時間がゼロになるわけじゃないのよね。病気をせずに、元気ならばの話ではあるんだけどもさ。
これからの未来を悲観して、年を取ったら出来なくなることを数えている暇はないんだな。今のうちに、そして元気なうちに、とにかく読めるだけ本を読むこと。それが私にとって出来ることなんだ。やりたいこと、出来ることは「もう無理だ」と思うその日までやればいいだけの話。とても簡単な話だった。いつだって物事を悲観的にとらえて、複雑にしているのは自分だな。反省。