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街、人、パスタ
誰も私を知らないし、私も私以外の事をまるで知らない。そして、私の知らない街で、私の知らない人達が、私の知らない日々の生活を営んでいる。そういう知らない事がたくさんあると知れば知るほど、私の生活はどんどん軽やかに、そして豊かになっていく。そんな気がしている。
そんな訳で、私はまるで知らない街の小さなイタリアンのお店でパスタを食べるのが好きだ。
適当な駅で降り、駅周りを散策しながらイタリアンのお店を見つけ次第、ササッと入店する。時間は、お昼時から少し外した13時過ぎ。店も落ち着きを取り戻し、まったりした時間が流れ始める時間帯だ。
お客さん達は、普段遣いをしているようで店長と仲よさげに話している人や、仲睦まじく会話を楽しんでいる夫婦・カップル、ゲラゲラ笑っている友人同士、ゆっくりコーヒーを飲んでいる1人の方などなど、皆思い思いの過ごし方をしている。
勿論私も、懐に忍ばせた読みかけの文庫本なんて取り出して読んでみたりする。こうしてのんびりしていると、皆に受け入れられたような不思議な感覚がしてくる。この感覚がたまらないのだ。
そして、美味しいパスタを頂く。大体クリームパスタ。優しい味わいを噛み締めて、日々のストレスをほぐしていく。口の中で広がるクリームとちょっとした塩気のハーモニーは中毒性がある。暫し楽しみ、微睡みの時間を過ごす。至福の時間だ。
知らない街で、知らない人たちの中で、パスタを頂く。これだけで幸せな気分になれるなんて、私はなんて幸せ者なんだろう。
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