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小説ですわよ第3部ですわよ7-4

 特異点。全マルチアヌスの因果に干渉し、影響を与えうる存在。ギャルメイドたちにとっては宇宙秩序を乱しかねない危険因子。それが森川イチコだ。特異点は全マルチアヌス…

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17時間前
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小説ですわよ第3部ですわよ7-3

 戦いの構えをとった舞に、ギャルメイドたちが告げる。 「メイド長に相撲で勝て。さすればメイド長は森川イチコに戻り、宇宙お嬢様への謁見が叶うだろう」  舞がうなずく…

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小説ですわよ第3部ですわよ7-2

※↑の続きです。  初代ピンキーは第3アクアラインを走り抜け、暗黒空間アビス・オブ・アヌスに突入した。舞の眼前は一瞬だけ完全な闇に覆われたが、すぐに光が差しこむ…

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小説ですわよ第3部ですわよ7-1

※↑の続きです。  黒。漆黒の闇。色のない無の空間に、イチコは囚われていた。身体は自由だ。しかし上下左右がわからない。かといって無重力の空間に浮いているという感…

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小説ですわよ第3部ですわよ6-4

※↑の続きです。  綾子の邸宅脇にあるガレージ内で、初代ピンキーは桃色のカーカバーをかけられて眠っていた。舞が大きすぎるカバーをなんとか引っ張り剥がすと、敵対し…

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12日前
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小説ですわよ第3部ですわよ6-3

※↑の続きです。 ※田代マサヨ、愛助、渡部などについては、↑の第2部をご覧ください。  双子の太陽に肌を赤く焼かれながら、田代マサヨが声を張る。 「渡部さん、そっ…

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12日前
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小説ですわよ第3部ですわよ6-2

※↑の続きです。  胴回し回転蹴り。胴体を前方へ回転させながら、踵で相手の頭部を攻撃する蹴り技だ。主にフルコンタクト空手やキックボクシングなどで使われる。プロレ…

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13日前
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小説ですわよ第3部ですわよ6-1

※↑の続きです。  2013ねん 8がつ1日。木よう日。  きょうは、おっぱいの日だそうです。  ぼくはトシアキくんとミツハルくんといっしょに、カラス山にあそびにいきま…

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2週間前
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小説ですわよ第3部ですわよ5-6

※↑の続きです。 ※キクノスケと森川イチローについては↑をご覧ください。 「科捜研に入るんだ」  ブルーがあっけらかんと事務所から離れる理由を明かした。  科学捜…

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2週間前
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小説ですわよ第3部ですわよ5-5

※↑の続きです。  舞たちはバカ殿の貯金箱を割ってみることにした。記憶が封じられているらしき物体を雑に扱っていいのか最初は躊躇したものの、外側からいかなる手段を…

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3週間前
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小説ですわよ第3部ですわよ5-4

※↑の続きです。  綾子は寝転がるイチコの足を軽く叩いて起き上がるよう促し、ソファの空いたスペースにどしっと尻を沈める。舞は対面のソファに腰を下ろしながら質問を…

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3週間前
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小説ですわよ第3部ですわよ5-3

※↑の続きです。 ※まさおラモス化現象については↑をご参照ください。  硬直した珊瑚に、イチコは気にせず話を続ける。 「私が復活できたのは、人間ではなかったから…

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1か月前
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小説ですわよ第3部ですわよ5-2

 イチコは両腕を組み、両足を地面に根付かせ、敵を見据える。王は姿勢を崩さず平静であるように振る舞うが、強張った表情から動揺しているのは明らかだった。 「この地に…

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1か月前
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小説ですわよ第3部ですわよ5-1

※↑の続きです。  初代ピンキーは、かつてウラシマだった区域の中央を悠々と目指す。鉄柵を跳ねのけ、赤錆まみれのトタン屋根を吹き飛ばし、木造の柱へし折りながら。か…

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1か月前
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小説ですわよ第3部ですわよ4-6

※↑の続きです。  初代を追いかけるといっても、迂闊に接近することはできない。先ほどのスカラー電磁波と高圧電流による迎撃を再び食らうのがオチだからだ。幸い、ピン…

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1か月前
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小説ですわよ第3部ですわよ4-5

※↑の続きです。  初代ピンキーはタイヤに張り巡らされた無数のスパイクで、砂糖菓子を砕くかのように接地したアスファルトを削りながら、こちらへ突進してくる。ビリビ…

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1か月前
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小説ですわよ第3部ですわよ7-4

小説ですわよ第3部ですわよ7-4

 特異点。全マルチアヌスの因果に干渉し、影響を与えうる存在。ギャルメイドたちにとっては宇宙秩序を乱しかねない危険因子。それが森川イチコだ。特異点は全マルチアヌスにおいて、唯一無二である。だが、特異点に限りなく近い者――『近似存在』がいる。その中のひとりがミュージシャン/タレントである、田代まさしだ。
 かつてアヌス02の神沼は、特異点への直接的な接触を避け、近似存在を手中に収めようとしていた。特異

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小説ですわよ第3部ですわよ7-3

小説ですわよ第3部ですわよ7-3

 戦いの構えをとった舞に、ギャルメイドたちが告げる。
「メイド長に相撲で勝て。さすればメイド長は森川イチコに戻り、宇宙お嬢様への謁見が叶うだろう」
 舞がうなずくと、ギャルメイドたちはどこからともなくラインカーを持ち出し、コロコロと転がし始める。石灰で白い円が描かれ、即席の土俵が完成した。
「何度勝負しても構わぬ。一度でもメイド長に勝てばいい。好きなだけ挑むことだ」
 一度でも勝てばいい。ずいぶん

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小説ですわよ第3部ですわよ7-2

小説ですわよ第3部ですわよ7-2

※↑の続きです。

 初代ピンキーは第3アクアラインを走り抜け、暗黒空間アビス・オブ・アヌスに突入した。舞の眼前は一瞬だけ完全な闇に覆われたが、すぐに光が差しこむ。気がつくと初代ピンキーは、どこともわからぬトンネルの出口から抜け出ていた。
 舞の目が眩しさに慣れる。飛びこんできたのは見覚えのある石畳の広場と、モスグリーンの屋根が印象深い城のような建造物だった。
「あ! 金日成広場だ!」
 『金日成

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小説ですわよ第3部ですわよ7-1

小説ですわよ第3部ですわよ7-1

※↑の続きです。

 黒。漆黒の闇。色のない無の空間に、イチコは囚われていた。身体は自由だ。しかし上下左右がわからない。かといって無重力の空間に浮いているという感覚もない。ここから走り出すために一歩踏ん張るための地面だけがない。奇妙なのは漆黒ではあるが暗闇ではないということだ。肌色の手、黒い髪やジャージ。切るのをサボっていたので、爪の先の白い部分が伸びているのがわかる。
 どれだけ、この場所に幽閉

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小説ですわよ第3部ですわよ6-4

小説ですわよ第3部ですわよ6-4

※↑の続きです。

 綾子の邸宅脇にあるガレージ内で、初代ピンキーは桃色のカーカバーをかけられて眠っていた。舞が大きすぎるカバーをなんとか引っ張り剥がすと、敵対していたときと変わらぬ威圧的な姿を見せる。変わったのは中身だ。以前は超常能力者たちの死体を動力源としていたが、綾子の魔法と原子力(!)で稼働する本来のエンジンに換装されたと聞いた。こんな巨大で物騒なトラックをイチコと綾子が乗り回していたとい

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小説ですわよ第3部ですわよ6-3

小説ですわよ第3部ですわよ6-3

※↑の続きです。

※田代マサヨ、愛助、渡部などについては、↑の第2部をご覧ください。

 双子の太陽に肌を赤く焼かれながら、田代マサヨが声を張る。
「渡部さん、そっちどう?」
 ハンチング帽の男が砂漠を踏みしめて振り返った。何度見ても、戦場カメラマンの渡部陽一に似ているとマサヨは感心する。それもそのはず、この男は渡部陽一の並行同位体である。
「大幅にぃ減少していますぅ。というよりぃ、ほとんどゼロ

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小説ですわよ第3部ですわよ6-2

小説ですわよ第3部ですわよ6-2

※↑の続きです。

 胴回し回転蹴り。胴体を前方へ回転させながら、踵で相手の頭部を攻撃する蹴り技だ。主にフルコンタクト空手やキックボクシングなどで使われる。プロレスでは『浴びせ蹴り』として使われており、舞はこちらの名前を好んでいた。アクロバティックな動きゆえ、安易に出せば簡単に避けられてしまうが、相手の意表を突ければ大ダメージを期待できる。
 しかしこれは、あくまで人間同士の話だ。この宇宙の法則そ

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小説ですわよ第3部ですわよ6-1

小説ですわよ第3部ですわよ6-1

※↑の続きです。

 2013ねん 8がつ1日。木よう日。
 きょうは、おっぱいの日だそうです。
 ぼくはトシアキくんとミツハルくんといっしょに、カラス山にあそびにいきました。おとうさんやおかあさんは、かみかくしにあうのでいくなといいますが、トシアキくんがへいきだというので、いきました。
 山でぼくは、むらさき色の長いぼうをみつけました。たくさんボタンがついていて、おすとウネウネするのがたのしかっ

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小説ですわよ第3部ですわよ5-6

小説ですわよ第3部ですわよ5-6

※↑の続きです。

※キクノスケと森川イチローについては↑をご覧ください。

「科捜研に入るんだ」
 ブルーがあっけらかんと事務所から離れる理由を明かした。
 科学捜査研究所。通称:科捜研。
 各都道府県の警察本部に附属する機関である。科学捜査の研究や鑑定などが主な活動だ。警察にコネをもつホワイトの紹介で、ブルーは特別採用枠の所員に採用されたという。
 ちなみにブルーの特技は『つんつん』。指でつつ

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小説ですわよ第3部ですわよ5-5

小説ですわよ第3部ですわよ5-5

※↑の続きです。

 舞たちはバカ殿の貯金箱を割ってみることにした。記憶が封じられているらしき物体を雑に扱っていいのか最初は躊躇したものの、外側からいかなる手段を用いても中身を解析できなかったのだ。しかし貯金箱自体に魔法や超常能力が施されているわけではないことは、綾子の魔法で判明した。つまり解析不能な中身が傷つかなければいい。
 早速、岸田がトンカチを用意してくれた。破壊役を担ったのは舞だ。イチコ

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小説ですわよ第3部ですわよ5-4

小説ですわよ第3部ですわよ5-4

※↑の続きです。

 綾子は寝転がるイチコの足を軽く叩いて起き上がるよう促し、ソファの空いたスペースにどしっと尻を沈める。舞は対面のソファに腰を下ろしながら質問を投げる。
「『やすし』って誰ですか?」
「ドラキュラ伯爵」
 代わりにイチコが答える。喋るとカチューシャ(ホワイトブリルというらしい)が揺れるのが落ち着かず、舞は「なぜドラキュラが『やすし』なのか」を聞きそびれた。イチコはお構いなしに、隣

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小説ですわよ第3部ですわよ5-3

小説ですわよ第3部ですわよ5-3

※↑の続きです。

※まさおラモス化現象については↑をご参照ください。

 硬直した珊瑚に、イチコは気にせず話を続ける。
「私が復活できたのは、人間ではなかったからだ。頭を吹っ飛ばされたが、心臓はまだ動いていた。あのときブルーと2代目おでんつんつんおじさんが施したのは『まさおラモス化現象』――」
 ここでイチコは『まさおラモス化現象』の説明が複雑になりそうだったので、簡潔に言い直した。
「つまり私

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小説ですわよ第3部ですわよ5-2

小説ですわよ第3部ですわよ5-2

 イチコは両腕を組み、両足を地面に根付かせ、敵を見据える。王は姿勢を崩さず平静であるように振る舞うが、強張った表情から動揺しているのは明らかだった。
「この地に降り注ぐ大量のスカラー電磁波が、汝を覚醒させたというのか? だが40年前には何も起こらなかった……」
「時が来た。それだけだ」
 イチコは淡々と言い放った。切れ長の目はいつにも増して鋭く、ハスキーな声はより低く重々しい。紡がれる言葉も別人だ

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小説ですわよ第3部ですわよ5-1

小説ですわよ第3部ですわよ5-1

※↑の続きです。

 初代ピンキーは、かつてウラシマだった区域の中央を悠々と目指す。鉄柵を跳ねのけ、赤錆まみれのトタン屋根を吹き飛ばし、木造の柱へし折りながら。かつて行き場のない返送者たちの拠り所であったが、もうここにそんな哀れな被害者は住んでいない。みんな死んだか、初代の糧にされた。

 遅れて到着したイエローとゴールドが愛車を停め、絶望に声を震わせる。
「王が初代を手にした……もう終わりだ……

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小説ですわよ第3部ですわよ4-6

小説ですわよ第3部ですわよ4-6

※↑の続きです。

 初代を追いかけるといっても、迂闊に接近することはできない。先ほどのスカラー電磁波と高圧電流による迎撃を再び食らうのがオチだからだ。幸い、ピンキーの分析で迎撃の射程は初代から周囲20m前後だとわかっていた。舞たちはイエローの調合が終わるまで車間距離を保ちながら追走する。

 初代はこちらの企みを、ある程度は察知しているのだろう。牽制すべくアームのひとつを稼働させる。アーム先端部

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小説ですわよ第3部ですわよ4-5

小説ですわよ第3部ですわよ4-5

※↑の続きです。

 初代ピンキーはタイヤに張り巡らされた無数のスパイクで、砂糖菓子を砕くかのように接地したアスファルトを削りながら、こちらへ突進してくる。ビリビリと小刻みだった振動が、地の底から突き上げられる震動となっていく。
 と、初代がヘッドライトをパッシングさせる。舞が頭に「?」を浮かべた直後、ピンキーが叫ぶ。
「先輩……いえ、初代ピンキーより高濃度のスカラー電磁波、および高電圧を検知! 

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