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小説ですわよの番外編ですわよ

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小説ですわよの番外編です
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小説ですわよの番外編ですわよ1-1

※↑シリーズの短編です。 『トム・ハンクス・ババア』  2022年12月23日(金)。午前8時52分。  ショッキングピンクのハイエースが、ちんたま市の交差点で青信号を待っている。出勤のピークを過ぎ、道行く自動車は減りつつあった。  水原 舞は助手席から身を乗り出し、バックミラーに自らの髪の毛を映した。頭頂部付近の数本が、ぴょこんと天を指していたので、急いで手櫛で直した。それでも、やはり跳ね上がっている。  舞は諦めてタブレットを取り出し、今朝1件目の仕事内容を確認する。

小説ですわよの番外編ですわよ1-2

※↑の続きです。 「イヤッホォォウ! イカれた返送者はどこだぁぁぁッ!」  銭井の絶叫と共に、ピンクのハイエースが穴側の河川敷を突っ走る。舞は「イカれてるのは、あんただろ」と脳内で悪態をついた。車が激しく揺れ、舌を噛みそうになったので、舌打ちを付け加えたくもなった。  カーナビが標的への接近を知らせる。 「直進100m先、間もなく標的と接触します。ご武運を、ミズ銭井」 「気を遣えるナビさんなので、ありがとう」  銭井はハイエースを徐行させ、標的まで15mほどの地点で停め、

小説ですわよの番外編ですわよ1-3

※↑の続きです。  ハイエースは戸渡市に隣接する柄露尾市まで来た。S県を縦断する街道・中出道から外れた市街地に、銭井の弟の仇は住んでいた。  仇の名は車馬蔵 珍平。三下じみた名前だが、この男が率いる車馬蔵組は、関東の巨大暴力団・I会傘下きっての武闘派らしい。戦後から高度経済成長期にかけ、抗争で名をはせたという。  そんな車馬蔵は少年時代、東京の浅草に住んでいた。銭井姉弟とは幼馴染みでよく遊んでいたそうだ。ある日も、姉弟と車馬蔵は遊んでいた。そして、車馬蔵が井戸の前でふざけ

AIに小説ですわよの番外編を書いてもらいましたわよ

※↑の番外編をAIに書いてもらいました。 ※冒頭は投稿者が入力した文章です  2022年12月23日(金)。午前8時52分。  ショッキングピンクのハイエースが、ちんたま市の交差点で青信号を待っている。出勤のピークを過ぎ、道行く自動車は減りつつあった。  水原 舞は助手席から身を乗り出し、バックミラーに自らの髪の毛を映した。頭頂部付近の数本が、ぴょこんと天を指していたので、急いで手櫛で直した。それでも、やはり跳ね上がっている。  舞は諦めてタブレットを取り出し、今朝1件目

小説ですわよの番外編ですわよ2-1

※↑の番外編です。  2022年 12月20日 火曜日。  昨日、舞は激闘と茶番の末に神沼と宝屋を倒した。しかし返送者がいなくなるわけではない。翌日も返送の仕事はある。  ショッキングピンクのハイエースが、大摩羅駅から徒歩10分ほどに位置する工場付近で停車した。  この工場は、神沼の会社が経営しており、神沼が生成した吐しゃ物――神汁の原液――を加工・パッケージングしているという。工場の経営者や現場責任者は返送者で、一般人のアルバイトに暴力暴言を浴びせ、法外な低賃金と労働時間

小説ですわよの番外編ですわよ2-2

※↑の続きです。  舞が銃口を視界に捉えた瞬間、レッドとホワイトの姿が消える。ふたりはそれぞれパンチと峰打ちを繰り出し、文字通り瞬く間に警備兵を気絶させた。  舞はおそるおそる周囲を確認しながら、エレベーターから出る。へなへなと座りこんだ男を残し、エレベーターの扉が閉じた。  静寂の中、ゴオンゴオンと機械の稼働音が響き、床をかすかに振動させる。階下の作業エリアから発生しているようだ。  ホワイトが刀を振り、体液を払い落とす。血糊ならば恰好がつくのだが。 「このフロアに社長

小説ですわよの番外編ですわよ2-3

※↑の続きです。 「御社で宝屋のウンコを保存していませんか?」  舞は指示通りに質問する。宝屋の肉体や排せつ物がこの世界に残存しており、それが念話を妨害しているというのが綾子の推測だった。  すると社長は明らかな動揺を見せ、むせて葉巻の煙を吐き出す。 「なっ、バ、バカな。そんなもの保存してあるはずが……」  視線を外した先には、冷蔵庫があった。レッドが素早く近づき、ドアを開ける。しかし中は空だ。野菜室も同様だった。最後の冷凍室に”それ”はあった。 「うへぇ、汚ねぇ~ッ! 

小説ですわよの番外編ですわよ3

番外編3『吸血鬼とアクアマリン・エトランゼ』  2022年 12月20日 火曜日。  綾子は事務所の社長室で、大摩羅の工場を占拠したと客人に聞かせた。客人はピロロロと奇妙な音を、身体の奥から立てて唸る。 「おぞましいな」 「心外ね。誰も不幸になってないのだけれど。悪趣味なアリ社長でさえ」 「君じゃなく、その社長だ。この世界の人間なのだろう? それが超常能力を有した返送者たちを、恐怖と暴力で支配していた」 「別の返送者コミュニティと繋がりがあったおかげよ」 「そこは重要ではな

小説ですわよの番外編ですわよ4-1

※↑の番外編です。 『英雄は殺意の先にいる』  ビール缶のプルタブが開き、プシュッと炭酸の漏れる音が木造アパートのダイニングに響く。  死んだはずの、殺されたはずの男が帰ってきた。帰ってきてしまった。  弟は逃げるように家出した。母は今朝、和室の畳にひれ伏し涙をこすりつけたあと仕事に出かけた。まだその染みが残っている。本当に涙だけか? 血かもしれない。  私は……本当なら、高校へ向かうはずだった。クソオヤジが死んで、友達に励まされながら青春を取り戻すはずだった。だが、彼氏

小説ですわよの番外編ですわよ4-2

※↑の続きです。  2022年 12月22日 木曜日。  S県阿江木越市にある刑務所の前に、珊瑚は立っていた。  ここに恋人の……恋人だった胡堂 彩斗が収容されている。  だが彩斗の家族は、珊瑚が面会することを拒否していた。  当然だろう、息子の人生を狂わせた原因なのだから。また、大学生の息子が女子高生と交際していることに対しての嫌悪感もあるようだった。  それでも珊瑚は、時折こうして刑務所の前にやって来てしまっていた。かといって、なにができるわけでもない。入口前の柱によ

小説ですわよの番外編ですわよ4-3

※↑の続きです。  珊瑚は最寄りの裏筋駅へ戻り、コンビニのATMで、さきほど失敗した稼ぎの穴埋め分を引き出す。思わずため息が漏れた。この口座はお年玉や短期バイトで貯めた金が入っており、母が管理してくれていた。本当ならば大学へ進学した際、珊瑚が自由に使えるようになるものだった。将来のため有効に使ってほしいという愛が込められたものだ。しかしクソオヤジが戻り、母は万が一のために予定を早めて、珊瑚に渡した。いざというときは、この金で遠くへ逃げろとも言われた。だが、できようもない。そ

小説ですわよの番外編ですわよ4-4

※↑の続きです。  ピンク女と黒女は顔を見合わせ、互いにうなずく。 「行くよ、水原さん!」 「はい、イチコさん!」 「とうぅ!」 「とうっ!」  イチコ――黒女と、水原――ピンク女は同時に助走をつけてジャンプし、 天井スレスレの放物線を描きながら、クソオヤジに飛び蹴りを食らわせる。 「ダブルアルバイターキィィィック!!」  クソオヤジは飛び蹴りを受けて後方へ吹っ飛び、ピラミッド状に積まれたビール缶の山に突っこんだ。その丸々と太った醜い身体を起こすのに苦労し、短い手足をジタバ

小説ですわよの番外編ですわよ4-5

※↑の続きです。  珊瑚たちが部屋に戻ると、荒れた部屋はすっかり元通りになっていた。気を失っている母に、ブルーが缶詰の匂いを嗅がせている。 「あ、お帰り。お母さんは、もうすぐ目を覚ますと思うよ」  パープルは背中を丸め、ボソボソ呟く。 「部屋は直しといた」 「ありがとう。そ、それと……ホテルでキンタマ蹴っちゃってごめんなさい」 「気にしないで……」 「ハハーッ! 本番強要してもしなくても、キンタマ蹴られる運命なんだなあ」 「うるさいよ! で、この子はどうするの? グリーンを