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何もしない

「申し訳ございませんが、開始が予定より20分遅れます。近くにカフェ、待合室にはWi-Fiがあります。」

朝食直後でコーヒーさえ要らなかった私達は、どうしようかと周りを見る。古びた空席のソファが輝いていた。迷わずソファに座り、ふと思う。近所のカフェやインターネットの案内など、何かすることを提供するのがもてなしなのだろう。数十分、ただ待ってください、とは言わない。しかし、ただソファにゆったり座れる時間の有難さ。お陰で、遅れて始まったクライミングも、より楽しめた。

普段、バタバタと動き回った後に、一息つこうとお湯を沸かす。直ぐまた忙しくなって、沸かしたことさえ忘れることが日常茶飯事なのは、バカバカしい限り。一瞬、目でも閉じた方がよっぽど効果的な休憩だろう。急いでメールをチェックしてしまったりもする。ベッドに倒れ込むほど疲れていない限り、本当に「何もしない」休憩をあまり取らない。これでは、疲労が溜まって当然だ。例外として、オフィスに座る時間が長かった時期は、昼休みの散歩が午後の効率にもとても効果的だったが。

先日、長男に
「ママ、今嘘ついた」と言われた。

嘘をついた覚えの無い私は、
「何が嘘だった?」

週末はどうだったかと聞く友人に、私が「のんびりしてた」と答えたことらしい。誕生会などイベントに行かず、今週末は家でゆっくり過ごしたという意味だったが、息子から見るとリラックスなど全然していなかったようで、嘘と解釈されたのである。確かに、家事の合間に読書しようと本を開いても、1ページ毎に邪魔される。ぬいぐるみの布団作りをしていた子供が裁縫の結び目を作ってとか、糸が絡まったから助けてとか。唯一、一瞬の昼寝が出来たのは、息子が母と長電話していた時なので、彼の記憶には休んでいる私は無い。なるほど、と思った。

何もしないことを意識しよう。何もしないことを極めたら、何かできるかもしれない。


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