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#西尾維新

4/30 『鬼怒楯岩大吊橋ツキヌの汲めども尽きぬ随筆という題名の小説』を読んだ

ウフフフフ爆笑。いや爆笑はさすがにしてないし、ウフフフフとも声をあげて笑いはしなかったが、終始ニヤついて読みたくなる小説だった。まあニヤつきながら本を読んでいたら不気味なので、結局無表情で読み切ったわけだけど……多分。気持ち的にはウフフフフ爆笑。 一言でまとめるなら、「西尾維新の特長ともいえる無駄に手の込んだ言い回しや野放図な言葉遊びが、手段ではなくそれ自体を目的として書かれた小説」とでも言うべきか……あるいは「西尾維新が『西尾維新みたいな小説書いてください』って言われて書い

10/11 『ウェルテルタウンでやすらかに』を読んだ

Amazonでオーディオブックのサブスクサービスが始まり、そのラインナップの一つとしてまず本作のオーディオブックが発表され、その後書籍化されたものが本書。オーディオブックでは聴いていない。西尾信者として不覚悟の謗りを免れないが、他に聴きたいと思えるものもざっくり見当たらなかった……し、そもそも日々のラジオ視聴でお耳がいっぱいいっぱいというのもある。というわけで折角の新進気鋭なサービス企画のところ申し訳ないが、従来通りお目目から読ませていただいた。ラジオを聴きつつ。 書き下ろし

5/22 『戦物語』を読んだ

また遭う日、もう来たわ。さすがに今までよりやや期間は空いたものの。もう語る物語も無いかー寂しくなっちゃうななんて言ってたら、まだまだ全然語るじゃん阿良々木くん……まあ、語られた以上は、耳を傾けますが。 ただ今回は新たな怪異に出遭うこともなく、そして蛇足や語り残しのような何かを終わらせる物語でもなく、むしろ新たな始まり方を模索する物語ではあった。いくらでも終われるけど、同じくらいいくらでも始められるんだぞというつよい意志を感じる(今作だけに、石だけに、と言ってもよかったが、あい

5/9 『怪人デスマーチの退転』を読んだ

なんだかこのシリーズは既存シリーズとはやや毛色が違うな、と思うのだった。なんというか、否定力が強い……自己評価の低い主人公というのは、そらもう戯言遣いやら阿良々木くんやら、沢山いるんだけれども、それらともちょっと違って、自己肯定力はあるけど生き方として否定的っていうか。前巻でも若干感じていたことではあったけど、それは令和の時代に怪盗モノをやるという設定からくる、自虐的な諧謔のようなものだと思っていたが、今巻での描写をみるに、ちょっと諧謔の域を越えているように思える。何故なら父

2/15 『キドナプキディング 青色サヴァンと戯言遣いの娘』を読んだ

戯言シリーズ17年ぶりの最新作にして正当続編、にして総集編のような話だった。『クビキリサイクル』から『ネコソギラジカル』までの流れをギュッと濃縮した感じ……いや、『クビキリサイクル』で主人公がいきなり車に轢かれたりはしなかったが。それはだいぶ終盤だし轢かれたのは主人公でもなかったが。轢いた人は同じだった。 事前にお出しされていたイラストやPVで既に青色サヴァンと戯言遣いの娘は好きになっていたが、本文での語り口も小気味よくて楽しい。まあ、何故かといえば阿良々木暦と瞳島眉美をほど

10/13 『怪盗フラヌールの巡回』を読んだ

まず、イラストが大変よろしゅう存じます。TAKOLEGS先生、FGOなどで見知って、いいなと思ってたけど、西尾維新のつくるキャラとの相性もバッチリじゃない。登場人物紹介ページを見るに、今巻の登場人物全員分のイラストが描かれてるようなんだけど、どっかで見れないんか。足元だけなんてむごいぜ。 ともあれ始まった西尾維新の新シリーズ作品。返却怪盗……忘却探偵のライバルにいそうな肩書きで、美少年探偵団のようにマジで元々はそういうつもりで産み出されたキャラクターだったのかもしれない。なか

7/9 『掟上今日子の忍法帖』を読んだ

掟上今日子、ニューヨークに立つ。しかしどうした理由で降り立ったんだったか記憶が曖昧だったが、前巻のホワイト・ホースによる襲撃を受けてのことだったか。事務所が爆破されたってのもなんとなく覚えがある……それらがすべてヤクスケ・カクシダテのせいってことになっているのは覚えがないが、納得感だけはある。いやていうか今日子さんの世界的重要性が巻を追うごとにどんどん上がってはいるが、それを上回る勢いで厄介くんの世界的脅威性が跳ね上がっていってるな? 「『忘却探偵』シリーズは西尾維新作品イチ

8/30 『死物語 下』を読んだ

面白かった。 正直、モンスターシーズンにおける撫子パートはオマケのようなものだと、いやモンスターシーズンじたいがある種のおまけ、撫子風に言うところの蛇足パートであり撫子パートはそのさらにオマケのような認識でいたから、こうしてモンスターシーズンの最後の締めを飾るってなったときは、やっべあんま話覚えてねえと焦った。上巻とは話の繋がりはないということでやや安心したし、実際読んでみて、わりとそれでも大丈夫だったのでよかったが。 しかしそれならそれで、阿良々木暦とももう関係なく、話と

8/25 『死物語 上』を読んだ

面白かった。 読みだしてまず、作品世界内に新型コロナウイルスが存在していることに驚いた。いやいやまあまあ、さんざんアニメ化ネタやら他シリーズネタやらのメタなネタやりまくってるんだから、別にコロナウイルスネタが入ってたって不思議じゃないんだけど。『りすか』の最終巻でも言及はあったし、『掟上』でも企画とはいえトリックに盛り込んでたのだから驚くには値しない筈なんだが、それでも何故か……『物語』シリーズが現実と地続きであることがどうしてか衝撃だった。いや、時系列というか時間の流れど

5/15 『モルグ街の美少年』を読んだ

面白かった。 アニメ化をうけての番外編というか、ボーナストラック的な短編+短短編。いやさ耽々編。番外編だからといつにも増してメタネタが多い……いや、これはなんかもうメタっていうか、アレだな、ドラマの最後に、役者が「このドラマのノベライズを視聴者〇名様に抽選でプレゼント致します!宛先は↓こちら↓」みたいな空気。番宣とは言ったもの。 短編の方は仲良く謎解きゲームに興じる在りし日の美少年探偵団。えらいもんで、アニメを観てからだと、それぞれのキャラの脳内音声がすっかりアニメ音声に入

4/29 『掟上今日子の鑑札票』を読んだ

面白かった。が、なかなか難しい。 掟上今日子の過去に迫り、その驚愕の秘密が明かされるも、しかし最終的には「人違いですよ」で収められてしまう……だがそれを否定できるものはいない。今日子さんには今日しかないから。逆に言えば、今日このときだけ今日子さんが今日子さんでいれば、それはもう今日子さんなのだ。今日子さんの昨日が、あるいは明日が今日子さんでないとしても、今日さえ今日子さんならば、それで困る人はいない。せいぜい常連でお世話になっている稀有な依頼人がちょっと疑心をもたげる程度で

1/6 『新本格魔法少女りすか 4』を読んだ

面白かった。 いや、終わった……めちゃめちゃ終わった。よくもまあ、完結したものだ……それも、完膚なきまでに完結した。いちど中断した作品を、よくここまで完膚なく終わらせられるなと感嘆した。 確かに、年月を経たことによる文体というのか雰囲気というのかの微妙な変化というのはあり、西尾維新といえどいろいろ変わるものはあるんだなあと思えるところはある。キズタカそんなに駄洒落好きだったっけ?とか。ただ、そんな言いがかりも最後のあの台詞を聞けばイチコロよ。全て許せた。許すばかりか感謝感激だ

12/31 『新本格魔法少女りすか 3』を読んだ

面白かった。水倉鍵の登場からのピンチに次ぐピンチ、ボリュームは少ないけれど見所は多い。水倉鍵は忍野扇の原型みたいな奴だったんだなあ。今まで連想しなかったのが不思議なくらい。りすかの啖呵も格好いい。そして折口きずなの魔法もめちゃくちゃで好きだ。 あと再読して気づいたこととして、キズタカ、完全記憶能力の持ち主なんだな。早熟の秘密か。夢の中とはいえ、生まれてからの十年間のすべてを記憶していると、二千歳のツナギに向けて言っているのはえもいわれぬ趣がある。「忘れたら、思い出せばいい」な

11/24 『人類最強のヴェネチア』を読んだ

面白かった。 講談社ノベルスで出ていた前シリーズに切りをつけて単行本でリスタートしたのに、今までで一番講談社ノベルスみたいな出だしである。『デリバリールーム』とほぼ同時期に何書いてんだ。書き下ろしてんだ。 しかしリスタートしただけあり前『最強』シリーズ(『最強』シリーズ前期?)のキャラと『戯言』シリーズからのキャラをそれぞれお供に繰り広げられる女子旅道中はとても楽しかった。キャラ同士の掛け合いのみならず、普通に旅トークが楽しい。旅行好きな西尾維新のこと、言及された名勝名跡には