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8/25 『死物語 上』を読んだ

面白かった。

読みだしてまず、作品世界内に新型コロナウイルスが存在していることに驚いた。いやいやまあまあ、さんざんアニメ化ネタやら他シリーズネタやらのメタなネタやりまくってるんだから、別にコロナウイルスネタが入ってたって不思議じゃないんだけど。『りすか』の最終巻でも言及はあったし、『掟上』でも企画とはいえトリックに盛り込んでたのだから驚くには値しない筈なんだが、それでも何故か……『物語』シリーズが現実と地続きであることがどうしてか衝撃だった。いや、時系列というか時間の流れどうなってんだという話になるんだけどね。そのへんはまあ、うまいことやってくれということか。

むしろ驚いたのは、そのようにして西尾維新が「現実」を描こうとしていること……だったのかもしれない。作中の時空を操作してまで、(おそらくは)モンスターシーズンが始まった頃に想定していた最終巻の内容を変更してまで、その頃には存在してもいなかった新型コロナウイルスという存在、コロナ禍という現在を物語に盛り込むという決断に。ぶっちゃけ、そういうのあんまり興味ないんじゃないかって思ってたもの。そういう作風だと思ってたもの。それがそうではなかった、ということに対する驚き。その辺の、西尾先生の今の世の中に関して、あるいは作品執筆に関して現在どういった心境を持っているか、非常に興味があるが、とりあえずはさておいて。

そうは言っても話の導入部として使われてるだけだろうと思っていた新型コロナウイルスが、しかし最後までがっつりと本筋に関わってきていたことに再び驚く。吸血鬼だけに感染する未知のウイルス、謎が謎を呼ぶというか謎に謎を被せたような事件の解決法はひどく胡乱なものになってしまうんじゃないかと危惧し、実際阿良々木くんの推理パートとか途中までちょっとそんな感じだったようにも思うが、しかし最終的には実にきれいにまとまっていた。

さて、下巻は時系列も上巻より前で話の繋がりはないとのことで、これにて阿良々木暦の物語は終わり、ということになるのか。ややあっけない気もするが、大学卒業後の話も既に書かれているし、今までさんざん終わりに終わり続けてきた『物語』シリーズだから、こんな終わらない終わり方もアリではあるが。食飼命日子は普通にただの友達だったんかい。大学も卒業し、物語の大トリも撫子に譲ったのだから、確かにこれ以上語る物語などないのだろう。まあ、そう言って何度も続いてきたのがこの作品なんだけども。

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