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【読書感想文】 2021年上半期のベストセラー芥川賞受賞作 『推し、燃ゆ』

「推しは推せる時に推せ」

という、SNSなどでよく見るこの言葉は名言だと思っています。

思い起こせば中学生だったある日、ずっとファンだった某邦楽ロックバンドが解散してしまった時のショックは計り知れないものがありました。

やっと自分でCDアルバムを購入できるようになったばかりの頃で、この感情と情熱をどこに持っていけばいいのか分からなくなり、"もっと早く生まれてくれば良かった"と思いながら、部屋で孤独に悶々とすべてのCDアルバムをひたすら聴き続けたことを覚えています。

推してた推しが居なくなるのも哀しいですが、推せるようになった時に推しが居なくなるのもなかなか哀しいものです。

故に、推せる時に推せる推しが居るというのは、とても幸せなことなのだと思わずにはいられません。

2021年上半期のベストセラー小説

本日は、『推し、燃ゆ』(宇佐見りん 著)をご紹介します。

第164回芥川龍之介賞受賞作

2021年上半期のベストセラー小説だそうです。

確かに、当時、SNSで毎日このピンク色の表紙と感想文を観ていました。

本屋大賞にもノミネートされていたので、その影響もあるのかもしれません。

そんなわけで、私も遅ればせながら手に取った次第です。

業と苦しみを肯定してくれる何かが必要なのでは

この作品は、トラブルで炎上した男性アイドルを推し続けることで自分を生かしている女子高生の物語。

この主人公ほどの熱量で推しを推せるというのは一種の才能であり、羨ましく思う一方で、推される相手も人間であるだけに、その存在が永遠ではないことを想像すると、それに依存することのもろさと恐ろしさを感じてしまいます。

それ故に、主人公が抱えるどうしようもないことと彼女を取り巻く世界の無情さとが相まって、結末に近づくにつれ、この子は自ら命をってしまうのではないか、とドキドキしながら読んでいました。

業と苦しみを肯定してくれる何かが主人公には必要なのでは、というのは私の考えすぎでしょうか。

それにしても、公に登場する、いわゆる"夢を与える仕事"というのは、本人が想像する以上の重大な責任を伴う仕事であるということに気づかされます。

人生すべてをつぎ込み、24時間365日想い続けることを惜しまないファンがついているかもしれないのですから。

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P.S.

これより前に芥川賞を受賞した某作品と比較されることが多いようですが、共感度が高いのはこちらかもしれません。

何かを好きになるのは生きる原動力になりますが、生き甲斐にするのは違うのかな、と考えたりします。

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