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サッカー用語解説 「良いボール」とは?

今回も火曜日のサッカー談義は、用語解説です。

サッカー中継の実況や解説で頻繁に耳にするこの言葉、
「良いボール」についてです。

「良いクロス」
「良いセンタリング」
「良いパス」
などと言われることもありますね。

この「良いボール」ですが、何だか漠然としすぎているような気がしませんか?

初めてサッカーを見る、たまに見るけど詳しくは無いという人からすれば
「アナウンサーや解説の人がそう言ってるんだから、きっと良いボールなんだろう」
とあまり気にしないかもしれません。

しかし、いわゆる「にわか」の状態から、
本格的に好きになり、スタジアムに加入したり、ダゾーンに加入して頻繁に国内外のサッカーを見るようになると、
「良いボールって何?」
という疑問を抱くようになる方もいるのではないでしょうか。

今回はそんな、「サッカー観戦素人以上、玄人未満」なかたへ向けた解説の記事となります。

僕も自信満々で「玄人です」なんて言えませんが、
観戦歴だけは20年近いので、偉そうに解説させていただきます。

さて、本題の「良いボール」ですが、
日本においてはまだ、明確な定義は無いように思います。

サッカー用語の定義を一貫させることは、
日本サッカーの強化を考える上でも、
試合中に飛び交うコーチングに使う用語の意味は、
統一されて然るべきですし、
我々応援する側にもそれが浸透することは、
サッカー大国の必須条件だと思います。

このことは、「サッカー実況四天王」の倉敷保雄さんや、
元日本代表、鹿島アントラーズの3連覇に貢献した岩政大樹さんなども、
以前おっしゃっていたように記憶しています。

このように、日本ではまだまだサッカー用語の意味の統一化は成されていないという現状があります。

そんな前提条件の上でお話させてもらうと、
今回の「良いボール」にもいくつかの定義があります。

解説者によってバラ付きがあるのが現状です。

そこで、僕が普段サッカー中継を見る中で登場する「良いボール」の分類を、
独断と偏見でしていきたいと思います。

「良いボール」には人によって定義にバラ付きがあること、ということの他にも、
今回分類していく上で、もう1つルールを設けたいと思います。

それは、「良いボール」が、
「良いスルーパス」や「良いフィード」なのか
「良いクロス、センタリング」なのか
「良いフリーキック、コーナーキック」なのか、
という条件付けです。

これを統一しないと、なかなか分類が難しくなってくるので、ここは勝手に線引きをさせてもらいます。

今回の「良いボール」の定義付けにおいては、

「シュートに繋がるサイドからのクロス、センタリング(セットプレーを含む)」
とします。

この前提条件の上で、
どんなクロス、センタリング、セットプレーが
「良いボール」なのかを考えていきたいと思います。

それでは発表します。
僕が20年の観戦歴からまとめた「良いボール」の条件がこちらです。

①ボールの受け手が体勢を変えたり、無理なトラップなどのひと手間を加えないで済むもの
②受け手の走り込みやジャンプの力感、スピードを損なわないで済むもの
③キーパーとディフェンスが届かないもの
④人ではなくスペースに出されたもの
⑤状況に応じたふさわしい回転がかかったもの

少し難しい言い回しになってしまったかもしれませんが、1つずつ解説していきます。

まず1つ目ですが、パスの受け手が走り込んでいる後ろ側にポールが行ってしまっては、
「良いボール」とは言えませんね。
強すぎるボールや弱すぎるボールも、シュートに向けてひと手間加える必要がありますのでNGとなります。

2つ目は、ボールを受け手の進行方向と同方向に出したとしても、受け手の走るスピードや力感を殺すボールになってしまうと、シュートに上手く力が伝えきれずあっさりディフェンスやキーパーに止められてしまうため、これも「良いボール」とはなりません。

3つ目は、実際の中継で言及されることも多いのですが、
キーパーが飛び出せない、あるいは飛び出しても触れない、ディフェンスの頭は超すけれど味方の頭は超えない、この絶妙なラインにボールを蹴り込むことが、「良いボール」の1つの条件と言えます。

そして4つ目。
足元にピンポイントでボールを送る、通称「ステーションパス」各駅停車のパスよりも、スペースに出したほうが、シュートに繋がりやすいです。これは2つ目にも通じることですね。
元日本代表の内田篤人さんも、人ではなくスペースにクロスを送ることの大切さを説いていますね。
元日本代表で元川崎フロンターレ監督の風間八宏さんも、解説で「待ち合わせ場所」というオシャレな言葉を使っています。
これはサッカーをやっていた人や観戦歴の長い人からすると珠玉の名言で、
まさに言い得て妙です。
用例としては、
「今のプレイ、ミュラーとレヴァンドフスキは待ち合わせ場所がお互いしっかりわかってましたね」
などです。
これはつまり、パスの出し手と受け手が思い描くスペースが一致し、かつそこに正確にボールを蹴り込み、得点に繋がったということを指します。

そして最後に5つ目。
ボールの回転ですが、俗に2種類。
インスイングとアウトスイングという回転の種類があります。
ゴールに近づく回転(イン)と、ゴールから遠ざかる回転(アウト)ですね。

これは、ボールの受け手、つまりはシュートを打つ選手がどのような状態にあるか、どのような体勢でボールを受けたいかに左右されます。

例えば、何人かの選手が雪崩のようにゴールに押しかけ、誰かが触る、或いは触らなくても相手ディフェンス陣の混乱を招き、
そのままゴールに入ってしまうような狙いを持ってクロスを送る場合。

この場合はインスイングのほうが良いでしょう。

或いは、スライディング気味に滑り込んでかすかに足先で触れてゴールを決めたい時などもそうですね。

いっぽうで、アウトスイングは、かすかに当ててゴールを狙う場合ではなく、
勢いをつけて長身の選手がヘディングでゴールを脅かす場合。
このような場合に適していますね。

正直なところ、これらの回転は、瞬時に使い分けているかどうかは選手にもよるし、キックの力量や左右どちらの足で蹴るかにもよってきます。
しかし、プロの選手たちが、ボールの回転まで意識してパスを送っていることは間違いありません。

以上、前置きも含めると長くなりましたが、
僕が考える「良いボール」の定義5点でした。

この定義も含めるべきだ!
これは要らないんじゃないか!
これとこれは一緒のこと言ってない?

などなどありましたらご意見お寄せください。

最後にそもそも論を話すと、解説者がただ「良いボールですね」と言うことは、
解説ではなくただの感想だと思います。

そのボールがなぜ良いボールなのか。
それを視聴者に明示するのが解説者の仕事なのではないでしょうか。

良いボールを良いボールという1言のみで片付け、
その理由に言及しないことは、
解説者の怠慢、あるいは言語化能力の不足だと思います。

先述したサッカー用語の定義の統一と、
全年齢層への浸透とそれが導く日本サッカーの強化。

その為には、我々視聴者側が、もっと実況アナウンサーと解説者にその質を求めることも必要になってくると思います。

やや厳しい論調で終わってしまいましたが、
今週も僕の趣味談義に付き合っていただきありがとうございました。

また来週も、サッカーについて熱く書いていきたいと思います。


小野トロ



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