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価値とは何か?が分かる本 「ジョブ理論」

こんにちはミヤタです。

今回は、物事の価値の本質について整理・考察する際におすすめの『ジョブ理論』という本を紹介したいと思います。

マーケティング界でよく例に出る「ドリルが欲しい人は、本当はドリルじゃなくて壁に空いた穴が欲しい」といった話にも通じてくる内容だと思います。

さて、では初めに本のタイトルにもなっている「ジョブ理論」という概念について、自分の頭の整理のためにも噛み砕いて説明してみます。

ジョブ
= 生活内で解決したい(達成したい)と思っているタスク(の解決策)

(例)牛乳のジョブ
=背が低いという悩みを解決 (背を伸ばしてモテたい!などの目的を達成) するためのツール
※ 機能的ジョブ、社会的ジョブにフォーカス

=骨が弱っているという悩みを解決 (骨密度を上げて健康的に明るく暮らしたい!などの目的を達成) するためのツール
※ 機能的ジョブ、感情的ジョブにフォーカス

=肌が老けたという悩みを解決 (肌にハリを与えて、若々しくみられたい!という目的を達成) するためのツール
※ 機能的ジョブ、社会的ジョブ、感情的ジョブにフォーカス

=クッキーは口の中の水分を吸収するので、飲み込みにくいという悩みを解決 (クッキーを飲み込みやすくして飲食時のストレスを軽減するという目的を達成) するためのツール
※ 機能的ジョブ、感情的ジョブにフォーカス

=市販のカフェオレはミルクの量を調節できないという悩みを解決 (自分好みの配合量でカフェオレを作るという目的を達成) するためのツール
※ 機能的ジョブ、感情的ジョブにフォーカス

= etc.

上記のように、同じ牛乳という飲み物でも、人によってそれを飲む(=雇用する)目的が違ってきますよね。これがジョブという概念です。

牛乳を売ろうとする場合、ただ牛乳の物質的価値(おいしさや成分)だけに着目して発信するのではなく、牛乳を飲む人の本質的な欲求や目的にフォーカスしてメッセージを発信した方が、効率的に売れるよね。というのがこのジョブ理論で語られている大きなテーマです。

本来マーケティングというと、20代男性向けに〜とか、高所得で健康を気にしている人向けに〜など、顧客の属性を分類してターゲティングすることに焦点が当てられがちでしたが、実はこのやり方だけではナンセンスだよねというのが、本書で提起されている現在のマーケティングの問題点です。

なぜなら、商品を買う目的は属性だけでなく、特定の状況=ジョブによっても変わってくるからです。

「クッキーを食べる時に口の中がパサパサしないような物が欲しい」とか「カフェオレのミルクの量を自分好みに調節したい」のように、年代や属性では掬い取れない牛乳が欲しくなる理由というのもあります。この、細かな状況ごとによって変容する生々しい価値にフォーカスすることで、『そうそう!それが欲しかったんだ!』という人々の欲求により親密に寄り添うことができるのです。

もちろん、「骨密度を上げたいと思っている高齢者に向けて、牛乳をおすすめする」「お肌のハリが気になり始める年代の女性に向けて、牛乳をおすすめする」など、年代や性別といった属性に焦点を当てるアプローチも良いのですが、『商品の価値って、属性の分類だけじゃ語り切れないよね〜。もっと特定の状況で際立つ牛乳の価値にも光を当てていこうぜ!』というのがジョブ理論で語られている考え方です。

ここで、本の中で目から鱗だった事例をちょっと抜粋


【住宅建設会社の例】
とある住宅建設会社は、タイルの色や扉の形まで、自分好みにカスタマイズできる種類豊富な家の販売をしていた。しかし、なぜか売れ行きは伸びなかった。

そこで 「引越し時にダイニングテーブルや思い出の家具を捨てたくない」というお客さんの精神的な葛藤=ジョブに着目した。

そして、事業目的を 「家を売るビジネス」 から 「人生を移動させるビジネス」 にシフトした。

具体的には、新居のゲストルームスペースを縮小し、代わりに「ダイニングテーブルを置けるスペース」を追加した。更に、引越し前に物を捨てるのではなく、引越し後にゆっくりと何を捨てるかを決められる仕分け室も用意した。(見込み客の負担になっていた種類が多すぎるカタログも3種類に集約した)
その結果、売上は劇的に向上したという。

【オムツ会社の例】
とあるオムツ会社は、まだ赤ちゃんにオムツを履かせるという文化が定着していなかった中国に市場を置くことにした。しかし、実際にはオムツは全く売れなかった。

そこで、「子供の教育に重きが置かれる中国では、子供の睡眠時間の向上=頭が良くなることに魅力を見出す人が多い」というジョブに着目した。

そして、商品の定義を 「赤ちゃんの汚物を包んで捨てられる紙」 から 「子供が早く寝付きよく眠れるためのツール」 にシフトした。

その結果、売上は劇的に向上したという。

これら2つの事例から分かるのは、商品の設計や販売時に重要になってくるポイントは、単純な「モノの機能性」だけでなく「モノの使用時に生じる周辺の社会的価値・感情的価値」に寄り添うことだということが分かります。

モノとしての機能性ももちろん大事なのですが、「モノを使う人が、社会的にそのモノに求めている価値」「そのモノを使うことで、感情的にはどう幸せになるのか」といった更に踏み込んだ気持ちにまで焦点を当てる事で、真の価値を人々に届けることができるようになるという学びがありました。

ということで、『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』めちゃくちゃ勉強になって面白いので、興味のある方は是非一度読んでみてください!


出典:クレイトン・M・クリステンセン (他著), 依田光江 (翻訳),「ジョブ理論イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」,ハーパーコリンズ・ノンフィクション, 2017年8月


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