マガジンのカバー画像

Loose Leaf Room(1)

50
短編小説集です。1話完結のものが中心になると思います
運営しているクリエイター

#note初心者

【短編小説】レストラン

【短編小説】レストラン

ただいまー…って言っても、出迎えてくれる人なんていないか。特に親しい友達のいない一人暮らしほど寂しいものもないな。
そういえば、ポストのチラシやらが溜まってたな。いい加減仕分けるか。

塾生募集?私はれっきとした成人女性です。はい次。
新たに保育所が出来ます…ねぇ。恋人なし歴イコール年齢を舐めるな、子供なんて望めんわ。はい次。

その後も興味のないチラシや関係のなさそうな広告が出るわ出るわ。いい加

もっとみる
【短編小説】記念日

【短編小説】記念日

嗚呼、今日は何と素晴らしい日なんでしょう。
まさか貴女の方からボクを見つけてくれるだなんて。

おや。その手に握り締めているのは…ハンカチですか?随分と可愛らしい柄ですね。
なるほど、これが『ギャップ萌え』というものですかね。
やはり貴女を生かしておいて良かった!感情というのは何より尊いもの!それの新たな形を、貴女はいつも教えてくださる…!!

そのハンカチは形見…そうでしたか。
申し訳ありません

もっとみる
【短編小説】1年に1度

【短編小説】1年に1度

もうすぐ七夕だね。
「そうねー」
そういうイベントは1年に1度っていうけどさ、それって何に対しても言えることなんじゃないかな?でなきゃ『一期一会』なんて言葉も存在しないよ。
「相変わらず面白いわね。キミの考えは」
屁理屈ともいうらしいけれどね。
「よし。出来た!」
さっきから作ってたよね、それ。
「久々にしたわ、編み物なんて」
ブレスレット?
「そ。こっちの赤が私で…この青いのがキミのものよ。次こ

もっとみる
【短編小説】霊障相談所

【短編小説】霊障相談所

おや、いらっしゃい。
ここへ訪れたということは、何か困ったことが起きているのでしょう?どれ…聞かせていただきましょう。

ふむふむ。なるほどなるほど…。
結論を述べる前に1つ言っておきましょう…私を欺くことは出来ませんよ。
何のことか分からない?まぁいいでしょう。
結果として、あなたの身の回りで起きていることはあなたのいもうとさんが祟っている訳ではありません。考え過ぎというものです。

どうしまし

もっとみる
【短編小説】作る者、作らない者

【短編小説】作る者、作らない者

「よーっす」
あぁ。久しぶりだね。にしても、普段のキミならこの道通らないのにどうしたの?
「あれっ言ってなかったっけ?俺、最近この辺住み始めたんだよ」
そうだったんだ。あの場所気に入ってたみたいだったから、何か意外だな。

で、その袋は何だい?

「ここんとこまた自炊始めたんだよ。これ、今晩の分」
ジャガイモにお肉に人参…。カレーかな?
「残念。肉じゃがだよ。ほら、白滝も入ってんだろ?」
そうか、

もっとみる
【短編小説】知らない世界

【短編小説】知らない世界

今日もまた、1日が始まる。

ベッドの上で大きく伸びをして、ついでにあくびを1つ。ベッドと一時の離別を誓いつつ、昨夜寒くて押し入れから引っ張り出したばかりの掛け布団を畳んだ。
衣装ケースから出した適当な服に着替え、窓に近付いて低血圧な自らのテンションを上げる為にカーテンを勢いよく開ける。

うん、本日も見事な曇天也。実にいい天気だ。

そういえば何かの本で読んだことがある。どこか遠い、知らない世界

もっとみる
【短編小説】黒鳩さま

【短編小説】黒鳩さま

「黒鳩さまって知ってる?」
くろばとさま?ユーレイ的なやつ?
「幽霊じゃなくて、ここの土地神様なんだけどさ。鳩って普通白とか灰色のはずじゃない?それが黒鳩さまはその名の通り、カラスみたいな真っ黒い鳩の姿をしてるの」

ふぅん。カミサマか。
「鳩は幸福の使いって云われてるけど、黒鳩さまも例に漏れずに、崇めてる人間の元へは幸せを運んできてくれるって話らしい」
なんか…いかにも宗教って感じの話だな。信じ

もっとみる
【短編小説】真冬の季節

【短編小説】真冬の季節

「本格的に寒くなってきたねー…」
隣を歩く友人がそう呟いた。私はそうだね、とだけ零してから擦り合わせてる両手に息を吹きかけた。

「あ、自販機だ。丁度いいや、何かあったかいの買お!」
「うちの学校、校則で買い食い禁止だよ…」
「どうせもう家に帰るだけなんだしいいじゃん。それにこれは、買い食いじゃなくて買い飲みだしっ」
また訳の分からない屁理屈を…。などと考えてる間にも友人は自動販売機に小走りで近付

もっとみる
【短編小説】不眠症

【短編小説】不眠症

カチ、カチ…と壁掛け時計の秒針が進む音を、今晩は寝転がりながらどれ程聞いただろう。
俺の体内時計の狂いが大きくなければ今頃は午前3時くらいだろうな。隣では背中をこちらに向けて寝息を立てている存在。
俺はそいつの体を軽く揺さぶって声をかけた。

「なぁ…寝ちゃった?」
返事はない。更にゆっくり揺すってみる。

「なーあー、本当は起きてんだろー…?」
なあなあ、と諦めず声をかけ続け揺すり続ける。すると

もっとみる
【短編小説】世界終了のお知らせ

【短編小説】世界終了のお知らせ

ある日突然、ニュース速報で世界のトップの人間達の会見が全国一斉に放送された。
あと2週間で地球は滅亡すると。何とも笑えないジョークだなと、その時は思っていた。

だけど、その日から続く異常という言葉すら逸脱した気象に野鳥や虫達の止まないざわめき、夜になれば日々やけに大きく見える惑星。他にも挙げられる『異常』はごまんとあったけど、とにかく日が経つにつれ、それは本当のことかもしれないと誰もが覚悟を決め

もっとみる
【短編小説】当たり前

【短編小説】当たり前

私が先に生まれたんだから妹はお下がりを着るのが当たり前だよね。ほら、ネンコージョレツってやつ?
歳下は歳上の言うこと聞いてりゃいーのよ。

え?パンケーキが食べたい?
でもさ、今多数決でアイス食べに行くって話になったじゃん。そこはあんたが合わせるのが当たり前じゃない?そんなに食べたきゃ1人で行けば?

クラスでイジメ?ないない。だってみんなもないって言ってるし、私だってそんな現場見たことないし。

もっとみる