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【短編小説】作る者、作らない者

「よーっす」
あぁ。久しぶりだね。にしても、普段のキミならこの道通らないのにどうしたの?
「あれっ言ってなかったっけ?俺、最近この辺住み始めたんだよ」
そうだったんだ。あの場所気に入ってたみたいだったから、何か意外だな。

で、その袋は何だい?

「ここんとこまた自炊始めたんだよ。これ、今晩の分」
ジャガイモにお肉に人参…。カレーかな?
「残念。肉じゃがだよ。ほら、白滝も入ってんだろ?」
そうか、肉じゃがか。いや、てっきり白滝もカレーに入れるのかなと。

「…。お前、普段料理作らないもんなあ」
なんだよ、その今の間と憐れむような顔は。
「いやー、わりーわりー
折角顔整ってんのに家事はまるっきり駄目なんだよなあ、お前」
いいじゃないか。欠点があった方が完璧な存在よりも魅力的だろう?
「自分で言っちゃうんだな。そういうところもモテない要因だぞ」

いいんだよ、別にモテなくて。
特に今は、世界の再構築に忙しいんだから。

「大変だねえ、カミサマってやつも」

世界の構築は、料理みたいなものだと思ってるよ。
それなりの材料を集めて合わせて生み出す。けれど食材自身は誰が自分を選別したり使おうとしているのかは知らない。

「喩えがよく分からないけど…まあ、頑張れよ」
あぁ、ありがとう。

「あ、そうだ
世界の再構築とやらが終わったら、昔みたいにまたどっか遊びに行こうぜ」
再構築後の世界にキミはいないかもよ。
「んー、そん時はそん時だ
じゃあな」

相変わらず読めない人間だな。だからこそ一緒にいて飽きないんだけれど。

さて、と。
ラストスパートといきますか。

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