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【短編小説】記念日

嗚呼、今日は何と素晴らしい日なんでしょう。
まさか貴女の方からボクを見つけてくれるだなんて。

おや。その手に握り締めているのは…ハンカチですか?随分と可愛らしい柄ですね。
なるほど、これが『ギャップ萌え』というものですかね。
やはり貴女を生かしておいて良かった!感情というのは何より尊いもの!それの新たな形を、貴女はいつも教えてくださる…!!

そのハンカチは形見…そうでしたか。
申し訳ありません、ボクは生きとし生ける者の感情の揺らぎにしか興味を示せませんで。壊した対象のことなど殊更覚えてなどおけないのです。自身の記憶の引き出しが無駄になりますのでね。

それは拳銃ですか?
上の方の発砲許可は得たのですか?得ていないのならやめておきなさい、それにそんな玩具は所詮見掛け倒し。貴女にボクは撃てません。

しかし…。

嗚呼…嗚呼!素晴らしいですね、その表情!憎しみだけが滲み貴女の美しい顔を穢している…この感情を独り占めしていると考えただけで興奮致します…!

決着?良いですよ。正直な話、貴女の顔をもっと見ていたいのですが…どうやら貴女は意見を曲げないタイプのようですからね。

さあ…もっとしっかり照準を合わせなさい。尤も、先述の通りそこまで震えていては貴女にボクは撃てないですがね。


貴女の復讐が実るのか、ボクの悲願が果たされるのか…。何にせよ、今日はどちらかの記念日になりそうですね。

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