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【短編小説】知らない世界

今日もまた、1日が始まる。

ベッドの上で大きく伸びをして、ついでにあくびを1つ。ベッドと一時の離別を誓いつつ、昨夜寒くて押し入れから引っ張り出したばかりの掛け布団を畳んだ。
衣装ケースから出した適当な服に着替え、窓に近付いて低血圧な自らのテンションを上げる為にカーテンを勢いよく開ける。

うん、本日も見事な曇天也。実にいい天気だ。

そういえば何かの本で読んだことがある。どこか遠い、知らない世界では太陽と呼ばれる光源が朝と昼に遠い空からその世界を照らし、夜になれば星という数々の光り輝くもの達が、時に旅人の道標となるのだと。

僕らの世界の空には『太陽』や『星』というものは浮かび上がらない。
いや。本当はあるのかもしれないけれど、ここの空は年がら年中厚い雲に支配されている。なので、あっても視認することが出来ない。

だからといって、それを悲しいと思ったことはない。
その知らない世界の格言で言うところの『住めば都』って言葉が当てはまるかもしれない。そもそも都とは何たるか、僕はそれすらも知らないんだけれど。


さて、折角の休みだし何して過ごそうか。
家に籠るのもありだけれど、こんな天気の優れた日は買い物に出掛けたり、外でご飯を食べるのもまたいいかもしれないな。

そんな考えに行き着き、僕はそれならばと弁当を作るべく部屋を出てキッチンへ向かった。


今日もまた、1日が始まる。

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