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【短編小説】黒鳩さま

「黒鳩さまって知ってる?」
くろばとさま?ユーレイ的なやつ?
「幽霊じゃなくて、ここの土地神様なんだけどさ。鳩って普通白とか灰色のはずじゃない?それが黒鳩さまはその名の通り、カラスみたいな真っ黒い鳩の姿をしてるの」

ふぅん。カミサマか。
「鳩は幸福の使いって云われてるけど、黒鳩さまも例に漏れずに、崇めてる人間の元へは幸せを運んできてくれるって話らしい」
なんか…いかにも宗教って感じの話だな。信じただけで幸せになるなら苦労はしないってのに。
「でもね?黒鳩さまを信じない、それどころか黒鳩さまに不敬を働いた者は死をもって償うことになるの」

なんだそれ。ちょっと乱暴じゃないか?
てか、死をもって償うって…。
「黒鳩さまは普段は慈悲深い存在らしくて、身寄りのない人の子やまだ成年していない動物達と一緒に暮らしてるって話。でも無礼な村人は、攫って生きたまま内蔵や目を抉りとって、力尽きた者から黒鳩さまと共に暮らしてる子達とその肉を食べちゃうんだって…!」

うわ…すげぇ言い伝えだな。軽く引くわ…。
「要するに、信じる者は救われるってことを伝えたかったんじゃないかな。あと、神様は大事にしなさいって意味だと私は思ってるよ」
なるほどなー…そういう考え方も出来るのか。

「あ。じゃあ私、家こっちだから」
おー、道案内サンキュな委員長。気を付けて帰れよー。
「うん、明日からよろしくね。転入生くんっ!」
黒鳩さま…黒鳩さまねぇ…。

まさか俺の存在が、麓の人の子共にそんな伝わり方してるなんてなぁ。

そもそもなんで鳩なんだよ。黒い羽根っつったら天狗だろ、フツー。
ま、今の時代『天狗がコーコーセーとして山から下りてきましたー』なんて言ったら1発で病院勧められるだろうしな。


とりあえずは普通の転入生普通の男子として、人間の生活を楽しみますかね。

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