映画『残酷で異常』の感想
注意:重大なネタバレを含みます。
2014年、カナダの映画。原題は『Cruel and Unusual』だ。
前半は、時間軸の遷移がきわめて面白い。
(1) 予知夢 → (2) 現実 → (3) 死後(矯正施設型の地獄) → (4) 過去(=罪を犯した日)の追体験 → (5) 追体験(2周目) → (6) 死後 → (7) 過去の追体験(n回目)
となるわけだが、この "残酷で異常な構造" の詳細を理解していく過程そのものに大きな楽しみがある。情報の開示の順序が非常に綿密で、エドガーに対する認識は「謎の施設に閉じ込められた被害者」「妻を事故で殺してしまった被害者」「妻に殺されそうになった被害者」と、二転三転する。
後半、視聴者が「"残酷で異常な構造" は悔恨を促進させるためのループ装置である」と気付く頃には、物語はこの構造の穴を突くというゲーム性を帯び始める。矯正施設からの脱走、そして自分専用の扉へ他者を引き込むことによるバグの発生。このイベントに合わせてエドガーに対する認識は「家族を虐げていた加害者」「反省が足りない加害者」そして最後には「本当は妻を愛していた、良き加害者」へと塗り替えられていく。
あまりにも飽きさせない構成になっていると思う。そして着地点も見事だ。エドガーは妻の地獄送りを防いだだけではなく、おまけにドリスを地獄から救い出した。もちろんそれが「罪滅ぼし」として評価されることはなく、永久にエドガーの地獄勤めは続いていく。美しいけれども、残酷で異常な結末だと言えよう。