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世界を覆う不幸を和らげる物語も、分断を避ける物語もあるはず。『楽園の楽園』
世の中の技術が進むにつれて書きづらくなったジャンルというのがあります。ケータイが普及してすれ違いの物語をつくるのが難しくなった、とか、そんな感じ。
コンプライアンスが厳しくなりすぎて現代小説では色んな事をしづらくなった、なんてのもありますね。
そういったすべてに挑戦し続けるのが物語であるべきなのでは、と個人的には思っていますが、そんな簡単なものではないのでしょうね。
技術進化によって書きづらくな
おかえり!ゾンビーズ『友が、消えた』
13年ぶりの新作。
とはいえ、13年前の作品がどれだったのかも記憶はうっすら。そんな感じで
ゾンビーズのことはほとんど忘れていたんだけど、読んだときワクワクしたことをしっかりおぼえてる。
最近は「転生」や「若返り」の小説、マンガが大流行しています。その共通点は”やり直し”でしょうか。異世界転生ものって、割と平均年収高めの層が読んでいるというデータがあるんですが、まさに「もう一回あのときの自分に戻
『カフネ』はお仕事小説でもあると思う
『成瀬は天下を取りにいく』が面白いという声を集め始めたころ、「久しぶりに人が死なないけど感動できる本」とおっしゃってる方がいて、確かにそうだなと思ったものでした。
ここ数年の本屋大賞受賞作は確かに、何らかの死、トラウマと戦っている物語が多く、”楽しい””面白い”という感想を述べられるものではなかった気がしています。
『カフネ』も、折れて傷ついた心との闘いの物語でした。
冒頭から、登場人物たちが弟
今度は浜松!『婚活マエストロ』は現代のおとぎ話のような物語でした
『成瀬は天下を取りにいく』は、これまで見たことのないようなヒットの推移をたどってきたと思っています。
売上でいったら、過去の本屋大賞受賞作品ではもっと売れた本もあるわけだけど、作家が観光大使になったり始球式に出たりとここまで舞台ごと盛り上がった例は見たことがありません。
ここまで滋賀愛を見せてしまうと、次の本はどうなるんだろう。伊坂(幸太郎)さんみたいに仙台から出ないパターンで行くのか?と本編と
作家の心もちに震えた『禁忌の子』
鮎川哲也賞受賞という看板をひっさげて登場し、話題になっている『禁忌の子』
作家は経験がなくたって様々な事を描けなければならないけど、それでも「よく書けたな!!」というものがあります。
この作品はその逆。受賞作だけあって、冒頭に受賞の言葉が入っているのですが、”1歳の子どもの声を聞いている”というフレーズを読み終わったときに思い出し震えました。
この作家の心持ちたるや。
救急医の元に運ばれてきた
「「「「のスピードに圧倒された『死んだ木村を上演』
メフィスト賞受賞という実績をひっさげて登場して話題になった『死んだ山田と教室』。本編と同じくらい驚いたのが、ページの最後に続編告知が出ていたことでした。
その続編が『死んだ石井の大群』。
さらにその『石井~』の最終ページには『死んだ木村を上演』の告知が。
デビュー作にして3部作。誰の度胸がすごかったって、出版社の度胸がすごいわ。それだけ「絶対話題にする」という強い意志も感じましたが、売り手側の
『対馬の海に沈む』に人間の業の深さを感じた
久しぶりに、朝の出社時の読書で「山手線をこのまま一周してこようかな」と思いました。これはスゴいノンフィクションです。
先日、自爆営業はパワハラだと厚生省が指針を出したというニュースが出ました。自腹でノルマを達成することを示す「自爆営業」。とはいえ、会社員たるものそういうノルマや過度にストレッチされた目標にさらされた経験がある人は少なくはないでしょう。
そのノルマを助けてくれる人が近くにいたら
現代にも通じる人の業を感じた『気の毒ばたらき きたきた捕物帖(三)』
ここのところ、読書のスランプみたいな状態になっていて、本を読んでいても世界に入り込めない、文字だけを追いかけるような感じが続いていました。こんな時はやっぱり名作家の定番シリーズに限る、ということでちょうど出版されていた『気の毒ばたらき』を
前作『子宝船』は1,500円~1,800円くらいで買った記憶があるのだけど、今回は2,500円に届きそうな値段。まずそこにびっくりして一瞬躊躇したのだけど、宮
自分の生きている場所のことを改めて考えたくなる『藍を継ぐ海』
昨年『宙わたる教室』を読んでいたく感動しました。「なんで10月になんて出すのよ。もっと早く出版して、色んな人が読んだら本屋大賞にノミネートされたかもしれないのに!」と他社の出版計画にケチつけたくらいに感動した1冊だったのです。
こうやって心動かされた人は多かったようで、すでにNHKのドラマになりまた多くの人に届いていますね。ほんとに嬉しい。
この『藍を継ぐ海』は短編集で、どれも辺境であることが
この人は何者なのか!?『法廷占拠 爆弾2』
『爆弾』を読んでないと「なんのこっちゃ」になると思いますのでそこのところご注意を。
『爆弾』では、些細なことで捕まった”スズキタゴサク”と自称する男が、突然冷感だと言って予言しはじめた爆弾事件に東京中が翻弄されます。
まさに翻弄。
スズキタゴサクがとにかく気持ち悪いのです。
凶悪犯は誰だって怖い、その中でも明確な恨みもないのに犯罪を行うサイコパスはもっと怖い。このスズキタゴサクはそれ以上に「わか
話題の『侍タイムスリッパー』を出版業界と重ねて考えてさらに深くかんがえさせられています
番外編で映画感想です
「低予算」「単館でも話題」「第二のカメ止め」「めちゃくちゃよかった」
観ると決めた理由は何人かの知人のコメント、いろいろなところで目につき始めた記事のタイトル、そんなところでしょうか。
もしブームが起こるのであれば、超話題になる前に観たい…ということで、上映館が広がったタイミングで慌てて観に行ってきました。
拡大上映のタイミングでのGoogleトレンドの動きはこんな感じ。
崇高なまでのくだらなさに巨匠の仕事を見た『カーテンコール』
出版不況だ出版不況だと言っているうちに、本を出すこと、売ることが一世一代の大イベントみたいになってきてしまいました。
こうなると、書く方も売り出す方も無駄なまでに肩に力が入ってしまう。そんな書き手側の裏側の悲壮感が見えると、読む方も力が入ってしまう。。。
『カーテンコール』を読んでまず感じたのが、「あぁ、これよこれ、この力の抜け方よ」という脱力感でした。
なんて書いたら当事者に怒られそうだけど、
どろぼんが盗んだ一番大きなものは読者の心かも『どろぼうのどろぼん』
ブックセラーズ&カンパニーが「一読三嘆」という企画を始めたというニュースを読みました。
「みんなで1冊の本を売る。」それで多くの人に届ける。私も過去何度も取組んできたし、今も離れられないテーマです。言葉にするのは簡単なのだけれど「売る」以上に「みんなで売る本を1冊決める」というのがどれほど大変な事か。
本屋大賞だってその”1冊”の決め方を真剣に考え考え、考え抜いた結果できたようなもんです。
こ
『難問の多い料理店』は、まさに”真相をお話します”だった
『#真相をお話しします』を大ブレイクさせた著者の最新作。
あれだけ売れたあとだと、何かと大変だろうなあ…と売り手側としても、読み手としても勝手な心配をしてしまうのですが、新作はこちらに『#真相をお話しします』というタイトルがつけられていても納得してしまうような謎解きでした。
Uber Eatsを思わせる「ビーバーイーツ」の配達員たちと、都心部にあるゴーストレストランのシェフが連作を繋ぐ存在です