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話題の『侍タイムスリッパー』を出版業界と重ねて考えてさらに深くかんがえさせられています
番外編で映画感想です
「低予算」「単館でも話題」「第二のカメ止め」「めちゃくちゃよかった」
観ると決めた理由は何人かの知人のコメント、いろいろなところで目につき始めた記事のタイトル、そんなところでしょうか。
もしブームが起こるのであれば、超話題になる前に観たい…ということで、上映館が広がったタイミングで慌てて観に行ってきました。
拡大上映のタイミングでのGoogleトレンドの動きはこんな感じ。
崇高なまでのくだらなさに巨匠の仕事を見た『カーテンコール』
出版不況だ出版不況だと言っているうちに、本を出すこと、売ることが一世一代の大イベントみたいになってきてしまいました。
こうなると、書く方も売り出す方も無駄なまでに肩に力が入ってしまう。そんな書き手側の裏側の悲壮感が見えると、読む方も力が入ってしまう。。。
『カーテンコール』を読んでまず感じたのが、「あぁ、これよこれ、この力の抜け方よ」という脱力感でした。
なんて書いたら当事者に怒られそうだけど、
どろぼんが盗んだ一番大きなものは読者の心かも『どろぼうのどろぼん』
ブックセラーズ&カンパニーが「一読三嘆」という企画を始めたというニュースを読みました。
「みんなで1冊の本を売る。」それで多くの人に届ける。私も過去何度も取組んできたし、今も離れられないテーマです。言葉にするのは簡単なのだけれど「売る」以上に「みんなで売る本を1冊決める」というのがどれほど大変な事か。
本屋大賞だってその”1冊”の決め方を真剣に考え考え、考え抜いた結果できたようなもんです。
こ
『難問の多い料理店』は、まさに”真相をお話します”だった
『#真相をお話しします』を大ブレイクさせた著者の最新作。
あれだけ売れたあとだと、何かと大変だろうなあ…と売り手側としても、読み手としても勝手な心配をしてしまうのですが、新作はこちらに『#真相をお話しします』というタイトルがつけられていても納得してしまうような謎解きでした。
Uber Eatsを思わせる「ビーバーイーツ」の配達員たちと、都心部にあるゴーストレストランのシェフが連作を繋ぐ存在です
行間になにを見るか、作家の凄みがわかりました『ぼんぼん彩句』
よく「この句を読んで、著者の思いをこたえなさい」みたいな問題があるじゃないですか。
そうすると、目をつむったら浮かんでくる家族の情景とか、子どもの笑い声とか、その背景に美しい景色。みたいなものを想像しがちですよね。
”散ることは実るためなり桃の花”
という句を見て、私が想像した景色は、宮部さんにかかるととんでもないサスペンスになり、サイコパス家族みたいな人が出てきて怖ーい話になっていました。
舞台装置のすべてにドキドキできる『檜垣澤家の炎上』
エビデンスが難しそうなNo1が惹句だのオビだのに並んでいるので、大丈夫?不当表示って言われない?ってちょっと心配しながら手に取りました。
永嶋恵美ってことはミステリなんだろうし、ミステリと書いてはあるけれど、まず目に飛び込んでくるのはある富豪の一族の家に住むことになった妾の子の姿です。
これが主人公のかな子ちゃん。
富豪の妾の子なんていったら、悪役令嬢ものシリーズでもしょっちゅう出てきそうな設定だ
心のどこかに持ち合わせているかもしれない黒さを描いた『黒い絵』
今『異邦人』を読み直したら「太陽が眩しかったから」って言っちゃう気持ちとかが理解出来ちゃうかもしれない。って思えるくらいの暑さが続いていますね。
というこんな時期にはちょっと怖い本、ノワール小説が似合うということで、原田マハさんの『黒い絵』
原田さんの新境地ということで、すべての短編が何らかの犯罪や背徳行為にまつわるお話です。それについては皆さん賛否あるようですが、私はたまにはこういうのも良い
ライトミステリの顔をしたメッセージの強いミステリ『なんで死体がスタジオに!?』
本の賞味期限、みたいな観点があるのだけど、この本は今放送中の番組名やら人の名前やらを連呼しているので、時間が経っちゃったらどうなるんだろう…と勝手に心配しちゃいました。
だからこそ、急いで読んだ方が面白い小説だとも言えます。
”すべらない話”を彷彿させるような、生放送特番の「ゴシップ人狼」。出演者は順番に芸能界のゴシップを暴露していくのですが、中に嘘を言っている人狼が紛れ込んでいる、というゲーム
シリーズ化も楽しみな『惣十郎浮世始末』
信頼する読み手の何人もが発売前から絶賛していたので「これは読まねば」と決めていた本でした。
いわゆる捕物帖です。ですので、謎解きがメインのミステリなのですが、力が入っているのは家族や親子の業の部分だったり、お上からの締め付けに辟易しながらも楽しみを見いだしながら日々一生懸命生きる江戸の人たちを描く本であったり、その顔は色々。
肝心の謎自体は「もしかして、黒幕というか犯人はこの人なんだろうか」と途
読み終わって「ありがとう!」と叫びたくなった『俺たちの箱根駅伝』
『風が強く吹いている』『チーム』『Run!Run!Run!』私が読んだだけでもいくつかすらすら出てくるくらい、箱根駅伝というスポーツを追った小説は少なくありません。
池井戸さんが箱根を描くというんだから、これはきっと靴も書くに違いない、大人のドロドロも書くに違いない…わくわく。と、どこか邪念に満ちた気持ちで読み始めたのですが、途中から目から出る汗をこらえられず、鼻水垂らしながら読み終えました。
世の中の争い事は全部”グリコ”で解決することにすればいいのに『地雷グリコ』
タイトル聞いたとき、地雷原みたいなところでグリコをやって人がどんどん死んでいくですゲームみたいな話?
って思ったんですよ。『バトルロワイヤル』みたいな。
そのイメージで、各賞を総ナメと言われながらも手を出さずにいたのですが、直木賞ノミネートと聞いて腰を上げました。
そして第1章の『地雷グリコ』を読んだ段階で「世の中の争い事、全部グリコで解決すればいいのに!考えた人天才じゃないのよ」という感想に大
恩田さん、やっぱすごいよ『spring』
非凡な才を持った人のことを「天才」と書くのは簡単。でも、作家さんたちは、読者に”どうすごいのか”と”凡人とのちがい”を伝えなきゃならない。そんな風に考えてみると、そこに作家の技みたいなものを感じます。
springの主人公は「よろず・はる」という男の子。成長して男性になっていく、幼少期からの過程が描かれています。まさに「非凡」の世界にいる男の子なのだけれど、世界的なバレリーナの卵たちの中で彼を描
読みはじめ30ページで涙腺崩壊『死んだ山田と教室』
読み始めて30ページのところですでに泣けました、といったら「なに言っちゃってるんですか」と言われると思います。
なんたって、30ページといったらあらすじに書いてある事しか起こってないんだもの。
「人気者だった山田が死んで、なのに声が教室のスピーカーから聞こえてきた」というそこまでに、山田がどういう人で、ここがそこそこの偏差値の男子校で、色々あるけど概して仲の良いクラスだった二年E組。
でももしか