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漫画家マンガの新しい傑作2本 『チェイサー』『マンガに、編集って必要ですか? 』

近年、『バクマン』『アオイホノオ』などなど傑作が次々と生まれ、もはや一ジャンルと化した感のある「漫画家マンガ」。

最近読んだ2作品も、それぞれ独自の道を切り拓いた印象を受ける傑作でした。

■「量」の観点から手塚治虫の天才ぶりを描く『チェイサー』

手塚治虫の背中を徹底的に追い続ける漫画家が主人公の『チェイサー』(コージィ城倉)は、全6巻。

テンポが『グラゼニ』っぽいなと思ったら、森高夕次さんとコージィ城倉さんは同一人物なんですね。お恥ずかしながら知らなかった。


あとがきにこんな記述がありました。

僕は手塚先生の作品論は語れないが量については語りたい(略)真の天才は量だと思うのです。一度に幾つものことが同時にできてしまう。手塚治虫は最もわかりやすい真の天才
”先駆者である先生”が事もなげに颯爽とこなしてしまったから…「漫画家ってこーゆーことなのね」と誰もが錯覚してしまった。(いえいえ絶対違いますから!)

優れた作品をハイスピードで生み出し続けるコージィ城倉さんに、こんなことを言わしめるとは…

手塚治虫の桁外れぶりを再確認しました。


『オタク経済圏創世記』(中山淳雄)にも以下の記述がありました。

手塚治虫の時代から連綿と続いてきた「放送権料だけでは回収できない赤字制作体制」の進化した形として、
キャラクター経済圏を生み出す日本独自のビジネスモデル>

手塚治虫が桁外れの天才だったからこそ、生まれた日本独自のビジネスモデル、
その一方で、おびただしい数の犠牲者も生み出したことでしょう。

天才というのは時に罪作りな存在なのかもしれません。

『チェイサー』の主人公・海徳光市は幸せそうな晩年を迎えているのが、ちょっとした救いです。


■マンガに、編集って必要ですか? どうですか?

そして、もう一冊は、編集者ならば気にしないわけにはいかないタイトルの
『マンガに、編集って必要ですか? 』(青木 U平)全3巻。

「あ、痛い!」
「あのとき、自分も漫画家さんにこんなふうに思われてたのかも…」
と、省みながら読みましたが、
純粋にエンタメ作品として見ても、とても面白かった。

次巻への引きが1,2巻ともに見事で、教科書のような展開です。見開きの使い方も卓越しています。

最終話の締め方も絶妙でした。

(野暮とは思いつつも)続編希望です。

漫画家・佐木さん、編集者・坂本さんのその後を知りたい…


「漫画家マンガ」、まだまだ新しい切り口はありそうですね。

さらなる傑作を読める日を楽しみに、
そして、その時に
「あ、痛い!」と思うことが少ないよう、精進してまいりたいと思います。

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