2020年の漫画界を傑作と共に振り返る 第一回(予定)

いろいろな意味で、とんでもなく印象深い一年間となった2020年。

漫画界の話題は鬼滅の刃に全て持っていかれた…、という感じですが、
その影では、たくさんの傑作も続々と生まれました。

特に印象に残っている作品をピックアップしつつ、漫画界全体についても振り返っていけたらと思っています。

■勇者の「その後の日常」を描く傑作2本

2020年の夏に単行本1巻が発売された『そのへんのアクタ』『葬送のフリーレン』、いずれも、「巨大な敵を倒した後の勇者たちの日常」が舞台となっています。

連載に向けた打合せ時点では、コロナのコの字も頭になかったとは思いますが、
日本中のほとんどの人が「この前代未聞の事態が収束した後の生活」に思いを馳せる今、この2つの傑作が同じタイミングで世の中に出た、ということに不思議なものを感じてしまいます。


登場人物がみな魅力的、笑いのテンポも良くて、ホロリとさせるタイミングも絶妙、設定も練り込まれてて、まさに傑作!です。

■名作『BLUE GIANT』ヨーロッパ編終了、アメリカ編開始!

ジャズ漫画の金字塔『BLUE GIANT』、
日本編も十分過ぎるほど名作だったのに、
ヨーロッパ編『BLUE GIANT SUPREME』は、別次元の面白さで衝撃を受け続けていました。

その大傑作が2020年、ついに完結。

そして、アメリカ編『BLUE GIANT EXPLORER』が開始。

アメリカ史上でも特に記録と記憶に刻まれるであろう大混迷の2020年に始まるところに、この作品の持つ力が発揮されているように感じます。

(意図したことではないと思いますが、名作というのはえてして、時代の大きなうねりと否が応でも結びついていくものだと考えています)

ヨーロッパ編では、初めに深く関わる人物とのエピソードがあまりに秀逸だったので、
アメリカ編は一体どう始めるのだろう…と読み進めていますが、
第二話のラストのセリフが
「この街 合わないだろうなぁーー」
であることに衝撃を受けました。
(主人公がこんなことを言葉にするのは本当に珍しい)

大傑作ヨーロッパ編をさらに超える大名作となるのか、目が離せません。

■2020年代の青春漫画の金字塔となりそうな傑作

高校生活を舞台に、ちょっと天然な女子主人公が周りにポジティブな影響を与えていく青春物語『スキップとローファー』。

登場人物がみんな魅力的で、随所に笑いどころも泣きどころもあって、読後感も最高です。

…と書くと、さわやか一辺倒の漫画のように思えてしまいますが、
もう一人の主人公のイケメン男子が抱える闇と、
その棘を女子主人公が溶かしていく様子の描き方が本当に見事。

特に3巻と4巻、
「うわー!」と唸らされました。。

無駄な線、不要なコマが全く見つけられないほど練り上げられた構成に、ただただ脱帽…

編集者としては、もっともっと読み解かねば!…と悔しくなるほどの傑作です。


■大傑作に化けそうな予感がする若手?作家さんの新作

15世紀のヨーロッパを舞台とした漫画、『チ。―地球の運動について―』。

大変失礼ながら、上の『スキップとローファー』とは違い、漫画としては粗だらけの作品です。絵も正直上手くありません。

が、そんなことをどうでもよく感じさせるほどの熱量で
めちゃくちゃ面白い物語が展開されます。

『7人のシェイクスピア』(ハロルド作石)的な展開かな、と思っていましたが、1巻から推測するに、地動説を軸に、さまざまな人物が主人公となるようです。
『不滅のあなたへ』(大今 良時)のような展開になっていくのでしょうか。

この漫画家さん、連載が続いていくと、絵もとんでもなく上手くなっていきそうな予感がします。

テーマも壮大なだけに、ぜひ大長編として続いてほしい作品です。



2020年、特に印象に残った漫画を取り上げて、漫画界全体を俯瞰し、
さらに、2021年の展望を記す…!!

と意気込んで書き始めましたが、、、

漫画のことになると、あれもこれもと、どんどん書きたくなり、全然時間が足りません…


おすすめしたい傑作はまだまだあります!

この続きは、きっと、また、近々・・・!!!

【2021年の漫画界、要注目点について書きました】


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?