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第九話 〜手放す〜

【美容室の譲渡】

私にとってサロンは、自分の子供と同じくらい
愛しいものでした。

『お客様に喜んでいただけるように』

私の頭の中はいつもそれでいっぱいでした。

だから、常にお客様の居心地の良い空間や、
日常を忘れることができる、
そんなサロン創りに細心を注いでいました。

そして、そこにスタッフが居てくれて、
お客様に喜んでいただく施術をしている…

そんなサロンを見るのが、たまらなく好きだったのです。
そんなスタッフの成長を見守るのが、
たまらなく好きだったのです。

それほどまで愛情込めて、
大切にしてきたサロンだったのに
ある日、信じられないようなことを
スタッフの口から聞くこととなったのです。

「僕達が店長を務めている今の店舗を譲ってください。」

幹部3人、突然の譲渡の申し出でした!

聞くと、経営コンサルとの話し合いで
そう決めたらしいのです。

幹部達(会社10年〜20年勤務)の将来を見据え、
会社も幹部も良い方向に行くやり方は無いかと、
私が雇ったコンサルでした。

でも、今の店舗全てを譲渡してしまうと、会社の存続は成り立たなくなる。

資料を持つ手が震えました。

後は、もう、このブログには書けない程の心の葛藤がありました。

それは奇しくも、創業30年になろうとしている
前年の出来事だったのです。

夜中に車を走らせ
サロンの駐車場で、朝方まで、
サロンに向かって自問自答を繰り返しました。

どんな決断をすれば良いのかわからない。

幹部達の焦る気持ちも良くわかっている。

でも、会社は、全てを手放した方が良いのか?

私の器以上に大きくなり過ぎてしまったのか?

私にチカラが無かったのだろうか?


そんな自問自答を繰り返し

2018年8月

私は全てのサロンを手放しました。
しかも、通常ではあり得ないほどの安価な価格で。


(彼らが幸せになってくれたら良い!
彼らがいてくれた10年間や20年間で、
もう、十分彼らが経営者として
やっていけるチカラを蓄えているはず!)

そんな風に言い聞かす自分と
寂しさがつきまとってどうしようもない自分とが、
心の中で何度もいったりきたりしました。

まるで、学校の校長先生をやっていたのに、
生徒達がいっぺんに巣立ってしまい、一気に寂しくなり、どうしたら良いのかわからなくなっている…
そんな「先生」のように…。

突然、何もかもから放り出され
草原のように何もない世界で、
果たして私は、何をしよう?

何をしたいのか、何が楽しいのやら?


夜中の消防車のサイレンに
飛び起きなくてもよくなったのに。
24時間、サロンのことを考えなくてもよくなったのに。

でも、

つまらない、つまらないんだよ〜〜😭

気が抜けて、ぽっかり空いた私の心は、
ただ、ただ「寂しい」気持ちで
埋め尽くされてしまっていたのです。

そんな寂しさが
まさか◯千万ものお金を失うことにつながるとは、
思ってもいませんでした。
なぜそれほどまでのお金を失ったのか
次の第十話でお話していきたいと思います。

第十話を読む


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プロローグ~成功と失敗~
第一話~強い使命感~
第二話~1つ目の壁~
第三話~運命の仕事、ヒト~
第四話~人生の転機~
第五話~2つ目の壁~
第六話~再起から絶頂へ~
第七話~3つ目の壁~
第八話~4つ目の壁~
第十話~私を襲う甘い罠~


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