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【奈良県三宅町町長の声をレポート#5】 複業人材の登用で、三宅町は目指す未来へと大きく前進。

2021年3月17日「奈良県三宅町複業プロジェクト」の報告会が行われました。森田町長自身の発案から始まったプロジェクトですが、今では職員さん側から「続けてほしい」という声が上がっているそう。今回のインタビューでは、DX、人事・採用、広報の3職種7名の複業メンバーと歩んだ軌跡と、三宅町に起こっている変化を追います!

※2020年12月から始まった「奈良県三宅町複業プロジェクト」。株式会社Another works(@works_another)と奈良県三宅町が、複業人材を登用した官民連携での地方創生のロールモデルとなることを目指し、3月末までプロジェクトを遂行します。

本記事は、このプロジェクトに広報推進担当として登用された複業メンバーが森田町長へインタビューを行なった内容です。

▼2021年3月17日に開催された、第一回報告会

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ビジョン、ミッションを明確にすると、動きが変わった

―複業プロジェクトを終えて率直な感想を聞かせてください!

森田(町長):一言で言うと、めちゃくちゃ楽しかったです。皆さんと議論を重ね、脳を全力で動かして。いつも心地よい疲労感がありました。議論の中で、公務員との言語の違いを感じ新鮮で楽しかったですね。

例えば、「ビジョン」とか「ミッション」とか。プロジェクトを進めていく中では、何のためにやるか、誰のためにやるか、といったことを皆さんから何度も聞かれたんです。プロジェクトのゴールが何か分からないと、何をやればいいのか分かりません、と。ビジョンやミッションが行動の源泉であり、役場職員はもちろん、三宅町に関わるすべての人にちゃんと伝えなければならないと知りましたね。

―何かの行動を起こすとき、考えを言語化し、伝えることが大切なんですね。

森田(町長):私自身の頭の整理にもなりました。皆さんと壁打ちを行なっていくうちに、頭の中にあったイメージが言葉になって話せるようになっていきましたね。

「自分らしくハッピーにスモール(住もうる)タウン」という言葉を掲げ発信していくと、共感してくれる人も多くいて。ビジョンを語ることは、仲間集めにも大事だと実感しました。これまでは伝えているつもりで伝えきれていなかったんだと痛感しています。

―職員さんに伝えていくことでも変化は感じられましたか?

森田(町長):職員同士のコミュニケーションが変わりました。「今〇〇をしよう」ではなく、「20年後、三宅がありたい姿になるために、今は△△をしよう」という風に、将来の姿を見据えた会話が増えたと思います。

ビジョンが明確になったことで、中長期で物事を捉え、今すべきことを見極めるようになりましたね。やみくもに目の前のことに取り組むのではなく、「この事業は20年後に繋がるのか?」と、立ち止まって考えながら進み始めました。

▼左:三宅町町長 森田浩司(@miyake_cho_cho)、右:複業メンバー 宮武由佳(@udon_miyatake

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役場内に連携が生まれ、大きく動き出した

―役場内で目指す未来像が共有され、会話や行動が変化してきたんですね。複業プロジェクトを通じて、役場組織の変化はありましたか?

森田(町長):横の連携が進みましたね。これまでの業務は、部署内の縦方向の連携で完結していましたが、今では部署の垣根を越えての会話が生まれています。例えば、今回のプロジェクトでDXについての基礎講座を受け、「三宅町らしいDXとは何か?」と議論が始まり、DX推進のプロジェクトが始動する予定です。

ほかにも連携が生まれました。複業プロジェクトメンバー間での連携では、各分野の皆さんの力が結集して、MiiMo(みぃも)コミュニティプロデューサーの求人票作成から発信、その後の採用活動までを進めることができました。現在は、最終2名を確定しているところです。

あと、官民官連携ですね。埼玉県横瀬町では、三宅町と同様、Another worksを活用した複業プロジェクトを行なっていて、富田町長からお声かけいただき、情報交換やどのような連携ができるか話し合いをしています。

―連携が進んで仕事の仕方が変わり、新しいものが生み出されそうな予感がします!

森田(町長):職員から「学ぶことが楽しくなった」という声が上がっていますね。これまで日々の業務に追われ新しい知識を入れる時間がなかなか取れなかったのかもしれません。そこに民間企業からの新しい風が入ったことで、「どこが分からないかが分かった」「勉強の仕方が分かった」と話すようになって。職員の仕事に対する姿勢が、前のめりに、貪欲に変化していることを感じています。

最近では、職員がMiiMoのTwitterアカウントを始めました。やらされ仕事ではなく、まずやってみようという主体的な動きが出てきていますね。「住民さんのために」という行動の源泉がはっきりと意識できるようになっているんだと思います。

▼MiiMoのTwitter(@MiimoMiyake

外部人材の登用をこれからも継続したい

―いい動きがでてきていますね。これからも外部人材の登用は続けるのでしょうか?

森田(町長):第二期も募集します。今は、各部署でどんな人が必要か、検討している段階ですね。MiiMoがこれから動き出すので、MiiMoのデジタルマーケティングを担当してくれる人とか。MiiMoだけではなく、三宅町のマーケティング部門も強くしたいと思っています。例えば、住民さんに向けたアンケートの設計。何を聞くためのアンケートなのか考えられていないまま、業者さんに委託しているものが多いと思います。大切な住民の皆さまの声を施策に反映するため、アンケートの目的や、得られたデータの分析方法について勉強が必要だと感じています。

あと、DXについては今回は入門編をまずやっていただいたので、次は業務改善のために実際に職員が作成できるシステムを使えるようになりたいと考えています。

複業プロジェクトが終わって以降、職員自身から「これからも外部人材を入れてほしい」という意見が出ているんですよね。今回のプロジェクトは成功したのではないかな、と感じています。

▼森田町長と、三宅町からの感謝状を手にする複業メンバーの集合写真。
 感謝状は、三宅町で作られたグローブの革でできている。

集合

「三宅町なら何かできそう」というワクワク感

―これからも三宅町の広報PR分野で関わらせてください!私はnoteを書いて発信していますが、MiiMo求人票のnoteは特に広がりがすごかったですね。

森田(町長):求人は想定外の人数が集まり、皆さん高いスキルを持った方たちばかりでした。Web説明会には、全国各地から80名を超える方が参加してくださって。そのあと25名が応募してくださりWeb面接を終え、先日、通過した7名と現地での面接を行いました。現在は担当職員が最終2名を確定しているところです。

Web面接では皆さん口を揃えて「ワクワクして応募しました」と言ってくださっていました。求人票で丁寧に書いた「想い」の部分へ共感していただけたようです。あとは、Web説明会での「なぜ町長になったか?」という話が刺さったらしく。当事者意識を持って実践してきた私の考えを聞き、「何ができるか分からないけれど、三宅町なら何かできそう」というワクワク感を抱いていただけたようです。

―職員さんたちは最初、MiiMoコミュニティプロデューサーの求人をとても不安に感じていたと伺いました。実際どうでしたか?

森田(町長):人事領域の複業プロジェクトメンバーの安田さんが「絶対に大丈夫です」と職員たちに伝えてからは、迷わず採用活動を進めていくことができていたと思います。私は採用にはノータッチで、担当職員に任せているんです。応募者は、経歴も年齢もバラバラで千差万別。誰をコミュニティプロデューサーとして採用するか、かなり頭を悩ませているようですね。

ちなみに私も、当初不安がっていた職員たちに「大丈夫だから」と声をかけていました。ですが、安田さんの「大丈夫」のほうが効いたみたいです(笑)。現地での面接の際には、担当課長に「町長は面接待ちの応募者と雑談をしておいてくださいね」と言われて。安田さんのことは信じて、町長である私はほったらかしだったんですよ。おかげで皆さんと楽しいひとときを過ごすことができました(笑)。

▼MiiMoは、2021年7月にプレオープン、12月にグランドオープン

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「人」が中心のまちづくり、三宅町の目指す未来へ

―7月のオープンに向け、だんだんと準備が進んできていますね。三宅町の目指す未来に向け、今どんなことを感じられていますか?

森田(町長):複業プロジェクトを始めとした新しい動きの中で、三宅の未来に繋がる土壌ができあがっている気がしています。未来の三宅町には、住民さんが自分のやりたいことにチャレンジし、それを行政が応援する風土をつくりたい。

今、全国で二番目に小さい町に、おもしろい人がどんどん集まり、そして繋がり、交流が生まれ新しいものが生まれている最中です。おもしろい人とは、自分の夢を追い、自分らしく生きている人。20年後の「自分らしくハッピーにスモール(住もうる)タウン」に、三宅町は前に前に進んでいます。人に焦点を当てたまちづくりをしていきたいです。

―「もの」よりも「人」が中心のまちづくりですね。改めて、これからどんなことをしていきたいと考えていますか?

森田(町長):2021年度が終われば、三宅町は「筋力をつけながら痩せていく時期」になると思っています。2021年度は、グローブ生産が始まってから100周年、MiiMoのオープン、県立大学の誘致、コロナワクチンの接種など、大きなプロジェクトが一旦落ち着いて、節目の年になります。そのあとは、プロジェクトを通して力をつけた職員と「役場が本当にやらなければならないことは何か?」ということに集中し、「住民さんのため」という行政の本質をもっと突き詰めていきたいと思っています。

▼森田町長のTwitter(@miyake_cho_cho

編集後記

森田町長から「noteすごく楽しみにしています!」とお言葉をいただきました。町長自身の考えを言語化して読者の皆さんに伝える。今の町長の考えをかたちにして残し、のちのち振り返る。そうやってnoteを活用しながら、三宅町の応援団をつくってきたいなあと思っています。引き続きよろしくお願いします!

【話し手=森田浩司(奈良県三宅町町長)/聞き手・執筆=宮武由佳(うどん県出身)/編集=佐野創太/監修=三宅町複業メンバー一同】

【お問い合わせ先】
●三宅町 https://www.town.miyake.lg.jp/
●森田町長Twitter @miyake_cho_cho

【複業メンバー一同】
人事・採用戦略アドバイザー:3名
佐野創太氏(プロジェクトマネージャー) @taishokugaku
ひと・物・組織・新規事業の編集者/退職学の研究者。株式会社オーネットのオウンドメディア『おうね。』編集長、株式会社TRUSTDOCKの採用広報、yup株式会社のサービス編集長、桑原木材株式会社の端材を活用した新商品開発、複業をテーマとした電子書籍の編集長を務めている。退職学の研究者として「セルフ終身雇用」をAbema Primeなどで発表。1児の父であり、Covid19と出産をきっかけに妻の実家の長野と東京の二拠点生活中。

勝村泰久氏 @katsumura1123
音声Techのスタートアップにて、VPoHRとして総務人事領域を管掌しつつ、アライアンスや事業開発も担当。並行して東証一部で人事顧問、HRTechスタートアップでCCO、就活サービスベンチャーで戦略顧問、学校で講師、オンラインサロンを主催など7社で副業中で、パラレルキャリアにチャレンジしている。

安田翔氏 Facebook:https://www.facebook.com/sho.yasuda.98
大手人材会社で法人営業に従事。東京本社で採用・人事に5年間従事したのち、今年4月、大阪の法人営業部への異動をきっかけに奈良へ移住。副業で、奈良の企業と共に地域の人材育成事業の立ち上げにも携わっている。

DXアドバイザー:2名
安倍直希氏 Facebook:https://www.facebook.com/naoki.abe.0128
ベンチャー企業にて事業企画・営業企画・地方創生などの幅広い分野に携わりながら、DXプロジェクトなどにも従事。副業でDXプランナーとして活動中。様々な業界の課題に対して、データサイエンスを使ったDX企画立案を行なっている。

河上泰之氏 Facebook:https://www.facebook.com/yasuyuki.kawakami.5
トヨタ自動車様などの企業のDX支援や、東京商工会議所でDXなどの講師を務める。日本IBM、デロイトなどを経て独立。 IBMではデザイン思考チームの立上げに専門家として従事し、社内講師として数百名を育成。

広報戦略アドバイザー:2名
小林慎一郎氏 Facebook:https://www.facebook.com/shinichiro.kobayashi.378
プロデュースハウスSync Japan代表。渋谷駅街区再開発のマーケティング、NTTグループのコンテンツサービス事業、大手外食チェーンなどのアドバイザーなどに携わる。朝日放送にてテレビ編成から番組制作、新規事業に従事した後、独立。山梨県北杜市と渋谷区との二拠点で活動中。

宮武由佳氏 @udon_miyatake
地方、中小企業向けにデジタルマーケティング支援を展開する企業で、Web広告の運用コンサルティングや、自社採用サイトの編集を兼務。東京本社で、広報PRに1年半ほど従事。副業で、瀬戸内地域の雑誌『せとうちスタイル』やWebメディア『another life.』でインタビューやライティングを行なう。

【メディア掲載】(Webメディアのみ)
・読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/local/nara/news/20201215-OYTNT50028/
・日経ビジネス
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00215/121500008/
・夕刊フジ
https://www.zakzak.co.jp/eco/news/201225/ecn2012250004-n1.html


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