【奈良県三宅町複業プロジェクトレポート】 行政のDXは「住民ファースト」で考える。三宅町はDXで、日本一かっこいい行政職員へ。
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【奈良県三宅町複業プロジェクトレポート】 行政のDXは「住民ファースト」で考える。三宅町はDXで、日本一かっこいい行政職員へ。

昨今話題になっている「行政のDX(デジタルトランスフォーメーション)」。日本政府も2021年9月にデジタル庁の新設を予定しており、デジタル社会の実現に向け、国をあげての急速なデジタル化推進が行われています。そもそもDXとは何か?どこから手をつけていけばいいのか?本記事では、複業プロジェクトのDXアドバイザーを務める安倍直希氏、河上泰之氏による3ヶ月のプロジェクトの軌跡をお伝えします。

※2020年12月から始まった「奈良県三宅町複業プロジェクト」。株式会社Another works(@works_another)と奈良県三宅町が、複業人材を登用した官民連携での地方創生のロールモデルとなることを目指し、3月末までプロジェクトを遂行します。

DXの専門家による「DX講座」。
行政のDXは、住民ファーストが肝

ハンコ文化や紙の資料、FAXの利用など、行政の業務はまだまだアナログが中心です。そんな三宅町の役場職員が参加して開催された河上氏によるDX講座。DXとは何か、どうやって活用するべきなのかなど、職員がDXについて理解を深めるための講座が開かれました。

▼2021年1月14日オンライン上で行われた、河上氏によるDX講座の模様。

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講座ではまず、DXの本質について、「DXとは、競合に勝つために、顧客が商品・サービスを喜んで購入したり利用したりできるよう、業務や組織にデジタルを活用すること」と説明がありました。DXは、競合に勝つという目標達成のための、あくまでも「手段」にすぎません。DXがゴールにはなり得ないのです。

行政の場合には、「選ばれるまちになるために、住民が行政サービスを利用しやすくなるよう、行政職員がデジタル技術を前提とした働き方をしたり、住民が行う行政手続きを見直したりすること」と置き換えられると言います。

▼DXの思考法は「what→how」

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そして、行政のDXを推進していくためには、「what→how」の順序で思考することが大切だと言います。

「顧客(行政の場合は住民)にとって、価値のあることをする(what)ために、方法としてどのデジタルを使えばいいか(how)という順序で考えると、ものすごく考えやすく、かつ意味のないパッケージ購入やIT導入をせずに済むんです」

DXのよくある間違いとして、「how→what」の順序で思考してしまうことがあります。
この順序で考えてしまうと、世の中で販売されているITツールの中で自分たちに合いそうなものを選び導入を終えるまで、をDXのゴールとしてしまう落とし穴に落ちやすくなります。

「例えば、スマートフォンのアプリで、役場と気軽にチャットができる機能の導入を、とある企業から提案をもらったとします。でも冷静に考えてください。スマートフォンのアプリをインストールし、使ってくれそうな住民さんは何人いるでしょうか。はたして、本当に住民さんの生活の利便性の向上に役立つのでしょうか」

ITツールを起点に進めるのではなく、住民の皆さんが「住めて嬉しい。誇らしい」と口々に言ってくれるようなまちになるために何をしたらいいのか(what)を見据えること。それを最速で、かつ最安で実現する方法(how)をゼロベースで探すことが大切なのです。

▼デザインとは、役に立つものを作ること。下記は、良くないデザインの一例。矢印のどちらが「Rooms101-113」なのか「Rooms114-128」なのか分からない。(画像参照:https://ailovei.com/?p=45283&page=2

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DXに重要な要素の一つに「デザイン(=役に立つものを作ること)」の考え方があります。新規事業や業務システムの開発に取り掛かっても、価値のない、役に立たないものであれば、お金や時間の投資が無駄になってしまいます。

「例えば、LINEを行政サービスの一環として使うか使わないか、という議論があります。しかし、年配の方にLINEを使って何かしてもらおうとしても、そもそも年配の方はLINEを使うことができませんよね。だったら、LINEを使うことは、役に立たないから的外れな考え方である、と結論づけます。『役に立つこと』に徹底的にこだわっていくことが、DXではすごく大切なんです

では、どうしたら「役に立つこと」にこだわれるのか。使う人の目線に立つことが重要だと河上氏は続けます。

行政においてものごとを考えるときには、住民にとって『価値がある、役に立つ』という前提の中で、コストとやり方を工夫する。これが、もっともシンプルで、手間なく考えられる方法なんですよね」

▼DX(=デジタルトランスフォーメーション)とは、業務や組織が全く違うものになること(画像参照:https://www.pteron-world.com/topics/anatomy/larva/larvahead.htmlhttps://chiik.jp/articles/uP0xv/

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また、DXとは、単なるデジタル導入ではない、と河上氏は強調します。

「組織変化やデジタル活用の度合いは、かつてないレベルとなります。これまで積み上げてきた、紙やハンコを使うことを前提としたアナログの業務から、デジタルを前提とした業務へ組み直すので、組織や業務が今とは全く違う姿になるんです

トランスフォーメーションとは、生物学用語で「変態」。芋虫が蝶に変身することと同じように、業務や組織が大きく変わることを指しています。

行政のDXでは、人口減少・地方消滅時代においても住民が「このまちに住めてよかった」「このまちに住みたい」と選んでくれるまちであり続けるため、様々なサービスを拡充していくことになります。そのためには、無駄な時間を減らしていかなければなりません。デジタルを活用して業務手順やマニュアルを見直し、場合によっては組織割りも変えていくのです。

無駄をなくして浮いた時間と人員で、行政サービスを使いこなしてもらうための『住民成功課(いわゆるカスタマーサクセス)』を運用する。こういったことが重要なのです」

84個の業務課題の可視化。
役場職員自らが、解決に向けて始動

3ヶ月間のプロジェクトでは、役場が抱えている業務課題を可視化し、その解決に向けて議論を重ねていきました。役場職員から出た84個の課題に対して、安倍氏、河上氏が、173個の解決アイデアを提示。その後、DXで解決できるものと解決できないものを分類し、各アイデアを実現可能な形まで落とし込んでいくための議論を重ねました。最終的には、各課で取り組む課題を明らかにし、解決のための方向性を決定していきました。

▼84個の課題と173個の解決アイデア。7回のMTGや「DX講座」を通して、三宅町のDXに向け前進

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具体的には、役場職員自らが、道路管理に関してLINEで簡単に通報できる窓口の開設(※下写真)や、介護用品の申請受付にGoogle formsを導入するためのプロトタイプ(試作品)を作成しました。さらに、効果を確かめるための仮運用を開始するなど、独力で行っています。

▼産業管理課による、道路管理に関するLINE窓口の開設

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ほかにも、マラソンの受付業務へのITサービス導入に向けた段階的な実験計画の検討や、データを活用した住民の健康意識向上に向けた取り組みなど様々な部門で、業務の見直しの動きが始まっています。

DXで、日本一かっこいい行政職員へ。
役場全体で課題への共通認識を持ち、変革を推進

DXアドバイザーとのプロジェクトMTGでは、母子保健・子育て支援、介護保険・高齢福祉、社会教育など、様々な部門から役場職員が参加。

▼役場職員と安倍氏、河上氏とで、課題解決の質疑応答を重ねた

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▼MTGには、様々な業務を担当する役場職員が参加

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参加した役場職員からは、「業務の効率化と住民サービスの観点からアイデアが提示され、学びになった。対面方式で質疑ができ大変よかった」「的確で具体的なアドバイスが多く、デジタル化への入口が見えた」といった声が寄せられました。

業務の効率化や改善をしたいと考えていても、「担当者の負担が増えてしまったらどうしよう」「人によって課題に対する温度差があるので着手しにくい」などの問題がありました。しかし今回、多くの役場職員にプロジェクトMTGに参加してもらったことで、職員全体がその意識を持つようになり、これまでの業務のルールやスタイル自体を変革していく「始めの一歩」となったようです。

しかし、行政のDXには、まだまだ問題が山積しています。参加した役場職員は、「個人情報を多く扱う業務のデジタル化は、情報の取扱いについて不安が残った。セキュリティについてはお金がかかりそう」「難しいのは高齢者への対応。対面で会話することも大切にして、便利さよりも気持ちよさを優先したDXに取り組みたい」と、DXの難しさについても声があがりました。

DXでつくる、住民にとって誇らしいまち

最後に、河上氏より、プロジェクトを終えた感想と、三宅町役場職員へのメッセージをもらいました。

「『三宅町の住民のためにできることに何でも挑戦していきたい』という熱い気持ちを、職員の皆さんが持っていたからこそ、考える順序を変えただけで、3ヶ月間という短い時間で前進することができました。

次のステップとしてはまず、業務のデジタル化のための拠り所となる考え方を自前で整理することをお勧めします。個人情報の扱い方や、ITツールの実験方法、そして何よりも『住民にとって誇らしいまちとは何か』をどう議論していくのか。これらを一度整理し、各部門で業務を変える際の基準を作ると、ロケットエンジンを手に入れたように、さらに前進します。

そして、これらは自分たちだけで考える必要はありません。最先端を走れば走るほど、大学教員や企業と連携しやすくなります。ぜひ先頭を走り続け、かっこいい背中を日本中に見せつけてください!」


【執筆=宮武由佳(うどん県出身)/監修=三宅町複業メンバー一同】

【お問い合わせ先】
●三宅町 https://www.town.miyake.lg.jp/
●河上泰之氏メールアドレス y.k@beth.co.jp

【複業メンバー一同】
DXアドバイザー:2名
安倍直希氏 Facebook:https://www.facebook.com/naoki.abe.0128
ベンチャー企業にて事業企画・営業企画・地方創生などの幅広い分野に携わりながら、DXプロジェクトなどにも従事。副業でDXプランナーとして活動中。様々な業界の課題に対して、データサイエンスを使ったDX企画立案を行なっている。

河上泰之氏 Facebook:https://www.facebook.com/yasuyuki.kawakami.5
Beth llc 社長。トヨタ自動車などの企業のDX支援や、東京商工会議所でDXや新規事業の講師を務める。日本IBM、デロイトなどを経て独立。IBMではデザイン思考チームの立上げに専門家として従事し、社内講師として数百名を育成。

人事・採用戦略アドバイザー:3名
佐野創太氏(プロジェクトマネージャー) @taishokugaku
ひと・物・組織・新規事業の編集者/退職学の研究者。株式会社オーネットのオウンドメディア『おうね。』編集長、株式会社TRUSTDOCKの採用広報、yup株式会社のサービス編集長、桑原木材株式会社の端材を活用した新商品開発、複業をテーマとした電子書籍の編集長を務めている。退職学の研究者として「セルフ終身雇用」をAbema Primeなどで発表。1児の父であり、Covid19と出産をきっかけに妻の実家の長野と東京の二拠点生活中。

勝村泰久氏 @katsumura1123
音声Techのスタートアップにて、VPoHRとして総務人事領域を管掌しつつ、アライアンスや事業開発も担当。並行して東証一部で人事顧問、HRTechスタートアップでCCO、就活サービスベンチャーで戦略顧問、学校で講師、オンラインサロンを主催など7社で副業中で、パラレルキャリアにチャレンジしている。

安田翔氏 Facebook:https://www.facebook.com/sho.yasuda.98
大手人材会社で法人営業に従事。東京本社で採用・人事に5年間従事したのち、今年4月、大阪の法人営業部への異動をきっかけに奈良へ移住。副業で、奈良の企業と共に地域の人材育成事業の立ち上げにも携わっている。

広報戦略アドバイザー:2名
小林慎一郎氏 Facebook:https://www.facebook.com/shinichiro.kobayashi.378
プロデュースハウスSync Japan代表。渋谷駅街区再開発のマーケティング、NTTグループのコンテンツサービス事業、大手外食チェーンなどのアドバイザーなどに携わる。朝日放送にてテレビ編成から番組制作、新規事業に従事した後、独立。山梨県北杜市と渋谷区との二拠点で活動中。

宮武由佳氏 @udon_miyatake
地方、中小企業向けにデジタルマーケティング支援を展開する企業で、Web広告の運用コンサルティングや、自社採用サイトの編集を兼務。東京本社で、広報PRに1年半ほど従事。副業で、瀬戸内地域の雑誌『せとうちスタイル』やWebメディア『another life.』でインタビューやライティングを行なう。

【メディア掲載】(Webメディアのみ)
・読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/local/nara/news/20201215-OYTNT50028/
・日経ビジネス
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00215/121500008/
・夕刊フジ
https://www.zakzak.co.jp/eco/news/201225/ecn2012250004-n1.html


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奈良県三宅町複業プロジェクトの公式アカウントです。Another worksと奈良県三宅町が複業人材を登用した官民連携での地方創生プロジェクト。2020年12月から3月末までの4か月の実証実験。★noteは複業メンバーが更新中!https://bit.ly/3i0EU2b