鍛えよう 要約力
先日のカウンセリングマインドの記事に引き続き、今回も話の聞き方についてのお話です。
たくさん話をしてお互い分かりあえたと思ったのに、後になって「え、そんな話だったっけ?」と思った経験はありませんか。
相手の話を聞く際のポイントはいろいろとあるのですが、合意形成を図る上で欠かせないのは、話の概要をつかむ力=要約力だと思っています。
要約=確認
突然ですがAくん・Bくん・Cくんにお勉強を教えているとします。
足し算をしてねという意味の解説した後の反応で、あなたが「よく聞いてくれたな」「よく理解してくれたな」と感じるのはどの子でしょうか。
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【Aくん】
あなた「こうやって解くんだよ」
Aくん「あぁ、足し算をするんですね!」
【Bくん】
あなた「こうやって解くんだよ」
Bくん「分かりました…」
【Cくん】
あなた「こうやって解くんだよ」
Cくん「なるほど!先生天才ですね!」
**********
さて、どの子がよく理解してくれている感じがするでしょうか。
Aくんは「足し算をするんですね」と返してくれているので、その場であなたも「そうそう!」となりそうですね。仮にここでAくんが「引き算をするんですね」と返してきたら、その場でしっかりと訂正ができそうです。
Bくんは「分かりました」とは返してくれていますが、ここで返答が止まっています。Bくんが本当に理解できたかどうかは、Bくんが計算を解いてみるまで分からず、こちらはその間、本当に分かった?分からないところがある?などと考えてしまいそうですね。
Cくんは調子よく「天才ですね!」などと言ってくれていますが、これでもし、足し算ではなく引き算をしていたら、調子いいこと言ってないでよく聞きなよ!と突っ込みたくなりますね。
この3人、あなたがお話した意図がきちんと伝わっていれば、どの返答でも良いのですが、問題は意図が伝わっていなかったとき。
あなたがもっとも早く伝わっていないことに気がついて訂正できるのは、間違いなくAくんですよね。
Aくんは「足し算をするんですね」と返事をしてくれているからこそ、あなたは正しく伝わっているかどうかを確認することができます。
この「足し算をするんですね」こそが要約です。
要約は、お互いが「こういう話ですよね」と確認しながら話を進めるための、大切な手続きなのです。
なぜ確認が大切なのか
ではなぜ、会話に確認が必要なのでしょうか。
あなたは、あんなに話したのに、こんなに理解してなかったの…?とガッカリしてしまうほど、両者の認識がかけ離れていた、という経験はありますか?
"学校"という、とにかくすべてがコミュニケーションで構成されている場所においては、この認識のズレが大きなトラブルの元になることも少なくありません。認識のズレは最小限にとどめておきたいところだと思います。
とはいえ、認識のズレなくコミュニケーションを完了させることはそう簡単ではありません。
両者の持っている事前情報が違ったり
目撃した場面が違ったり
使っている言葉の定義が違ったり
イメージしている映像が違ったり
どちらにも何の落ち度はなくとも、認識がズレることは多々あります。
何かが起こってからズレに気づくぐらいなら、むしろ、認識はズレるものだと思って話を進める方が得策のような気さえします。
人の認識はズレる。
だからこそ、できるだけ早い段階でズレを修正する。
そのために行うのが要約なのです。
要約のコツ
どちらにも落ち度はなくとも、人の認識はズレる。
だからこそ、確認は自分だけでなく、お互いのために必要なものです。
例えば先のBくん。
「分かりました…」と要約せず会話を終了してしまいましたが、仮に彼がこの後、計算を間違えてしまったとしましょう。
分かった"つもり"でいたけれど、結局は間違ってしまっていたということは、よくあることです。
でも、要約による確認をせずに、結果として"話が通じていなかった"という状況は、相手をムッとさせてしまうことがよくあります。
分からなかったんなら聞けよ とか
事前に確認しとけよ とか
あなたも、誰かに対してこんなことを思ったことがあるのではないでしょうか。
「要約」と聞くと大変な作業のような気がしますが、そんなことはありません。
要約のコツは、「今の話、私はこんな風に理解をしましたよ」とこまめに伝えることです。
ちょっと解説しますね。
先の例のAくんは、説明を全部聞いた後で「足し算をするんですね」と要約していましたが、実際のコミュニケーションはもっと長いので、話の最後まで待つ必要はありません。
今の時点で、自分が理解したことをどんどん伝えていきます。
「4人家族なんですね」
「弟さんは年長さんなんですね」
「家族4人で海へ行ったんですね」
オウム返しのようになることもあるかもしれませんが、認識のズレに気がつかないリスクを考えれば、大した問題ではありません。
もしこの時点で理解が違っていれば、相手から
「いえ、おじいちゃんとおばあちゃんも一緒に行ったので6人だったんです」などと返ってきます。
この時点で、家族が4人だからきっと海にも4人で言ったのだろうという認識のズレを修正することができるのです。
少しボリュームのある話でこまめに確認することができなかった時は
「たくさん聞かせてくださってありがとうございます。ここまでの話を確認してもよろしいですか?
違うところがあれば、おっしゃってくださいね」
と前置きしてから、
「私はこの話をこのように理解した」ということを伝えていきましょう。
いずれにしても、認識のズレに気がつかないまま話が終わってしまうくらいなら、面倒でも、時間がかかっても、その場で両者の認識を確認してしまうことが大切だということです。
ちなみに、要約が的を得ているときは「そうです」「そうそう」「そうなんですよ」などいう「そう」の言葉が返ってきます。
Aくんに「足し算をするんですね」と言われたときに、あなたが思わず発する「そうそう」です。
この「そう」をたくさん相手から引き出すことを目標に要約をしていくと、相手はあなたに対して「この人はなんて私の話をよく聞いてくれているんだ!」と感じてくれる確率が高くなります。
逆にあなたの要約が今ひとつ的を得ていないときには、たいてい「うーん」という反応が返ってきます。
この「うーん」に焦ってしまう人も多いようですが、慌てず、落ち着いて「少し違いますか?」「どの辺りが違いますか?」と確認していけば大丈夫です。
違うところくを修正して、改めて「あぁ、なるほど。4人ではなくて、6人だったんですね!」と、理解したことを伝えれば、相手は「そうそう」と返してくれることでしょう。
「うーん」は「そう」へのステップということですね。
注意しておきたいこと
返ってくると要注意の反応は
「いや、そうじゃなくて」です。
相手がこのような反応をするときは、あなたが相手の話とは全然違う話を展開していることが多いからです。
先の勉強の例で言うと
あなた「こうやって解くんだよ」
Dくん「あぁ、先生は算数より国語が好きってことですね」
という感じです。
「いや、そうじゃなくて」と言いたくなりませんか?
今は目の前の"算数の解き方"について話しているのであって、"好きな教科"の話はしていません。
このように「こういうことですね」と、相手がまったく違う話を展開し始めたときに「いや、そうじゃなくて」という反応が返ってきます。
この反応が返ってきたときには、「今何の話をしているのか」から確認をし直す必要があります。たいていの場合、このまま話を先に進めることはできませんので、注意しておきたいところです。
もう1点。
要約で「うまいこと」を言おうとする方が時々おられます。大喜利のような回答とでもいいましょうか。
「うまいこと」が言えること自体は素晴らしい能力です。楽しい会話のときは、場も盛り上がることでしょう。
しかし、大事な話やシビアな話、悩みなどのネガティブな話をしているときは別です。
逆の立場で考えるとよく分かるのですが、自分のネガティブな話をネタに、話術を見せてこようとする人や笑いをとろうとする人に、それ以上の話をしようとは思わないのではないでしょうか。
また「うまいこと」を言っている人の要約がまったく的を得ていなかったら信用を失ってしまいます。
先の例でいうところのCくんです。
「なるほど!先生天才ですね!」などという発言をくり返しておきながら、説明をちっとも理解していなかったら…と考えると分かりやすいかと思います。
「うまいこと」はせめて、シビアな話が一段落ついた後の歓談のときに発するようにしたいものです。
まとめ
・互いの話を確認なしに完璧に理解しあうことはとても難しい。
・だからこそ、確認のための要約が必要。
・要約はこまめに「今の話、私はこんな風に理解をしましたよ」を伝える。
・「そうそう」が返ってくることを目標に行う。
・「うーん」の時は、確認をして「そうそう」に辿り着く。
・「いや、そうじゃなくて」に要注意。
いちいち確認しながら話を進めるのは少し手間かもしれません。
でも、その少しの手間をかけることで、後のトラブルなど大きな手間を省くことができるのなら、安いものなのではないでしょうか。
せっかく時間も手間もかけて話を聞くのですから、「しっかり聞いてもらった!」と感じていただきたいものですね。
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