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ひとつめの落とし穴 コーヒードリッパー開発秘話 #2

甘く見ていた製品加工

前回、クラウドファンディングプロジェクトが始動したポンプ屋。
さっそく難題にぶつかります。

「実際にドリップするフォトエッチング技術を使った"ろ過部分"は決まってるけど、どんな形にすればいいんだろう?」

よくあるコーヒードリッパーでは、上の部分は一般的な紙フィルターに合わせた扇形で、底の部分はコーヒーカップに載るように円形に作られたあのカタチ。
紙フィルターで"ろ過"したあともそのまま下へ流さず、少しコーヒーの粉につけてからカップに落とすというプロセスのために、下へ落ちるまでの時間が計算されてメーカーや商品によって孔の数が違ったりします。

まず考えたのは、この一般的なドリッパーと同じ形です。
しかし、ここにきて、当初は気づかなかった制約がわかってきました。

それは、ステンレスの板に特殊な薬剤を塗布し溶かして孔をあけるという性質上、
①ステンレス板の端までは孔をあけれなかったり、
②ステンレス板の特殊な加工や溶接はコストが大きいということ、
③あまりにも"ろ過部分"が大きすぎるとコストがかさんでしまう、

ということに気づいたのです。

そう、ひとつめの落とし穴は、プロダクト開発におけるコスト試算の難しさでした。
製作の難しさやコストをしっかりと理解していなかったのは、メーカーとして反省すべき点でした。

そして今回とくに問題となったのは②です。
扇形の加工や底部分との溶接がかなり難しく、断念せざるを得ない結果となってしまいました。
そこで、デザインは0からのふりだしにもどってしまいました

BtoBデザインとBtoCデザインの違い

今回プロジェクトのメインとなるのは、"フォトエッチング技術"をつかったドリッパー。
この技術を使うというメリットは、
①コーヒーが香り高く仕上がる
②ペーパーレスでエコ
③洗いやすいのでお手入れがカンタン

という3点。

これらを考えながら、社内では「あーでもないこーでもない」といろいろな意見が出てきました。
でも、"機能"や"性能"だけ考えればよかったBtoBの工業製品しかつくってこなかったわが社には、BtoC向けの"使い勝手"や"見た目"も考慮したデザインに苦労したのです

「あれ?入った」

そもそも、すでに販売しているストレーナー製品(BtoB製品)は、配管にそのまま入れられる形をしています。
帽子のツバのような部分を配管と配管の間で挟み込む形で、製品としては、「円筒+円形の防止のつば」がくっついたようなこんな形です。

あるとき、ストレーナー開発責任者が自宅でこの製品を手に取って眺めていてあることに気づきました。

「水筒に入りそうだな」

そして、そのまま机に置いてあった水筒にイン。

「あれ?入った」

まさかまさかの水筒にジャストフィットしたのです。
そこからは一気に話が進みました。

同じ形状なら加工の問題もクリアでき、加工費もそこまで大きくならない
BtoB製品では円筒状の側面と底面がろ過する面になっていますが、実際ドリッパーとして使いたい場合、紙フィルター同様コーヒー粉につけておく時間もほしいので、ぐっとろ過面積を少なくし、側面だけをろ過材とすれば、コストも削減できる。
偶然にもコロナ禍でマイ水筒の売り上げが伸びていたことも後押し。
「水筒男子」や「水筒女子」なんて言葉まで出てきていました。

「これでいこう」

とデザインが決まったのです。

次回は科学的にプロダクトを追求していく過程を配信予定です。
ぜひフォローお願いいたします。

▼出来上がったプロダクト:Mitsuwa Seahorse Dripperはこちら▼

▼連載リンク▼

▽本編▽
#1 閉塞感から始まったコーヒードリッパー開発
#2 ひとつめの落とし穴(本ページ)
#3 科学的な味の追及方法
#4 クラウドファンディング出品ではどのサービスがいいのか?
#5 プロダクト開発で問われる〇〇力
#6 カンタンにユーザーの声を集計する方法
#7 プロトタイプのチカラ
#8 デザインに"賭ける"のはコストの無駄遣い
#9 素人とプロの違い
#10 食品プロダクトの壁
#11 プロモーションがもっとも効果をあげるタイミング
#12 達成率95%と29%のボーダーライン
#13 設定ミスで失ったメリット
#14 プロダクト販売に使うECサービスはどれがいい?

▽きっかけ編▽
#2 -1 きっかけとなった派生品開発プロジェクト①
#2-2 きっかけとなった派生品開発プロジェクト②
#2-3 きっかけとなった音声メディアの言葉
#2-4 体系化されているアイデアのつくりかた

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