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国内ドラマ鑑賞記

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野村萬斎狂言公演鑑賞記(2024.10.5)- 札幌市教育文化会館

野村萬斎狂言公演鑑賞記(2024.10.5)- 札幌市教育文化会館

  一度観たいと思っていた野村萬斎の舞台を鑑賞した。リニューアルされた札幌市教育文化会館の記念公演で2日間にわたっての上演であった。

 野村萬斎と言えば、能楽界を牽引する大スターである。彼のおかげで狂言を実際に観ようという人々が急増、期待に応えて伝統芸能に留まることなくさまざまなステージに挑戦し続ける姿はなんとも頼もしい。私の好きな映像化作品でも大活躍で、ブレイクした朝ドラ「あぐり」(1997年

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敗けるときも美しく ~ 切なき清少納言に捧ぐ

敗けるときも美しく ~ 切なき清少納言に捧ぐ

 ほとんど失速することなく佳境に入ろうとしている今年の大河ドラマ「光る君へ」。直近の第38話「まぶしき闇」は、ききょう(ファーストサマーウイカ)がまひろ(吉高由里子)と対峙するところから始まった。息を呑む応酬は観ている者を画面に惹きつける。とがった声で源氏物語の感想を述べ、褒め称えたものの、まひろへの恨みごとを率直に告げる「なぎこさん」(私は敬愛する清少納言のことをこう呼んでいる・理由は以前の記事

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終わりました 朝ドラ「虎に翼」- 法学女子部よ永遠なれ

終わりました 朝ドラ「虎に翼」- 法学女子部よ永遠なれ

 今期の朝ドラ「虎に翼」がついに終わった。半年間の長丁場、途中で思うことは多々あったが、総じて面白く楽しいドラマだった。それは認めたい。

 法律を学ぶということ、司法界の様子を実情に近いところで描いてくれたのはよかったが、朝ドラにしては難しい話もあり、視聴者を選ぶ面もあったと思う。主人公の寅子(伊藤冴莉)たちが法学部で学んでいるシーンで、民法の「受益の意思表示」が出てきておおっと思ったが、その説

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「お仕事大河」展開に  ? ~ 期待再燃の「光る君へ」

「お仕事大河」展開に ? ~ 期待再燃の「光る君へ」

 なんだかんだと言いながら、毎週楽しみに観ている今年の大河ドラマ「光る君へ」。前々回は、主人公まひろ(吉高由里子)が鳴り物入りで宮中に上がったにも関わらず数日で家に舞い戻ってしまったが、まあ、無理もない。書斎のような場所を与えられたとはいえ、あの女房たちのピーチクパーチクに囲まれた喧騒の中では良いものなど書けるはずもない。およそ創造的活動などしたこともないだろう道長(柄本佑)にはわかるまいが、この

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みざくらの樹 #14 ~ YouTubeという現代版気散じ

みざくらの樹 #14 ~ YouTubeという現代版気散じ

 ようやくこの夏の出張集中月間を終えて、ヨレヨレで休暇に突入。今年は夜になってもまだ暑さが収まらない。窓から生暖かい風が入ってくるなか、ここは手造りのブルスケッタもどきをアテに、ワインでも。照明を少し落とし、BGMにはYouTubeで探し当てたマンハッタン・トランスファーのライブを流したなら、なかなかいい感じの秋の夜長ではないか。動画の画質はいまひとつだし、ワインはコンビニのデイリーだがそんなこと

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みざくらの樹 #13 - 朝ドラの「社会派」化に「ハテ ?」

みざくらの樹 #13 - 朝ドラの「社会派」化に「ハテ ?」

  先日、とある場所で大きなテレビ画面でNHK総合番組が流されており、ふと見ると「「虎に翼」徹底解説 」。解説委員がこのドラマの時代背景と秘話を徹底解説するという、あとで聞くと報道番組の一部のコーナーだったようだが、目に入ったときには近くに人がいなければ、思わず「うわあ」と叫んでしまいそうだった。すでにドラマのクレジットで「監修」「指導」者の多さにヘキエキ気味だったのだが、極めつけである。ずいぶん

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みざくらの樹 #12 - 「共感」を遠ざけたドラマの行く末は

みざくらの樹 #12 - 「共感」を遠ざけたドラマの行く末は

 夏バテMaxのみざくらです。胃腸の調子もよくなくてエネルギー枯渇。おまけになぜか夜は悪夢の連続で、先日は出張先のホテルで気づいたらウンウンうなっていました。隣の部屋の方、うるさくてごめんなさいね(笑)。こんな気分は好きなエンタメで吹き飛ばしたいところなのですが、最近ストレス解消にならないものばかりでちょっといら立っております。それも我が親愛なるNHKのもの。

 春ドラマなので少し前になったがド

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追いつきました  朝ドラ「虎に翼」

追いつきました  朝ドラ「虎に翼」

 この週末、遅まきながら今期の朝ドラ「虎に翼」(2024年・NHK)を初回か直近の60回までを視聴した。全放送の約半分きたところでようやっと追いつきましたわ。

 なぜ、今まで観ていなかったかというと、朝ドラは「カムカムエヴリバディ」(2021年)の苦い経験から、しばらく世の評判を眺めてからにしないと後悔するかもと思ったからである。この間、「あぐり」(1997年)の再放送で癒されまくっていたのでそ

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つらくなってきた「虎に翼」- 「スンッ」してきた家族がリカバリーするまで

つらくなってきた「虎に翼」- 「スンッ」してきた家族がリカバリーするまで

 最近、ようやく今期の朝ドラ「虎に翼」をリアルタイムで観るようになり、面白いと感想の記事を書いたところだったが、第15週「女房は山の神百石の位 ?」のエピソードは観ていて少々つらくなってしまい、朝、出かける前にはシンドイので、週末にまとめて観ることになった。

 今週は、女性裁判官の先駆けとして一躍有名人となった主人公、寅子(伊藤沙莉)が好調の中、仕事でも、家庭でも苦難に遭遇して痛めつけられるが、

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絶景だった「春はあけぼの」-「歴史探偵」に感謝

絶景だった「春はあけぼの」-「歴史探偵」に感謝

 大河ドラマの関連回などをときどき視聴している教養番組「歴史探偵」(NHK総合)だが、前回121回では私の推し、清少納言を取り上げてくれた(「清少納言と枕草子」2024年5月15日)。ただただ感謝。NHKの番組にはいつも辛口のことばかり書いているが、良いと思ったときもお伝えしませんと。

 関心を引いた話題は多かったが、何といっての有名な第一段の冒頭「春はあけぼの」の風景を実際に見せてくれたことで

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祝・枕草子 大河登場 - 素敵な「なぎこさん」

祝・枕草子 大河登場 - 素敵な「なぎこさん」

 ついに登場した。今年の大河ドラマ「光る君へ」で、あの清少納言の有名なエピソード、「香炉峰の雪」が披露されたのである。全国の古典好き、歴女たち(女子とは限らないのだが)は狂喜乱舞したことだろう。私もその一人。主役には申し訳ないが、私は平安朝の女流作家の中では断然、「清少納言推し」なのである。ずっと「せいしょう・なごん」と呼んでいたけれど、「せい・しょうなごん」なのね。説明を受けると納得するのだが、

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2024年冬ドラマ総括 ~ 時空を超える快楽と哀感

2024年冬ドラマ総括 ~ 時空を超える快楽と哀感

 今日は3月最終日。冬ドラマのクールも無事終了したようだ。個人的には今期はほとんど観たいものがなかったのだが、まちがいなく日本のドラマの歴史に残る作品もあり、忘れられないシーズンとなった。

 前にも期待を書いた朝ドラの「ブギウギ」(NHK)は、主人公、福来スズ子の趣里は、細い身体で体当たりの演技で頑張ったが、ドラマ自体は残念ながら失速で終了である。「ラッパと娘」のフルバージョンには喝采を送ったが

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倉本聰「ドラマへの遺言」読了 - 「やすらぎの郷」を鑑賞しつつ

倉本聰「ドラマへの遺言」読了 - 「やすらぎの郷」を鑑賞しつつ

 テレビ・ドラマ界で脚本家の存在がクローズ・アップされているようだが、最近は「セクシー田中さん」(2023年・日本テレビ)の脚色を巡って、脚本家と原作者が見解を異にしているとか。このドラマは大変気に入って記事にも書いたことがあるのだが、これが「本来の姿ではない」のならいったいあの時の感動はなんだったのか ? と一視聴者としてはいささか興ざめである。この件に限らず、ドラマ制作の裏事情とか楽屋オチとか

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再見「おっさんずラブ」 (2018) ~ 今こそ癒しの世界へ

再見「おっさんずラブ」 (2018) ~ 今こそ癒しの世界へ

 年明けのドラマ界の最大の話題と言えば、あの「おっさんずラブ」天空不動産編が6年ぶりに復活したことであろう。途中、メインキャストをチェンジした連続ドラマや劇場版も制作されたが、多くの人に支持された2018年版の世界観とは少々違ったものになっていて、懐かしがる声も届いていたのだと思う。というわけで、ここはありがたくウォッチングをしていくところだろうが、過去、好評ドラマの「続編」の失敗例をゴマンと見て

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