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【柳井正財団】『日本の素晴らしさを取り戻せ!?』 _0.要約

「社会を良くする」奨学金プログラムと
海外留学生の「やりたいこと」

この記事は、全部で80ページ以上ある人類学の卒業論文を一部抜粋したものです。それぞれの章ごとに別々のnoteを書いたので、自分の気になる部分だけつまみ食いするのもオススメです!久しぶりに書く日本語が下手くそすぎて自分でも読みづらいなぁと感じているので、英語が得意な方はこちらから原文を読むことを推奨します。

柳井スカラーのみんな、財団事務局/理事の皆様、
そして日本の留学関係者の皆様へ、(他奨学金財団理事、留学カウンセラー、海外大進学予定者・在学生・卒業生などなど)届きますように。

<目次>

0. 要約(以下の動画からも要約が確認できます!)
1. 「社会を良くするために、何をしたい?」 (イントロ)
2. 協働的な研究手法 (リサーチ方法)
3. 戦後日本の政治経済と教育史のおさらい (歴史)
4. 極めて曖昧な「社会貢献」の解釈 (データ分析①)
5. 柳井財団の期待と奨学生の実状の乖離 (データ分析②)
6. 「あなただったら、どんな「社会貢献」がしたい?」(まとめ)
7. 柳井コミュニティへの提案 (Appendix)
8. 引用文献


2016年、柳井正は、アメリカやイギリスの大学に進学する日本人学生を対象に、毎年約40名程度、一人当たり約38万ドル (日本円で約5000万)を返済不要で支給する奨学金制度を立ち上げました。この奨学金プログラムに合格するための最大の評価軸は、応募者が「日本と世界を発展させる」ことができる資質とやりたいことを持っているかどうかです。そのビジョンに反して、柳井正財団は合格した奨学生に対して「社会貢献」を促すような教育や進路指導はほとんど行っていません。その結果、柳井スカラーの多くは、経営コンサルティングや投資銀行など、多くの日本人留学生が「海外大卒業生にとって主流なキャリア選択」だと考える道を選択しています。

本研究の目的は、停滞する日本を再び「素晴らしい国」にすることを目指す柳井正財団が考える、「社会貢献」の論理を考察することです。そのために、財団が「社会貢献」とどのように向き合い、財団生がそのメッセージをどのように解釈しているのかを、比較します。この研究では、財団職員の心理的な意図よりも学生の実体験に焦点を当てるため、「柳井スカラーが大学在学中と卒業後に、自分のやりたいことをどのように発見し、追求しているのか」を探求します。

本論文を通じた私の主張は、「柳井財団が表現する『社会貢献』のモデルは、財団性が自分のやりたいことを発見・実践するための社会的障壁を維持するばかりではなく、時には悪化すらもさせる」というものです。財団職員は、「社会貢献」を実現するための要素として個人の努力に焦点を当てているため、ほとんどの学生が自力では克服することのできない構造的な問題を見落としてしまっています。柳井財団の外向けのミッションに反して、実際のスカラー達が「社会貢献」へ無関心であるにもかかわらず、「社会貢献」の定義を極めて曖昧にすることで、財団はいかなる批判も的外れなものとして、退けることができてしまいます。さらに、「社会貢献」をするための時間軸を限りなく長くし、奨学生を長期投資のポートフォリオになぞらえることで、財団と奨学生の間の乖離が矛盾にならないような設計となっています。


次は、1.「社会を良くするために、何をしたい?」(イントロの章)です!


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