小舟

詩の近くにいる。少し働いてあとは一人で家にいるか旅先にいる。散歩と本と猫が好き。意外に…

小舟

詩の近くにいる。少し働いてあとは一人で家にいるか旅先にいる。散歩と本と猫が好き。意外にゲームもすき。 実は人生だいぶ後半。

マガジン

  • 小説

  • 詩、言葉たち。

    詩作品をここにまとめようかと思います。 以前の作品、未発表作品など。 書きかけの言葉たちをすくいあげて形にすることができれば。

最近の記事

これ以上何を望む 2

「これ以上何を望む」をずっと下書きに置いておいた。でもいま何となく公開にした。 理由はあるような気もするけど、まだ明確ではない。 最近こういう本を読んだ。 「もう一人、誰かを好きになったとき ポリアモリーのリアル」荻上チキさん。 新聞の書籍広告をみてからすぐに図書館に予約した。同じように予約した人が何人かいたのですこし待った。 わたしは昨年怪我をしたとき図書館の宅配サービスを依頼したので今回もボランティアさんが持ってきてくれた。 興味深い本だった。 取材された登場人物たちがみ

    • これ以上何を望む

      毎日は楽しいか?と自問する。 そうでもないな、と思う。 わたしが望んだものは何だったか? 自由、お金、まぁまぁの体調、。 それらが今ここにある。 もちろん完璧ではない。 自由には限度があり、お金だって全然だ。 たった5万弱の年金では暮らせるはずもなく 貯蓄を取り崩して生活している。 しかしいったん仕事(パート)を辞めた。 あと何年生きるか分からないが何年かは、 親が遺してくれたお金を生活費に充てる。 自由。そう、一人暮らし。あれほど憧れた一人暮らしを60代で実現した。 しか

      • 淋しくなったらここに来る

        前にここに来たのはいつだろう、と開いてみたら昨年の9月だった。 ずいぶんと間があいた。ここを離れて「はてな」でブログをたまに書いたりしていた。でも、なんか違う気がし始めている。スターというシステム?が多少めんどくさい。でもどこでも似通ったものだろう。ブログでさえ気を使うのか?と思ったりもする。公開に設定しているからには読者がいる。誰かに読んでもらうことを想定し、その数が多いほうが良いと考えるか、あまり気にしないかは人それぞれ。  やはり自由がいいな、と思う。好き勝手に思う

        • この舟の行方 3

           彼が帰ったあと、彼が使った灰皿を洗いながら今はまだ土曜日の夕方で、明日は日曜日なんだ、と思った。日曜日ってどうやって過ごすんだっけ。ひとりの日曜日は・・・と考えたらやっぱり寂しかった。寂しい時はわたしは書く、そうやってずっと過ごしてきたはずだった。そうやって詩が生まれよりそう言葉が支えだったはずだ。電話もしない。メールもしない。ひとりでも生きて行こうと決めたはずだった。それにまたすぐに逢える。「愛してる」とまたラインがくる。月曜日になれば。                 

        これ以上何を望む 2

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        • 小説
          3本
        • 詩、言葉たち。
          1本

        記事

          この舟の行方 2

           わたしたちが出会ったのはもう20年位前のことだ。いわゆる「出会い系サイト」に近いものだったがそういうサイトをいくつか経てきてもう何かを期待したり逡巡したりすることはなくなっていたと思う。ただちょっと寂しい時にたわいないメールが出来ればよい。なるべく気の利いた知的なニュアンスのある相手とメールがしたかった。自己紹介文には荒野にいるウサギの詩を書いた。「さてこれからどこに行こうか」という内容の詩だった。自己紹介欄で自分を説明せずただ短い詩を載せている女性、年齢もなし。  この

          この舟の行方 2

          この舟の行方

           いつの間にかうとうとしていたようだ。日曜日の中央線に御茶ノ水から乗った。マスクはもちろんの事、会話も控えるようにと車内アナウンスがある。黙して行く帰り道、つい眠気におそわれた。  ふと気がつくと並んで座った彼の手が座席に置かれわたしの太腿にくっついている。何かの合図のように感じてその手に自分の手を重ねた。膝の上のバッグを引き寄せ重ねた手は見えないようにした。もちろん彼は応えて握り返してきた。わたしが降りる駅まであと3つ。御茶ノ水から地下鉄で帰れば早いのにこうしてわたしを送る

          この舟の行方

          ブログに迷う

           gooブログでずっと書いてきた。10年以上も書いてきたので、ちょっと立ち止まって考えた。なんか変えたくなった。  ミクシィで書いたりした事もあったなー。 書く事が好きだし、手軽だからブログというのは便利で面白いと思う。  嘘は書かない。だからといってありのままをさらけ出す訳じゃない。ちょっとした日常雑感をサラリと書けばいいのよね。  ところがふと、もう少し内面に踏み込んだものを書きたくなった。日記を書く訳じゃない。だけどなんか、さわさわと揺れる心の内を綴りたくなった。違う側

          ブログに迷う

          夕焼け

          誰かが追いかけてくるのか うしろに気配を感じて振り向くと夕焼けだった 手当のつかない残業をして 公園に鍵をかけ ゴミを捨て バスを待つときにあまりに明るいので驚いた 降りるべき場所を逃さず降りる タチアオイが背筋を伸ばして お帰り という 細い猫が小道を横切っていった 空に呼ばれて 来た道をすこし戻る 屋根の向こう 電信柱の先 昨日と明日の境界線 営みのつよさとかなしさがいちにちをもやす 帰り道 という名の裏切らない約束 茫とした夕焼けの手招きで歩いてい

          夕焼け

          詩と短歌

           娘との二人誌、薄紫の冬桜ができました。遅い歩みでまだ4号。でも娘の短歌を「鋭利な刃物のようだ」と、かつて評してくれた人もいました。わたしの詩も未発表作品です。言葉と向き合い言葉を抱きしめて、詩のかたちにゆっくりと仕上げ、そっと掲出しました。  ささやかな冊子ですが、読んでみたい方はご連絡ください。

          詩と短歌

          逢瀬

          先日の日曜日は彼に逢った。 逢いたい!というラインがきて、結局、5月から6月初旬まで毎週末に逢瀬を重ねた。  何もかもから解放されて念願の一人暮らしを始めた。もちろん彼にも自分の城に来て欲しかった。 プライバシーに踏み込む事を躊躇っていた彼も外出自粛規制で家にいるわたしを気遣い、仕事帰りに寄ってくれるようになった。  早朝から重労働をしている彼のためにお風呂を沸かした。野菜スープと好きな葡萄パンを用意した。 仕事帰りに来てくれるのは土曜日。解除されて書店が開くようになると、

          日々

          小さな怒りを胸に 黙して 今日も1日終わる 些細なこと 取るに足りないことと 考えようとするが うまくいかない 怒りは吐き出された 掌にのる機器が それを受けとめて相手へと送った だけど昨日も今日も きっと明日も 怒りは声にならず出口を失っている 無言の日々 機器に打ち込んで相手に関わったけれど なにも喋っていない 降り積もってきっと苦しくなる 口を開きじぶんの声で外に出さないと むずかしい顔をした人と鏡の中で出会う そういう日々 わたしの5月

          さようならとありがとう

          夫は出発していった。昨夜、「一年間お世話になりました」なんて笑って頭下げていた。結婚して40数年、はじめての別居だねと言っていた。 僕はきみと結婚しなかったら絶対こうはならなかった。退職してもすることがないつまらない毎日を送るぼんやりした老人になっていたと思う。きみから刺激を受けてすごく変わり出かけたり日々を楽しむいろいろを知ったしこうしてそれぞれ別の場所でそれぞれの趣味を生かして別個に生きるということは思いつかなかった。感謝している。 古い家を処分してここに夫婦で引っ越

          さようならとありがとう

          少し昔 その1

          夫がここを出て行くまであと2ヶ月位。 別居、または卒婚という言葉をおそるおそる口に出したのは一昨年の秋だった。 夫婦の仲が冷えきりやがて不倫が発覚し、互いの気持ちをぶつけ合ったのは10年位前だろうか。 ひどい言葉で傷つけられ泣いていたあの頃。 二人とも不信感でいっぱいで暗いトンネルの中にいるようだったあの頃。 夫が持ってきた離婚届け。夫が外してわたしによこした結婚指輪。 それらがいつもベッドの枕元にあった。 出来るなら離婚したかった。 でも末っ子はまだ高校生、真ん中の娘は闘

          少し昔 その1

          最近 1

          明日は出かけるからネイルしよう!と思いつく。 出かける準備として服を選び、それに合わせたネイルを選ぶ。ごく当たり前のこと。 だけどわたしの場合は少し違う。 明日出かける、明日誰かに会う。 たぶん何も言わないが夫の目を気にしている。 わたしが休みの日で夫が仕事の日。 近所のスーパーではなく、一つ先の駅前で 購入した食材が冷蔵庫にあるとする。 たぶん何も聞かれないがそのパックは外して捨てる。目につかないように処分して別容器に入れ替える。 「明日何するの?」「今日はどこへ行った

          最近 1

          空白

          間違えてしまったことの制裁は いつでもかならず どこからかおとずれる 何気なく繰り返す毎日にも ちいさな怯えがひそんでいる 晩秋の日差しを浴びて ただ歩く 歩くことだけが目的なので 思考はふいに過去へと遡り ぐるりと戻ってくる 戻ってくる 戻ってきたので今ここにいる ここにいてよい 大丈夫かもしれないと 根拠のない空っぽを見つめたりする 歩くことだけが目的なので ゆっくりと遠くを眺める 白い空が続いているから 空白をなだめ 大丈夫、とじぶんに言い聞かせる

          あなた

          いつもそうだ 怖がりなので 何枚も服を重ねる 雨や太陽を避けるため帽子を 目深くかぶる 武器になるかもしれない傘を持つ 気がつくと あなたが全部 わたしの荷物を持っている 鎧の服 遮るガード 無用の刃 あなたは空いている手で わたしと手を繋ぐ 黙っている でもしっかりと前を見ている 俯いて あなたの傍にいる 列車に乗るのだろうか 段差をこえ草むらをかき分ける どこかへ行けるかもしれない

          あなた