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詩『砂のみちしるべ』#シロクマ文芸部

始まりはいつも砂まみれ
あしあとを拾いあつめながら
俎板の上で道標を刻んでゆく
トントントン、トントントン
生の向こうに待つ死を凝視する

指先を突いた針先
小鳥の舌のような鮮血が広がる
自転車に乗った少年が赤血球を漕ぐ
全身を循環して巡回して 
温度が上昇しているのだ

茶封筒に記憶を封入してゆく
刺身みたいな生の記憶も 
煮物みたいな熱の記憶も
受信者の箸で摘まみあげられて
時間をぐるぐる巻きこみながら
胃のなかで熟成する

寝ぼけ眼の蕾、
胸に秘めた卒業式の風も
目覚めたはな、
流れ始めた入学式の川も
指から指へと伝わってゆく
芳しいかおり、
春のいろが匂い立っている

感受性のコサージュを飾って
週末の陽だまりが靡いている
襞と襞がひるがえりながら
触覚の漣がふるふる震えている

途切れることのない生命の連鎖が
わたしたち、を繋いでゆく 
死んでは生まれて
生まれては死んで
毎日、毎日、ひかりが瞬いている

肉体が滅んでも、尚、
ことばは生きてゆく
次の世代、のなかで
おおきく育まれて


photo:見出し画像(みんなのフォトギャラリーより、D Tsujimoto さん)
photo2:Unsplash
design:未来の味蕾
word&poem:未来の味蕾

#シロクマ文芸部   
#始まりは

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