連雀ミオ(Mio)

12/1文学フリマ東京39「つ-42」 漫画家の冬野梅子さんのブースで、こちらのnot…

連雀ミオ(Mio)

12/1文学フリマ東京39「つ-42」 漫画家の冬野梅子さんのブースで、こちらのnoteに書いたエッセイ的小説本『20年後のゴーストワールド』を販売します。 ぜひお越しください!

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  • 『20年後のゴーストワールド』

    2023年11月映画『ゴーストワールド』を観た。 私は歳取ってもフラフラして、毒吐いて、身勝手に傷ついて……今も消えたい気持ちで主人公イーニドとまるで変わらないままだった。 「イーニド、怖いこと教えてあげる。耳塞がないで聞いて!このまま20年くらい経ってもずっと変わらないで、うだつのあがらない人生を送ってる私みたいなのもいるんだよ。どんなホラーより恐怖!」 2023年とあるおじさんとの再会と関わりがひとつターニングポイントとなった。おじさんとの関わり、なんだよそこもゴーストワールドみたいじゃん。今のうまくいかない私の現状、私とおじさんを軸に20年後のゴーストワールドを書いてみたら面白いかもしれない。そんなことを思っている。 2部構成の予定。第1章「私のシーモア」から順に投稿していきます。是非読んでください。

最近の記事

『20年後のゴーストワールド』第2章(6)さよなら、ゴーストワールド(最終回)

イーニドとひとしきり話をしたり、音楽を聴いたりしたけど、まだ話は尽きない。イーニドの目線が私のトートバッグを捉えた。バッグからポータルのカセットプレイヤーが少し見えていた。 「ねぇ、あなたカセットで何聴いているの?」 「あっ、これ?今聴いてるカセットは銀杏BOYZ。日本のパンクバンドよ。私はこのバンドのこのカセットがきっかけで、またカセットにはまったの。90年代の終わりから一時期カセットは古くさくて不便でダサいものの扱いになったけど、また人気が復活してるのよ。良いものは良

    • 『20年後のゴーストワールド』第2章(5)私の人生、人生の夏

      バスでひとしきり叫んだ後、ふとこの言葉がお告げのように頭をよぎった。 「ねぇ、イーニド、真実の愛って考えたことある?」 「私たちには、今のままでは一生かけても見つけられないかもしれないわね」 真実の愛を見つけている人は確かにいる。 それは私の思い込みかもしれないけど、見つけている人にはその二人にしか出せないオーラがある。私のように、何もかもうまくいかなくて、血迷ってもう誰でも良い人間とは真逆の「真実の愛」を見つけている人に、昨年会うことがあった。しかも数組。おじさんにや

      • 『20年後のゴーストワールド』第2章(4)空の色すらも変わる

        私の母のこと、私の本当の悲しみに最初に気がついたのは実は浅井だった。私と重鎮ことおじさんが繋がるきっかけになったバンドマンだ。 (第1章・私のシーモア(2)私を構成した42枚参照) 私は母のことで辛くてircleの『忘レビ』という曲をSNSに投稿した。母について具体的なことは何も書かなかったが、その悲しみに気がついてメッセージをくれたのが浅井だった。それはおじさんとやり取りをする前の話である。 浅井は私のSNSでの投稿を見て、 「これは本当の悲しみだ」とコメントをくれた。

        • 『20年後のゴーストワールド』第2章(3)消える記憶

          突然やってきた来るはずのないバスの中で、とめどなくおしゃべりしているイーニドと私であるが、一応バスに乗車してすぐの段階で私はバスの利用規約にサインをしていた。 そこには、"乗車賃は無料です"と記載があって胸を撫で下ろした。バス型の新手のボッタクリガールズバーだったらどうしようかと一瞬思ったのだった。バスの運賃箱に入らないくらいのお金を請求されたら……という不安は拭われた。本物の"レンタルなんもしない人"をレンタルしたらレンタル料金は取られるので、イーニドのこのバイト代はどこ

        『20年後のゴーストワールド』第2章(6)さよなら、ゴーストワールド(最終回)

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        • 『20年後のゴーストワールド』
          22本

        記事

          『20年後のゴーストワールド』第2章(2)愛という憎悪

          人生どん底の私の元へ、来るはずのない待ち望んだバスが何故か突然あっけなくやってきた。私は今、バスの中で"レンタルなんもしない人"的にダメ人間と話をするというバイトをしているイーニドと話している。私は選ばれしダメ人間としてバスに乗ることとなったようだ。 イーニドが言う。 「私が沢山シーモアの絵を描いたように、あなたは重鎮(おじさん)を物語の中の人として描いたのね」 バスの中の空間は自動翻訳装置でもあるのだろうか、英語でムリくり話さなくても、胸に浮かぶ言葉でイーニドと自然と話

          『20年後のゴーストワールド』第2章(2)愛という憎悪

          『20年後のゴーストワールド』第2章・ガール・アット・ザ・バスストップ(1)来るはずのないバス

          確か、この日も私はいつもの通りに、吉祥寺駅へ向かうバスに乗るために最寄りのバス停に向かっていたところだった。少し息をあげて小走りしていたら、突然激しいめまいがした。星が光って、世界がグルンと何回転かした。 霞んだ目を凝らすと、道の傍にライトブルーのデニムのパンツが転がっていた。 「えっ……これは……あの見たことあるやつ……」 気が動転していると、いつの間にかバス停のベンチに座っていた。 いつものバス停とは様子が違った。「NOT SERVICE」と書かれたあのベンチに気づ

          『20年後のゴーストワールド』第2章・ガール・アット・ザ・バスストップ(1)来るはずのないバス

          『20年後のゴーストワールド』第1章・私のシーモア(15)夢のダイナー

          時は2024年の夏。 仕事の休憩時間、勤務しているビルのレストラン街でパスタを食べた。明太子と海老のクリームパスタ。見るからに美味しい。村井と別れてからずっと治らない頭痛に加えて、めまい、耳鳴り、じんましん、ここ半年間で今までなかったストレス症状に悩まされている。ストレスから遠く離れるのに一番安易な方法として好きなものを食べた。 パスタを二口ほど食べてから、突然心のステージの緞帳があがって目の前が開ける思いがした。 「目の前にある、いま食べているパスタが美味しければそれが

          『20年後のゴーストワールド』第1章・私のシーモア(15)夢のダイナー

          『20年後のゴーストワールド』第1章・私のシーモア(14)ごめんなさいBOT

          時は2023年12月31日。 そう大晦日である。話は第1話に戻る。 12月25日のクリスマスにドタキャンをかましたおじさんから、その後連絡はこなかった。 体調は良くなったのだろうか。 「最悪」とは思ったけれど、具合が悪いままならそれも心配だ。チバユウスケはずっと煙草を吸い続けて、たらふくビールを飲んだ人生で55年でその生涯を終えたばかりだった。おじさんもさほど年齢が変わらないので、いつなん時、何がおこっても不思議ではない。重鎮のあだ名のごとく、90年代からずっと音楽畑にい

          『20年後のゴーストワールド』第1章・私のシーモア(14)ごめんなさいBOT

          『20年後のゴーストワールド』第1章・私のシーモア(13)デリカシーを、君に

          クリスマスを誰かと過ごそうなんて、もう何年も考えたことがなかった。当たり前のようにクリスマスも仕事で、勤務しているアパレル店でクリスマスのギフトラッピングに勤しむのが、もう毎年の慣わしだった。 昨年2023年のクリスマスイブ、仕事を終えると、明日会う予定のおじさんからLINEがきていた。 「明日の浅井くんのバンドのライブ、ゲストは入れられるんだけどテンパイ以上にチケット売っちゃってるから、行ってみても入れるかどうかわからないって。渋谷行かず吉祥寺で飲みましょか(笑)」

          『20年後のゴーストワールド』第1章・私のシーモア(13)デリカシーを、君に

          『20年後のゴーストワールド』第1章・私のシーモア(12)擬似でもリア充

          「病んでますねぇ(笑)今度会ったら、ダイナソーの顔をした君を抱きしめますよ(笑)」 と11月の終わりにおじさんからまた唐突にLINEがきた。深夜で、たぶん誰かと飲んだ帰りに連絡してきたような、浮かれた感じが察せられた。 「……(はっ?ダイナソー?)」 失恋の翌日、映画『ゴーストワールド』を観た(前回の第11話参照) レベッカと会えたことで一命はとりとめたが、渋谷のドトールの帰り道から、その後のこともよく覚えていないくらい私は落ち込んでいた。裏アカという概念のない私はSN

          『20年後のゴーストワールド』第1章・私のシーモア(12)擬似でもリア充

          『20年後のゴーストワールド』第1章・私のシーモア(11)因果応報

          2023年11月23日。 仕事帰りのこと、もう23時は過ぎていた。 吉祥寺駅でライブハウスでたまに会う女の子を見かけた。まだ20代半ばの若く美しい子だ。たしかこの辺に住んでいる子ではなかったはず、何か今日ライブあったっけ?と一瞬、思いをめぐらせた。SNSの相互フォローもしていたし、いつも会って話して感じの良い子なので当たり前のように声をかけようをしたが、心の中で待て、の号令が鳴った。直感的にとても嫌な予感がしたのだ。 その女の子は様子が只事ではなかった。改札に向かって浮き足

          『20年後のゴーストワールド』第1章・私のシーモア(11)因果応報

          『20年後のゴーストワールド』第1章・私のシーモア(10)なんとなく、アンチ

          「明日、中村くん(仮名)がサポートで出るライブがあるんですが、良かったら行きませんか(笑)」 10月のある日おじさんからLINEが来た。 翌日はたまたま何もない休日だった。 中村くんと言うのは浅井のバンドのメンバーのギタリストだ。中村と言ってもチン中村ではない。 中村はもともととても飛び抜けてギターの上手い人で、母体である浅井のバンドの活動とは別に、売れっ子メジャーミュージシャンのサポートギターとしても引く手数多で忙しくしていた。はじめて中村を観たのは15年前くらい。浅井

          『20年後のゴーストワールド』第1章・私のシーモア(10)なんとなく、アンチ

          『20年後のゴーストワールド』第1章•私のシーモア(9)逆ボキャブラ天国

          「重鎮と飲みはどうでしたか?色々驚いたし、今さら俺と村井くんとの関係は変わらないだろうけど、君さえ良ければまた飲みましょう(笑)」 帰宅後おじさんからLINEがきた。 結局帰ったのは朝方3時くらいだろうか。 まさかの8時間以上もおじさんと話続けていたことになる。 「驚かせてしまいましたが、重鎮のおかげで色々お話できて良かったです」 「重鎮」呼びは年齢的にもキャリア的にも別に全く不釣り合いでなく、重鎮と呼ばれるだけの仕事をおじさんはやってきているはずなのに、数々の逆ワード

          『20年後のゴーストワールド』第1章•私のシーモア(9)逆ボキャブラ天国

          『20年後のゴーストワールド』第1章・私のシーモア(8)頭ポンポン地獄

          おじさんとまだ吉祥寺の個室の居酒屋に居る。 金麦をもう何杯飲んだことだろう。 店員さんに「金麦お願いします」と言う度に切なさが込み上げる。発泡酒しか飲めないなら別の酒にすればいいとも思うが酒はビールしか好きじゃないし、アルコール5%ほどのビールならいくら飲んでもやらかすことはないし、記憶も飛ばないし保身のためでもある。おじさんのペースに合わせて飲んだ。飲み放題とはいえおじさんもけっこう飲む。 「あと、そういえば覚えてる?いつもいる江口(仮名)俺またてっきり江口にしつこくされ

          『20年後のゴーストワールド』第1章・私のシーモア(8)頭ポンポン地獄

          『20年後のゴーストワールド』第1章・私のシーモア(7)歌の中の人

          「で、何で、村井くんのライブに来なくなっちゃったの?」 「……」 無言の時が流れた。 大袈裟に聞こえるかもしれないが、熱心に通っていたライブに行かなくなるのは、宗教の信仰をやめるのに近いものがある。私はガチ恋も伴っていたので余計に。心の拠り所であるライブに何故行かなくなったか、本心は信じられなくなったから。好きだったけど、好きでいられなくなったから……。 おじさんになんて言えば良いのだろう。他の人はどういう理由でライブに行かなくなる?彼氏彼女ができた?転勤?転職?結婚?子

          『20年後のゴーストワールド』第1章・私のシーモア(7)歌の中の人

          『20年後のゴーストワールド』第1章・私のシーモア(6)個室でボディーシート

          今回第6話を迎えます。読んでくださってありがとうございます。自虐も他虐もキツいですよね……すみません。しかし、この第1章は「私のシーモア」ですから。映画『ゴーストワールド』においてイーニドがシーモアの絵を丹念に描き続けたように、おじさんを描写していきます。またしばらくお付き合いください。 勘の良いあなたなら気づいているはず……こんなけっこうな文章量で第5話まで展開しておきながら、なかなか話が文学的にならない。そう、ここまで主人公の私はずっとスマホの液晶画面の文字を目で追って

          『20年後のゴーストワールド』第1章・私のシーモア(6)個室でボディーシート