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一歩を踏み出す勇気

春分の日は万物が新たに始まる特別な日のようです。
冬の寒さから解放され、自然が目覚める春。そこには、新しい始まりへの喜びと期待が満ちているように感じる方も多いのではないでしょうか?

私は、この時期になると、こちらの詩を思い出します。

千里鶯啼緑映紅 千里鶯啼いて緑紅に映ず
水村山郭酒旗風 水村山郭酒旗の風
南朝四百八十寺 南朝四百八十寺(なんちょう しひゃくはっしんじ)
多少楼台煙雨中 多少の楼台煙雨の中

唐の詩人『杜牧』の『江南春(江南の春)』です。

千里に渡り鶯が鳴き、新緑の中に紅の花がよく映えている。
水辺の村やそのあたりの山あいの町では、酒屋の旗が風になびく。
南朝の四百八十の寺は、春の霧雨の中、幾つもの楼閣が立ち並んでいる。

この詩を初めて読んだ時、春の美しい情景が目に浮かんだのを覚えています。中国に行ったことはないですが、鶯の鳴き声、緑と赤のコントラスト、そよ風になびく色とりどりの旗。
そして、霞む景色の中に佇む南朝時代の寺院の楼閣を私は勝手に想像してしまいました。

冬の間じっと耐えていた草木が、一斉に芽吹き、花開き、その生命力に後押しされるかのように、人々も春を喜び、街は活気づいてくる。
杜牧の詩は、私に、春の訪れを五感で感じさせてくれたんです。

この時期になると、新しい環境、出会い、挑戦。
慣れ親しんだ日常から一歩踏み出すことが多くなるかもしれません。
これはかなり勇気のいることだと感じます。

私もつい先日、新しい仕事を任せてもらえることになりました。
今までとは違う、右も左もわからない状態からのスタート。
期待と不安が入り混じる中、新しい一歩を踏み出したのです。

最初の数週間は戸惑いの連続でした。
新しい業務に慣れるのに必死で、毎晩「この選択は正しかったのだろうか」そんな弱気な考えが頭をよぎることもありました。

でも、一歩ずつ、ゆっくりでも進んでいこうとする自分がいます。

春分の日に芽吹く新しい命は、最初は小さく繊細です。
でも、太陽の光を浴びて、ゆっくりと力強く成長していきます。
私たち人間も同じなのかもしれません。新しいことへの第一歩は不安かもしれない。でも、その一歩一歩が、やがて大きな成長へとつながっていくと思いませんか?

人生には、たくさんの新しい始まりがあります。新学期、新入社員、新しい恋。そのたびに、喜びと不安が交錯するでしょう。でも、そういった感情は、新しいことに挑戦する者だけが味わえる、かけがえのないものなのだと思えるようになってきました。

時には失敗します。でも、その失敗もまた、成長への糧になるはずです。

春分の日。
杜牧の詩に、思いを馳せながら、私はまた一歩を踏み出します。美しい春の情景を思い浮かべつつ、新しい季節、新しい自分へと向かって。


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